魔王2
〜〜城の最上階、魔王控え室〜
「外に出たい!!
魔王の仕事なんぞ放り出して人間の街を見てまわりたい!!!」
小さな小さな魔王ーーキクコはそう言うと、お城の窓から身を乗り出します。
お城の最上階の窓から見える世界は、三階建ての建物すらちっぽけで、道行く人々は皆んな豆粒みたいです。
ーー頰をなでる風は、冷たく湿って
空は、どんよりとした曇り模様ーー
「おーい、人間どもよ、魔王はここにおるぞー!!
見えておるかー!!」
キクコはなんだか嬉しくなって、何十メトル真下に向かって、手を振ります。
「姫王、おやめください!!
危なくございます!!」
ギョッとして叱りつけるは、7つ目の家臣の男。
「ははは、誰に向かって生意気な…」
笑っていなす魔王。
その時でした。
ガラガラ…
Piiiiltu——syaaaaaaannnnnn!!!!!!!!!!!!
既にどこかで聞いたような
けたたましい雷鳴が鳴り響き、驚いたキクコが窓から転落したのは。
「ーーーー姫王さまあああ!!!!!!」
7つ目が叫んだ時には、もうときすでに遅く、窓辺にいたはずの少女の姿はありません。
顔を真っ青にする7つ目。
恐ろしい予感がして、窓の下を覗き込むと、ばっさばっさと羽の音。
「やった、生まれて初めて上手く飛べたわ!
むふふ…これでわたしも一人前の龍じゃのう」
それは、背中に小さな羽を生やした、まだ幼い少女ーーキクコでした。
彼女は、右に左にと空を自在に飛び回って見せると、
「ーーなりません!!
外にはどんな輩が潜んでいるかも分から…」
静止の言葉を最後まで聞くことなく、街へと飛び去ってしまいました。
「姫王、今すぐお戻りなされ!!こら戻れ!!!
外になど出れば、少なからず貴方は命を狙われてます……!
こ…こら、私の責任を考えろ!!
戻って来んか、バカ娘!!!」
ーー遠く、大人の説教を置き去りにし
その身に今さっき生えた小さな翼で。
ーー暗雲を突き抜け
遂には雷鳴鳴り響く雲の上にまで到達した、龍の幼子キクコ。
彼女の耳にはもう、彼女を思い引き止める者の声は聞こえません。
「まあ…。
地上は真っ暗だったのに雲の上は晴れているのね…。
小さな頃、お母様から聞いた通りだわ!!」
キクコは何だか嬉しくなって、
「龍に生まれて良かったわ!
魔王の仕事から私は解き放たれたのよ!!」
青く広い大空の中をグルングルンと旋回します。
ーー全身に感じる心地の良い風
ーー並走する鳥たちに炎を吐いて、怯えさせるキクコ
ーー丸焦げになって地上へと滑落していく数多の鳥たち
「ーーぐふ…ぐっしししし…空にはわたしを遮るものは何もない……。
ーーあ、あれ…?」
炎を吐き過ぎたためか、やはりまだそれほど上手くは飛べなかったのか。
急に身体が重くなって、思うように翼を動かせなくなったキクコは
突風に煽られ、遥か地上へ真っ逆さま。
「ーー!!!」
ざまあ見ろと泣き叫ぶ鳥たちが助けてくれるはずもなく、
身体の重いキクコは猛スピードで落ちていきます。
雲の中、丸焦げになった鳥たちをも追い越してーーぐんぐんグングン落ちていくキクコ。
「義いやあああああああああああああ!!!
助けて誰か…セイツェマン…わたしを助けて!!!!」
彼女は7つ目の男の名前を叫びながら、目には涙を浮かべて真っ逆さまに落ちていきました。




