魔王を倒せ!!!!!!
ムーディーな音楽が流れる店内。
騒がしい客たちを尻目に、Barのカウンターで、ギャルは本日123杯目のウオッカを飲み干しました。
ペラリペラリ、と『カタログ』をめくりながら。
「はあ…相変わらず、酔えないわ。
酔ってみたい……人生で一度だけでも。
その為なら、金も美貌も要らないくらい」
赤い唇が、悩ましげにそう紡ぎました。
と、『カタログ』をめくる手がはらり止まりました。
「あった、さっきの弥助が持っていた刀……。
名を…らいこくとう……、18年前…巨人と互角に渡り合ったという男が手にしていた…とも云われるほどの名工の一刀…か」
『カタログ』を読み終えた女は、ハッと息を吐き捨てると
「因果なモノね」
物憂げな瞳で、そう呟きました。
◆◆part2 “飲み屋街、大通りの死闘”◆
Barを出てから、弥助は歩きました。
ーー魔王を討つ大仕事を受けるべきか、受けぬべきか。
頭を巡らせながら。
腰に刀をぶら下げ、道の真ん中をゆく弥助。
彼は知らずのうちに、飲み屋街の中で、“立ち入ってはいけない”と呼ばれる場所ーーその道の真ん中を歩いていました。
狭い路地、日当たりの悪いよどんだ空気。
咳き込む浮浪者が、道の端に寝そべっています。
そこは、無法者の聖地。
弥助の後ろを尾ける10人もの男たちが、鋭い目付きで何やら話し込んでいます。
「ーーおい、やっぱり弥助男が腰にぶら下げてる刀…。
あれは値打ちもんだぜ」
ヒソヒソ…ヒソヒソと……。
「あ、見ただけでなぜ分かる?
お前バカか」
「見りゃ分かるだろうが」
「ん……ん…??
そ、そうか…?
…………うし。
ならば殺して盗っちまおう」
そうと決まれば、刀を抜き出し身構える男たち。
しかし、前を行く弥助は気付きません。
(((魔王を討って大金を手に入れるか…
今まで金がねえながらも優雅に暮らすか……)))
二度とないチャンスが目の前に転がってきた。
弥助はそう考えながら、まるで刀に相談するかのように“来国刀”の鞘を撫でます。
と、その時弥助が何かに勘付きました。
死の気配。
ーー背後から迫り来る10の男
ーー鋭利な刃の切っ先が弥助の首筋目掛けーー
(((何かが空から降って来る…!!)))
そのときーー弥助は【上を】見上げました。
(((…鳥か……!?)))
「くたばりやがれ!!!」
「おらおら…ッ!!
お腰に付けた財宝一つ寄こしやがれ!!!」
男たちの叫び声。
土を蹴る足音が津波のように殺到して、ただ1人の相手ーー弥助に10もの刃が迫ります。
と、そこでようやく弥助が刀を抜きました。
「な、何だお前ら!!」
即座に応戦しようと身構える弥助。
しかし、彼は今それどころではありません。
ちょうど自分の頭の上ドンピシャに、鳥ーーいや人影が落ちてきているのですから
。どんより曇った空から落ちてくる、幼い少女の悲鳴が、路地いっぱいに木霊します。
「ーーぎゃああああああああ、誰かわたしを助けろおおお!!!」、と魔王。
「ーーなんで急に二方向から何か来るんだ…!!」、と弥助。
「「「ーー死ね、そこの男!!!」」」、と迫り来る野盗共。
三者は“弥助”という一点で衝突し
次の瞬間、血の臭いと共に地面から凄まじい砂塵が巻き起こりました。




