魔王を殺せ!!!!
ーー城門前。
男は、雄大な城を見上げていた。
それは、山のように大きな城。
ーー城門の前に、アデルバーンは立っていた。
アデルバーンは肩身の狭い思いだった。
初めて来た国の、とある重大な任務の直前。
古の強戦士の石像が、門兵のように、あるいは狛犬のように、門の両端に、讃え建てられている。
そいつらは、何千年という長きに渡り、鋭利な剣の切っ先を、門を潜ろうとする来訪者に向け続けているのだ。今ーー銀に輝く切っ先が、アデルバーンに向いている。
ーー決して変わることのない、石像の厳しい表情が、アデルバーンを睨みつけている。
不意と目を逸らしーー再び、男は遥か上を見た。
青い空、流れる雲の少し下ーー
城の頂きにハタめく国旗を、所詮2メートルそこらのちっぽけな男は見上げていた。
「ははは、首が痛いな…。
何と大きな城だ」
山のように大きな城の、頂きに掲げられた国旗には、建国王と愛馬の姿が刻まれている。
「これが国か…」
短く刈り込んだ髪、平たい額に、太い眉。
アデルバーンは、歯を見せないほどに薄く笑って見せると、課せられた使命を果たすため叫んだ。
「定刻通り、任に来た!
我、アデルバーン!!」
バタ バタ
ーー城の頂で、旗が揺れているーー
バタ バタ!!
「ーー偉大なこの国の門を、どうかこの愚生たる我に開け給え!!!!!」
………………
………
…
アデルバーンの耳がピクリと動いた。
静かだ。
風の音が止み、人の声もない。
門が開かない。
遅い……。
アデルバーンの鼻の穴が膨らんでいく。
「む?
おい、門を開けてくれ!!
聞こえないのか、時間通りのはずだぞ!!
こちらは魔王の最高警備兵として人間諸国から派遣された、アデルバーンだ!!」
何かのきしむ音。
何者にも避けぬであろう鋼鉄の門の、カンヌキが外れ、門がゆっくりゆっくりと押し開かれていく。
「開けぬは人間同士の戦と心得よーーん!?」
「…………そう慌てなさるな、剣客よ。
約束のある者に、王国は必ず門を開く」
言葉の通り、門が開いた。
開かれた門の先、赤いじゅうたんの敷かれた広大なホールが現れた。
内側から、なんと30人の若い男たちが門を押していたようで、その者たちはただ門を一度開門せしめただけのことで、風に吹かれた人形かのように、一斉に地面に倒れ込んだ。
「この門は重すぎるでな。
しかし守る為の重さなのだ。
待たせてすまぬ、客人よ」
しわがれた声。
アデルバーンの前で、ただ1人ーー額に汗の一滴も浮かべずにーー立つ老人はそう告げた。
そして、肉体労働など一つもせぬわとでも言いたげな、
光り輝く指輪を10もはめた手に持った杖で、
なかに入るようにとアデルバーンに命じ、
ーークツクツと前歯のない顔で笑った。




