魔王を倒せ!!!!!
元いき倒れ兼
乞食兼剣士の男、弥助はbarを出た。
扉を閉める。
酔っ払いたちのはしゃぎ声は、通りにまで聞こえてくる。
飲食店の立ち並ぶ、千鳥足の歩行者が少なくない、そういう通りだ。
「昼間っから酔っ払いやがって…」
僻みっぽく、
弥助はそう言った。
女から話を聞き終えた、弥助の目付きは鋭かった。
その鋭さといえば、行き交う人々が思わず眉を潜めるほど。
公衆の面前で、多くの人が行き交う大通りで、
刀をぶら下げ、人を射るような目をしているヤバい男ーー弥助。
「あの女……魔王を殺せとは…」
男は、誰にも聞こえないように、口の中だけで小さく呟きます。
「ーー報酬はたんまりだ。
…とんでもねえ大仕事が入ったぜ、なあ『来国刀』…」
『来国刀』とは、腰にぶら下げた刀の名。
それは遥か古より伝わる名刀。
彼は、ガタガタと震える手で、自分の気持ちを落ち着かせるかのように鞘をなでます。
まるで弟の頭でも撫でるかのように、優しく…。
「あの人変態よ」
「あいつに近ずくな…」
人々が口々に言います。
通りを行く人の波が、鋭い目付きで自分の刀に話しかけるやばい男を避けるように流れて行きます。空から見ると、人の波は弥助を避ける、“人”という文字のよう。
弥助の額を流れる汗。
(そんなことをしたら、おれはこの先どうなっちまう……)
震える唇。
弥助の黒々とした目に、影がさします。
「………………へへ…
ーーしかしよく見りゃこの街は、妙に変な奴らが多いな…」
ゴクリと喉を鳴らし、注意深く辺りを見渡す弥助。
弥助の頭上に、今にも降り出しそうな雲が流れてきたのはちょうどその時です。
太陽の光が遮られ、昼と思えないほど暗くなっていく、飲み屋街の大通り。
よく見ると、酔っぱらいや客引きの女たちに混じって、“戦い”の臭いをまとう不作法そうな男たちが数多歩いていました。
ガラガラ
明滅する弥助の瞳。
弥助の頭上、真っ黒い雲から稲光が落ちてきました。
Piiiiltu——syaaaaaaannnnnn!!!!!!!!!!!!
人々が平和を待ち望む時代ーー。
人の王と魔の王が終戦の契りを交わすこの都。
そこでは終戦を望まぬ数多の人間諸国が陰謀を巡らせ、【一国の軍隊ですら叶わぬ】という巨人の影すら差し迫っていた。
『時代の変化は軋轢を生む』
ーー我らの繁栄のため、『魔王を殺せ』と
多くの者がそう言った。
それはとある世界の、長く戦の続く時代のお話ーー。




