サブタイトル??後で確認
今から13年前、魔王は討伐された。
それは直ぐのち、人と魔族の国境の改定へと時代を運び、即ち大河のごとき『遮魔の長城』は築かれたのだーー。
人は、
豊かな土地、南方に多く住まう。
『遮魔の長城』は、北方に住まう魔族の侵入を強固に阻んだ。
ーー今夜、人の住まう都に、魔王が現れるまでは……。
高らかに鳴り響くは銅羅どらの音!!!
偉大な人王の住まう城、そのバルコニーに展開されるは大転移魔法陣ーー
陣が、眩く発光する……。
Donn
Dommm
Dommmmm
Dommmmmmmmmmmm!!!
それは、人魔入り混じる楽団の勇ましき音頭!!
100人の部下を連れ、今バルコニーに、魔の王が突如現れた!!
夜の闇に溶けるように、陣の放った光が収束していく…。
未だ眩しさに瞳を細める魔王の見上げる先、月夜が照らすは、すだれの奥の人の王ーー。
ーー“終戦”と“平和”を求め、新たな時代の表紙となり得る調印式の為に、かくして2人の王は出逢ったのだ。
Time time
『月が沈み、太陽が昇る。
そして、次の日の昼へと至る』
Clock clock
わいわい
歴史の1ページを彩るその日、都の大通りはひどく賑わっていた!!!!!!!!!
ガヤガヤ
「…………あぁ…」
と、そんな大通りに、情けなく突っ伏して地べたを舐める男が1人。
そいつは道の真ん中で倒れているもんだから、行き交う皆んながそいつの後頭部を押し花みたいに踏んづけていきます。
「……職もねえ…腹が減って…死にそうだ……」
そいつは、それを売ればいいのにというツッコミ待ちなのか、よく切れそうな刀だけを大事そうに抱えては……、“お前も含めて地面だね”とでもいうように散々沢山の足裏に踏んづけられながら、でも多分そこそこ元気そうに倒れていました。
と、
ーー道の真ん中でいき倒れる男の頭上。
ーー指を指し、騒ぎ始める群衆。
『おい、見ろよ…アデルバーン様だ!』
『あ、あの天才武術家アデルバーン!
ホンモノかよ、サイン下さい!!!』
にわかに活気づく大通り。
騒ぐ人々。
騒ぎの原因たる、たった1人の人間は、大通りの真ん中で、民衆に悪意なき通せんぼをされています。
と、
「ちっ、うるせえなぁ…」
そんな人気者を妬むが如く、行き倒れの男が言いました。
行き倒れの男の耳が(騒ぎに対して)不満げにぴくぴくと動き、何日も機能不全の口が「……同業者か…」とのたまいます。
「ーーいいや、今急いでるんで申し訳ない」
錨型カイゼルヒゲの男、アデルバーンは民衆に笑顔でそう言うと、人混みをかき分け、ついで道の真ん中に倒れた男をヒョイと飛び越えて、城へ走っていきました。
「ああーん、バーン様行っちゃたわ……、いい男♡」
さっそうと行くアデルバーンの背中を見つめ、ギャルは言いました。
ーー行き倒れ男はムッとします。
彼は、今はもうそれしか己に残されていない、即ち全財産に等しい名刀を杖代わりにして、フラフラと立ち上がりましたーー。
「…………戦えばおれの方が強えや…」
立ち上がった男はそう言いました。
彼の名は、弥助。
と、男の耳に、ギャルの甲高い声が届きます。
「バーン様♡ーー昨夜はあんなに親しくしてくれたのに、今日はつれないのね……。
……………………
…………
……。
仕方ないか…」
彼女は、色白で金髪で巨乳でした。
眼は猫みたいに大きくて、アゴの輪郭もそれは美しくてーー。
そう、うつくしい……といえば水の音。
ーーその国の城といえば、美しい湖の真ん中に建てられており、
ーー城の正門へと続く美しい石橋を、額に玉の汗を浮かべて駆ける、アデルバーンの腰元には、
ーー王様から直々に呼びつけられるほどの武人である彼の鞘さやの内側には、
ーー弥助どこぞのしにぞこないと同じように、大層な名刀がぶら下がっては揺れていました。
K
A
R
A
N
K
Oron…
ーー透明なグラスの中、揺れてはぶつかる氷ロックアイスの音
ーー誘うような赤い唇が、グラスに押し当てられ、喉を焼くようなアルコールが美女の臓腑ぞうふへと滑り落ちていきます。
「んっ…ぷはー…美味しいわ!
今日は100余年に及ぶ、人と魔族の戦が終わる日……終戦の日ーー」
胸元のざっくり開いた赤いドレスの、背中はどこか寂しげで。
「ーー平和の世が明ける前夜……昨日とは違って、“武人”は忙しいものね。
ねぇ、バーン様…」
終戦を祝う陽気な音楽が流れるBARのカウンターで、ギャルは1人そう呟きました。
と、彼女がパチパチと弾ける甘いお酒を飲み干した頃、ふと見た店の窓にーー
ーーカエルみたいにべたりと張り付く、行き倒れみたいな男やすけの姿がありました。
その男の顔はいかにも貧相で、ロクに金もなく、入りたくても店に入れない姿がありありと、ガラス越しにでも伝わってくるようでした。
「あら、なんて貧しそうなヤツ……」
ゴミでも見る目でそれを睨め付けたギャルは、吐き捨てるように呟きました。
と、女の隣に腰掛ける2人の中年男が興奮気味に話始めました。
「なあ、魔王ってのはよ。
凄まじくこーーーんなにデカくて、恐ろしく強くて、人を食っちまうらしい」
「あ、何バカ言ってやがるんだよ…。
いいか、お前の話は、いつもアテにならねえんだ」
「いて、ブツな…!
親しき仲にも!!、……いやそんなことより魔王だ。
奴は、大人しく終戦への署名をしに来たように見せかけて、人の王を殺しに来たってもっぱらの噂だ」
「けっ…バカバカしい……
マスター、お茶!!」
「それどころか、この街の人間全部を殺して……」
「ば、バカ言うな……
マスター…お、おちゃをお願い……」
「この街そのものを滅ぼすつもりでいるらしい」
「ひいぃいい…!!
ま、マスター!おらぁ、帰る!!こんな街にはもういてられねえ!!
こら、ソバをすするな!!お前も一緒に、さっさと逃げるぞ!!」
「ーーソバうめえ」「いいから逃げるぞ!!」、
何やら言いあいながら、店を去っていく中年男2人を、ギャルはちらりと見やりました。
それから、その猫のような大きな目がぎょろり動いた先ーー
ーーカエルみたいにべたりと張り付く、行き倒れみたいな男やすけの姿がありました。
その男の顔はいかにも貧相で、ロクに金もなく、入りたくても店に入れない姿がありありと、ガラス越しにでも伝わってくるようでした。
「あら、なんて貧しそうなヤツ……」
ゴミでも見る目でそれを睨め付けたギャルは、吐き捨てるように呟きました。
「……でも、若い男…」
ーー刹那せつな
女の、アルコールにぬめった真っ赤な唇が、魔女のように釣り上がって
「………それにあの男の持っている刀……上物ね…」
女は、真っ赤なドレス姿で、ほくそ笑みました。
もしかして、案外腕の立つ男かしら」




