この世界のこと、これからのこと
討伐した翌日の朝、生き残った村人達が戻ってきた。もともと、所定の逃げ場所が決められており、生き残っていた村人はそこに隠れていたようで、知らせを聞き戻ってきたらしい。
徹は、村の入り口付近にある物見櫓の上で周りを見渡し問題ないか警戒していた。
そして、その隣には、徹によこで眠るセシリアの姿があった。
徹は、毛布を目の下までかぶり、眠るセシリアの姿があまりにも可愛らしく、時々ちらちら見てしまった。
「(うぅ~。かわいい~。仕事にならないな~)」
そう思いながら、セシリアを見ていると、セシリアの目が開かれた。
すると、セシリアはすぐに起き上がって、
「申し訳ございません。私、眠ってしまってたんですね。私だけ眠ってしまって申し訳ございませんでした。トール様には、命まで助けていただいたのに。。。」
セシリアの目が、ウルウルしている。
それを見た徹は、あまりの可愛さに発狂しそうになったが、そこは、心を押し殺した。
「いいんだ。そんなに謝らなくったって。昨日は、疲れただろう。セシリアは子供なんだからゆっくり寝るといい。僕のいた国では”寝る子は育つ”っていう言葉があってね、子供の睡眠を大切にしてるんだよ」
っと優しくセシリアに語り掛けた。
「そんな言葉があるんですね。教えて頂きありがとうございます。トール様は博学なんですね。」
「ん!んん。そうかもね(みんな大体知っている話だったけどね。しかし、セシリア顔が赤いな。体調は大丈夫なのかな~)」
徹とセシリアは昨日から少しずつ会話をし、日常生活の話をしていた。正直、セシリアの過重労働に対し、ブラック企業で働いていた徹は、心通じるものがあったのだ。
徹とセシリアがそんな他愛もない会話をしていると、物見櫓の下から、声が聞こえた。
「トール様ーーー!!」
物見櫓の下には、村人たちが集まり、一人の白髪の老人が徹を呼んでいた。徹は、4メートルはあるだろう物見櫓の上からサッと飛び降り、村人たちの前に着地した。
「皆さん、大分落ち着かれたんですか?」
徹が村人たちに沿う言葉をかけた。
「お気遣いありがとうございます。わたくしはテウと申します。このたびは、村を救っていただきまことにありがとうございます。トール様には、なんとお礼を申し上げたらよいのやら、感謝の言葉もございません」
「いえいえ(この村の代表者の方だろうな)、お気にされないでください。」
そうこうしているとセシリアが物見櫓の上から降りてきた。
「セシリア降りてきたのか」
「はい。私だけあのような高いところにいるわけにはいけないと思ましたので」
村人たちは、一瞬、セシリアを見た。そして、少し、ざわついた。自分の家族が死に、奴隷が生きていたことを不満に思った村人がいたのだろう。
そん中、村人の中にいた小さな子が母親に対し小さな声で言葉を漏らした。
「ねぇ、なんであのお兄ちゃん来るの遅かったの。もう少し早かったら、お父さんが助かったかもしれないのに」
その言葉は、徹をはじめ、村人たち全員に聞こえた。確かに、一旦、村はある程度整理されたが、生き残った住人たちの心は、ぼろぼろであった。
「・・・・・」
「・・・・・」
沈黙が続く中、白髪の老人が徹に
「ささ、徹様は、昨日から食事をされていないですよね。どうぞ、私の家までお越しください。食事しながらお話をさせて頂ければ幸いです」
白髪の老人がそういうと、徹ものその言葉を受け、案内されるままに家に入った。
家に入った後は、徹は老人からいろいろな話を聞いた。
現在どこの国にいるのか、冒険者とはなにか、貨幣の価値は、魔法とはなんなのか。
まず、この村は、トトルの村といい、バルド帝国の領地である。そのほかにも、アンドーラ連邦やリ・トゥルーサ王国など複数の国があることがわかった。また、迷宮都市などもあるという。冒険者は、このトトルの村から一番近い町である、タンザスという町に行き冒険者ギルドで登録を行えばなれるとのこと。また、貨幣の価値も聞いた。下記のとおりある。
通貨 ユン
お金の単位はユンでレートはだいたい日本と同じくらいだった。
白金貨:1000万
大金貨:100万
金貨:10万
大銀貨:1万
銀貨:1000
大銅貨:100
銅貨:10
鉄貨:1
因みに魔法については、老人もあまり知らず話せなかったが、自宅にあった書籍を数冊くれた。
徹は、老人から、いろいろ話を聞いた後、セシリアのことが気になって老人に尋ねた。
「テウさん、ちなみにセシリアのことなのですが」
「あぁ、元村長宅の奴隷のことですね。残念ながら、元村長の奥さんと息子がなくなってしまい、身を引き受けることが可能な人がこの村にはいません。この村に、密かに隠れて暮らしたとしても、おそらく、長くは持たないでしょう。現在、おひとり帝都に息子さんがいらっしゃるのですが、そこまで連れて行けばどうにかなるでしょうが。。。。」
奴隷契約の縛りはそんなに甘くない。契約をしていた元村長の嫁がなくなったとしても奴隷契約が切れるわけではない。自動的に相続されるのだ。ただ、その自動相続の範囲は一等親の間までとなっている。もし、帝都の息子が存在しなければ、自動的に奴隷契約が切れるところだったのだが、帝都に息子がいる以上、自動的に息子に相続される。また、奴隷契約には、奴隷が契約者から逃げられないよう、契約者から一定の範囲を離れると奴隷を死に至らしめる付随契約を追加することができる。ちなみに、その効果が発動し、死に至るまでには一定の期間を要する。
「ちなみに帝都まではどれくらいかかるのですか?また、その。。。死に至る一定の期間とは。。。。」
「そうですね、まず、帝都であればここから馬車で向かって、1か月ほどでしょう。そして、個人差がありますが、、、その期間とは、短くて2か月、長くて3か月といったところです。恐らく、契約者の10メートルの範囲に入れば、その効果は止まり、またリセットされるでしょう。奴隷契約にもいろいろありますので。正確なことは申し上げられませんが。帝国では、奴隷の使用が、厳しく、先ほど申し上げた、この”死の範囲”を強制的に適用するのはこの帝国だけなんです。ただし、どこの国でも、契約者から一定の範囲を離れれば、死なないまでも〝苦痛を与える”などの付随契約をつけることが大半なのです」
徹は、奴隷契約の恐ろしさを知った。そして、憤慨しそうになった。
「わかりました。もし、セシリアに聞いて僕と一緒に行きたいとってくれるなら、僕が送り届けたいと思っています」
「な!トール様にそのようなことはお願いできません。救っていただいたにもかかわらず、元村長宅の相続や村のもめ事を押し付けるわけには」
「いいえ、いいんです。本人の希望次第ですが」
「わかりました。トール様には何から何までありがとうございます。感謝をどのように表したほうがいいのかわかりませんが。本日、朝、村のものたちと話し合って、できるだけ村から出せる金品を差し出そうということになりました。合わせて、今回トール様が囚われた盗賊たちについている報奨金についても、そのままトール様へお渡しさせていただきます。恐らく、明日には、近くにある駐屯地から騎士団の皆様がいらっしゃいますので、その際、連行して頂き、その際頂いた報奨金をトール様へそのままお渡しさせていただきます。」
「あの盗賊、賞金がかかっていたんですね。てか、騎士団がこちらにくるんですか?(盗賊をこれだけ倒したんだ。もめ事に巻き込まれそうだな、これは早々に村を立とう)」
「あの盗賊、ジャッカルと申しまして、この地方で悪名高い大盗賊でございました。今までにもブロンズ級やシルバー級の冒険者が何十人もやつらをとらえようとしたのですが、ことごとく失敗しておりました」
「そうなんですね。わかりました。テウさん、よろしければ、その報奨金は村の復興に役立ててください」
「何をおっしゃいます!」
「テウさん、村のどんな状況なのか、子供でも分かります。今は、お金があったほうがいいでしょう」
「何から何まで申し訳ございません!」
「(厄介ごとに巻き込まれる前に出よーー)」
老人は涙を流しながら感謝をした。
「ちなみに、テウさんあの壁にかかっている剣は何ですか?」
「ああ、これは、以前、この町に来られた冒険者様方が置いていかれたものです。私が聞いているお話では、この村の付近に災害級のモンスターのコカトリスが現れ、その冒険者様方に退治して頂いたと聞いております。その冒険者様方がおいて行かれた品です。ちなみに、この村を旅立たれる際に、「この刀の価値がわかるものにわたしてくれ」とだけおっしゃり私共にたくされたと聞いております。」
「へーそうなんですね」
徹はその剣を鑑定してみた。
×:★●Д★●★+Д (●□★★●Д★●★) ●□★★●Д★●★●□★★●Д★●★●□★★●Д★●★●□★★●Д★●★●□★★●Д★
見えなかったか。徹は、あきらめきれずもう一度確認した。
ピコーン
徹の鑑定が(上)になりました。
「(おおお、鑑定の練度が上がったな)」
徹がもう一度見てみると
刀:新・兼光+5 (★★★★★)
伝説級の武器。魔剣。伝説上の鍛冶師ルタンが打った大業物。ミスリルと●★●□★を融合させ、打ったため、強度は高い又柔軟性も持ち合わせている。刃こぼれをすることはない。その刀身の美しさから多くをものを魅了さる。
「新・兼光でルタンの作か~(あれ刀なのか~、布でぐるぐる巻きになっていたからわからなかったな~しかし、初めて見たよ伝説級武器。俺の木の槍、今思えば恥ずかしい。。。)」
「トール様いまなんとおっしゃいました!」
「え!新・兼光とだけ。。。ルタンの方??」
「トール様大変申し訳ございません。このテウ。誤ってトール様に伝えたことがあります。実は、冒険者様方からは、「この刀の名と鍛冶師の名がわかり、且つ、心気高きものに渡せ」とのことでした。これをお渡し出来るのはトール様しかおりません」
「よろしいのでしょうか?(えー!うれしいけど急展開!。たまたま名前をいったんだけど、俺の引きすげー)」
「ぜひ、持っていかれてください!」
老人は、壁からその刀をとると徹に渡した。
徹は恐る恐る、包みを開き、刀身を出した。
「なんと美しい。。。。。あんなに抜けなかった剣がこんな簡単に」
「本当ですね(一回抜こうとしたのかよテウさん)本当に美しいですね」
その後、老人との話が終わり、セシリアのところへ向かうことにした。