第九話 無名部はこれからも続いていく
「これにて今日の無名部の活動は終了する」
いつも通りの放課後。
無名部の活動を終えた晴と陽葵は、帰り支度をする。
陽葵の頬の腫れはすっかり引いていた。
「明後日からもう冬休みですけど、入試の勉強は捗ってます?」
「ああ、無問題だ。私を侮るなよ」
――これは浪人かな。
晴は、そんな未来が簡単に想像できた。
「そういえば二十四日のイブは暇か? 」
相変わらず歯に衣着せぬ言い方に、さすがの晴もムッとした。
「そ、そうですよ、悪かったですね!」
「そうか、なら都合がいい。私と付き合ってくれないか」
「つ、つ、付き合う!?」
晴の頭の中では、いろんな妄想が駆け巡った。
そしてある答えに辿り着く。
ま、まさかこれはデート……
「どうしたそんなに動揺して……は! ふ、深い意味はないぞ。ただ単にその日限定のバーゲンセールに行ってもらいたいだけだ」
「そ、そうですか」
「なんであからさまに落ち込んでいるのだ!?」
そんな会話をしながら部室の引き戸を開く。
すると、扉の前を遮るように誰かが立っていた。
いつまで経ってもどかないため、業を煮やした陽葵は、
「出られないからちょっとどいてくれないか? それとも私たちの部室に何か用か? あれ、前にも言ったなこのセリフ」
と声をかけた。
そして目の前の人物が緊張した様子で口を開いた。
「あの! 入部を希望してるんですけど!」
裏設定集(想像して楽しみたいって人は見ないでね)
――何故、透花(芽衣)の姿が晴や陽葵には見えて、姉の眞子や他の人には見えなかったのか
基本的に血筋が強いほど透花の姿を捉えられやすい。
姉の眞子の場合、ほんの少し足らないところをアミュレットで補う必要があった(第六話での初対面の際、アミュレットを身につけていれば透花が見えた)。
晴の場合、魂魄としての芽衣が一時的に夢の中へ干渉した影響と、透花自身の強い気持ちが合わさった結果。
陽葵の場合、芽衣が生きている並行世界において芽衣のお腹から生まれる娘であること(肉体のみの転生?)と、透花自身の強い気持ちが合わさった結果。
――何故、佐田隆二がアミュレットを見つけられたのか
魂魄である芽衣が交信を何度も繰り返した際、他の地域にいる悪い神様がそれを傍受。そのアミュレットを悪用しようと、佐田の運命を書き換えて、アミュレットを発見させた。
――志倉芽衣について
芽衣は十八年の歳月の間、アミュレットに入っていた。
学校での芽衣と家での芽衣は、極端に違う。家では明るいが、学校では話せなくなる。場面緘黙症。晴や陽葵と会うまでの十八年間で克服した。