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戦闘

「ん、あー、ん、ここはどこだ?俺は、さっきまで黒狼と戦っていたはずだが」

徹は、闇の中にいた。徹は頭を抱えながら起き上がって周りを見てみたが、何も見えない。どこを見ても見渡す限り闇の中だ。

「(まずい、セシリアがいない)おーい、セシリアー、どこにいる」

黒狼がどのような人物なのか完全に理解できていない今、徹は、セシリアがどうなったかが気になっていた。

「(これはどうにかしないとな)おー!セシリア、いないかー」

徹は叫ぶが、反応がない。どこまで進んでも闇のままである。

すると、闇の中から、声が聞こえてきた。

「久しぶりに我と話せるような者に我は渡ったのか」

突然聞こえてきた声に徹は言葉を返した。

「お前はだれだ?」

相手からの回答がない。徹がもう一度、声の主に話しかけた。

「お前はだれなんだ?」

すると、声の主の言葉が聞こえてきた。

「なるほど、通りで我と対話ができるのか」

声の主は、どこかで徹を見ているのだろう。そして、声の主の言葉が聞こえる徹の存在の何かに納得していた。

徹は、声の主に再度、話しかけた。

「すまないが、ここから出してくれ!俺は急がなきゃならない!」

すると声の主は、

「熱り立つな、お前とあったのも何かの縁であろう」

と答え、徹の話には回答してこない。

「おい!ふざけているのか?!」

徹が声の主にそう言葉を返すと、懐にあった指輪が急に徹の懐から飛び出した。

そして、急に赤く光ったと思いきや、すごいスピードで徹の指へと刺さった。

徹は慌ててその指輪を取ろうした。

「何だ!?何だこれ!?」

指輪が取れない。

すると、また、声の主の声が聞こえた。

「大丈夫だ、我はお前が求めぬ限り何もせん、ちょっとだけお前の魔力を頂き続けるだけだ」

「ふざけるな!何もしないと言っておいて、魔力をとり続けるのだろう!?」

「お前には膨大に魔力があるだろう、いいではないか」

「ふざけるな!離れろ!」

その後、指輪は、何も答えなくなった。

「ふざけやがって、本当に大丈夫なのか?」

徹がそう言うと、急に視界が真っ白になった。

気が遠くなる徹。

すると、遠くから声が聞こえた。

「トール様!」

とても小さい声だ。

「トール様!」

「トール様、私を置いていかないで下さい! 」

声は少しずつ大きくなっていく。

「トール様!」

徹は、自分の体に、なにか温かいものを感じた。

「(セシリアか?)」

セシリアが徹に回復魔法をかけて続けていたのだ。

「セシリアか…、くそ、体中のあちこちが痛いな…」

言葉を発した徹にセシリアは気づくと徹に抱きついた。

徹の上に横から抱きつくように。

「トール様!トール様が死んでしまうのではないかと思いました」

どれ程の時間がたったのだろう、セシリアの顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。

「(俺はだいぶ心配をかけたようだな)すまない」

徹はセシリアに答えた。

「トール様が目覚めてよかったです、トール様が目覚めなかったら、わたし…トール様と一緒に…」

徹はセシリアの頭を抱きしめた。

そして、徹は自分の傲慢さに反省した。

何も知らない世界でいかに傲慢だったかということを。

「負けるって悔しいんだな」

徹はボソッとそういった。そして、ふっと黒狼のことを思い出した。

「そういえば、黒狼はどうした?」

徹は思い出したかのように、セシリアに問いかけた。

「黒狼は、トール様と戦ったあとどこかに消えて行きました。申し訳ございません、どこに行ったのかはわかりません」

「そうか、今度は強くなって、やつを倒したい、今度は叩きのめしてやる」

徹がそう言うと、セシリアは顔を真っ赤にして怒って言った。

「ダメでしゅ!私がどれだけトール様を心配したかわかっているんですか?これ以上トール様を危険な目に会わせるわけには行きません、セシリアがずっとそばにいて体を張って止めましゅ!」

セシリアは強い口調でそう言った。

しかし、少しして、自分の発言が、叶わぬ行動なのだと気づき、すっと、徹の目から顔を反らした。悲しい顔をしている。

「セシリアのその優しさ、その心の美しさに俺はいつも助けられる、セシリア、ありがとなぁ(この子を帝都に送り届けたら、息子さんからこの子を俺が買い取ろう、恐らく大丈夫だろう、売買は禁じられて無いだろうし、金は作れる)」

セシリアは徹を向きなおし、から元気そうな笑顔で「どういたしまして」と答えた。


徹は、セシリアとの会話の後、自分の傷を癒すため、回復魔法を自分へかけまくった。簡単な傷はセシリアが治せたが、深い傷はそうはいかない。その為、徹は、回復魔法を使いまくり、回復魔法(中)まで上げ、自分の傷を癒した。その後、徹とセシリアは、馬車に乗り込み出発した。まだ、日が高いし、帝都まではまだ距離がある。少しでも早く着きたい。トトルの村のテウ老人の話では、死ぬまでの期間は2,3ヶ月ではないかと言っていたが、セシリアがどのような契約がされているかは分からない。また、セシリアは幼く、人ではない。色んなイレギュラーがある時可能性がある。その為、徹は急ぎたかった。

「セシリア、大丈夫か、顔が赤いぞ」

徹が御者をしている隣で、セシリアも座っている。セシリアの顔が赤い。

「最近だいぶ、熱くなってきましたね」

セシリアが徹に話しかけた。

「たしかに、少し、熱くなってきたな、以前、町で売っていた、木彫りの置物を買っててよかった。これが案外涼しいからな」

以前、買った微風が発生する置物だ。現在、徹とセシリアの扇風機となっている。

「本当に便利ですね」

御者台に座る二人を見ると本当に兄妹のように見える。

仲睦まじい光景であろう。

徹も、また、セシリアも二人っきりの旅が続けばどれだけ幸せだろうと思っていた。

知らない異世界で知り合った心優しき少女。その美しさと優しさに励まされることが多々あった。

そして、セシリアも徹のやさしさや強さに心惹かれていた。

村を救ってくれた英雄、自分の救おうとしてくれるヒーロー。

セシリアもまた、徹が心の支えとなっていた。




馬車を進めること、一時して、2人が会話は続いていた。

そうしていると、徹が、少し先の林の奥が騒がしいことに気づいた。

林の奥が騒がしい。

徹は、馬車を止めた。

そして、セシリアに対し小さな声で、「セシリア戦闘に備えろ」とだけ言い、御者台から地面へ飛び降りた。

林からは、鳥たちが逃げ出し、小動物たちが林から飛び出してきた。

林の奥では一部の木がなぎ倒されていくのがわかる。

木々をなぎ倒すのだ、かなりの大物だろう。

徹とセシリアが、林の入り口を注視していると、急に人らしきものが飛び出した。

人間の女が二人飛び出したのだ。

恐らく、冒険者だろう。武器はなく、防具はぼろぼろの状態で、必死に逃走している。

死闘を繰り広げたのだろうか。

その二人は、徹とセシリアの馬車に気づき、2人に叫んだ。

「助けてくれ!オーガの群れに追われている!」

そう叫んだのは、ベリーショートの赤髪の女の方だ。

もう一人の女は、髪は青色でロングヘヤーをしている。今は、赤髪の女に肩を担がれながら、こちらへ走ってきている。

2人ともぼろぼろの状態だが、青色の髪の女の方が状況が悪い。

あちこちに傷があり、脇腹に深い傷がある、その為、血が大量に流れて出ている。

このまま放っておいたら、確実に死んでしまうだろう。

徹は、叫んだ。

「早くここまで避難するんだ!、セシリア、回復魔法の準備を」

「はい!トール様」

徹は、セシリアにそう話し掛けると、高速で女たちの元へ駆け寄った。

すると、あまりの速さに赤髪の女が驚いた。

「お前、今のはなんだ!?」

赤髪の女がそう徹に話しかけたが、悠長にそれを回答している場合ではない。

「それは後ででいい、あんたの相棒は俺に任せろ、馬車のところまで避難させる」

徹は赤髪の女にそう言い、青髪の女をお姫様抱っこすると女に負荷がかからないぐらいのスピードで馬車のところまで移動し、馬車の中へ寝かせた。

その後、赤髪の女が遅れて馬車に到着した。

「はぁ、はぁ、はぁ、助かった、すまない」

赤髪の女が徹に礼を言った。

「礼はいい、傷を見る」

徹は赤髪の女に答えた。徹は、青髪の女の鎧を素手で破り、傷口を見た。

鋭利なもので斬られたような傷口だ。

かなりひどい。

徹が、傷口を見ていると、徹の肩に手を置かれ、徹は軽く後ろへ引かれた。

引いたのは赤髪の女だ。

「ルイの手当てを頼む!ルイはオーガジェネラルに切られた、それと奴らは直ぐにここへ来る、早く馬車に乗り避難し、軍を呼ぼう」

赤髪の女は焦っている。

徹は、再度、青髪の女へ振り向き、左手を傷口の前に当て回復魔法をかけた。

「ハイヒール」

徹の回復魔法を行使した。

すると、青髪の女の傷がみるみる治っていく。

先ほどまで深々とあった、脇腹の傷も跡形もなく消え去ってしまった。

それを見ていた、赤髪の女を驚いた。

「お前、上位の神官だったのか?!傷跡がない!」

徹の中級魔法と膨大な魔力等の力によりかけられたハイヒールは、通常のハイヒールの比ではない。

すると、徹は赤髪の言葉をスルーし、セシリアに指示を出した。

「セシリア、二人の手当てを頼む、俺は、奴らを狩る」

徹がセシリアにそう言うと、林からオーガ達が飛び出してきた。

数は、オーガが10体。

色は、青色。大きさは2.5メートルはあるだろうか、醜悪な容姿に体は筋肉隆々とし、手には棍棒を持っている。とても人には抗えない。

それを見た、赤髪の女は、徹に向かい、避難をするように言った。

「おい!お前、オーガだけじゃない、その後ろにオーガジェネラルがいる!神官のお前ひとりでは無理だ、ここは一旦撤退し、改めて数を揃えて挑んだ方がいい!」

赤髪の女は必死に徹に話をする。

しかし、その言葉は徹には聞こえなかった。

徹は、赤髪の女の話が始まった瞬間、超高速でオーガ達の近くに移動し、先頭のオーガの首を居合いで一刀両断した。

そして、流れるような刀さばきで、2体目3体目を一刀両断した。

それを見た、赤髪の女は驚愕している。

あの硬いオーガを一振りで両断しているからだ。

また、周りのオーガ達も硬直した。

徹のあまりの強さに危険を感じたからだ。

「「「「「GYUUUUUU」」」」」

オーガ達は叫んだ。

徹は、流れるように一刀両断していく。

加えて、瞬時に、3体が屍となった。

すると残ったオーガが逃走をし始めた。

林の中に逃げるつもりだ。

徹は、左手をオーガに向けた。

そして、魔法を放った。

「ライトニング」

すると、徹の腕から、電撃が放たれ、4体のオーガが瞬時に感電し、倒れた。

徹の魔法は的確に放たれている。

これで、残ったオーガ達が瞬殺された。

しかし、これで終わりではなかった。

林の奥からこちらに近づくものがいる。

オーガジェネラルだ。

ついに、林の奥からオーガジェネラルが出てきた。

オーガジェネラルの威圧感は、オーガの比ではない。醜悪な容姿、大きさ、筋肉、どれをとっても、オーガの倍はある。そして、手には、大きく武骨でぼろぼろのマチェットが握られている。

すると、そのオーガジェネラルが徹を見つけ、叫んだ。

「GHOOOOOOOOOOOOOOO!」

普通の人間がその場にいれば、恐怖に息が止まるもの、気絶するもの等、多々出るだろう。それほどまでにオーガジェネラルの圧力が凄まじい。

そして、そのオーガジェネラルは、早いスピードで徹に近寄ってくる。

ドシン、ドシン、ドシン

徹は、自分に近づいて来るオーガジュエネラルを眺める。

オーガジェネラルが徹を自分の攻撃範囲に入れると持っていたマチェットを徹に向け薙ぎ払った。

凄まじい剣速。

徹は、その剣を交わした。

しかし、オーガジェネラルの攻撃は続いており、すぐに左の裏拳が徹に飛んできた。

風圧がすごい。一般人なら風圧だけで飛んでいきそうだ。

徹はその裏拳をしゃがんで交わした。

それでもオーガジェネラルの攻撃は止まず、流れるように右足のローキックが飛んできた。

徹はその蹴りをぎりぎりの距離で交わした。

「GHOOOOOOOOOOOOOOO!」

オーガジェネラルが雄たけびを上げた。

人間にすべてを交わされたことが不快なのだろう。

一瞬の間の攻撃。

上位種のオーガジェネラルになるとその動きは、俊敏になる。

オーガジェネラルが準災害級に指定されるのは、大きさ、パワーだけが理由ではない。スピードも持ち合わせているからに他ならない。

「やっぱりはやいなー」

徹は、距離をとり、オーガジェネラルを見た。

そして、徹は、左手を構えオーガジェネラルに向けて魔法を打った。

「ライトニング」

すると大量の電撃がオーガジェネラルにぶつかった。

ドーン

凄まじい音がした。

オーガジェネラルは真っ黒焦げになって片膝を地面についた。

徹の魔法の威力は凄まじいものがった。

しかし、オーガジェネラルもそれだけでは終わらない。

先ほどまで真っ黒だった皮膚が少しずつ元の色に戻っていく。

超回復しているのだ。

「やっぱり、ダメか」

徹が、そうぼやくと、回復したオーガジェネラルが立ち上がり、徹に向けて吠えた。

「GHOOOOOOOOOOOOOOO!」

「(やっぱり、首と胴を切り離さなければだめだな)」

オーガジェネラルの超回復。

この超回復こそ準災害級に指定される最たる所以だ。

このオーガジェネラルを倒すためには、首と銅を切り離す必要がある。

みるみる回復し、以前の状態になりかかっているオーガジェネラル。

徹は、高速で、オーガジェネラルへ間合いを詰め、オーガジェネラルの首をめがけ、新・兼続で右から薙ぎ払った。

薙ぎ払おうとした瞬間、オーガジェネラルは、持っていたマチェットを防御に使う為、首と徹の刀の間に入れ込んだ。

そして、刀とマチェットがぶつかる。

すると、マチェットが二つに切り落とされ、オーガジェネラルの首も斬り落とされ、近くに転がった。

そして、大きな体がゆっくりと前倒しに倒れた。

バターン

オーガジェネラルは倒された。

徹は即座にオーガジェネラルの近く行き首と銅体をインベントリへ格納した。

そして、馬車のところまで帰っていった。

徹が馬車まで帰ると大騒ぎになっていた。

徹の戦闘を見ていた赤髪の女が大興奮状態だったからである。

そして、徹に話しかけてきた。

「お前、何者だ!高位の治癒魔法を使ったかと思えば、超高速で移動し、オーガ達を瞬時に切り伏せ、高位の攻撃魔法を使用した後、あのオーガジェネラルを一太刀で瞬殺するとは!そして、最後のはなんだ!?マジックバックか?!お前は、オリハルコン!いやアダマンタイト級の冒険者なのか!!?」

赤髪の女は興奮している。

しかし、それは、普通の反応だ。徹は誰が見ても、高位の治癒魔法や攻撃魔法を使用出来、達人以上の剣の使い手であり、そして、準災害級のオーガジェネラルを瞬殺するのだ。この戦闘だけで、徹が英雄の領域に達しているのは明白だ。

「いいや、駆け出しの冒険者だ」

っと徹は答えた。

「それはないだろう!?どこの国にいたんだ?お前ほどの者ならば知らないはずはない!名前は何という?!」

「徹という」

徹がそう言うと、赤髪の女が首を傾げ考え始めた。

すると後ろから声が聞こえてきた。

「エレナ!」

それは、ジェネラルオーガに切られ重傷だった女だ。

セシリアが支えながら徹たちのそばへ連れてきた。

「ルイ!気が付いたのか?傷は大丈夫なのか?」

「大丈夫、こっちのセシリアちゃんが回復魔法をかけてくれたから」

すると、青髪の女が徹の方を向き、頭を下げた。

「私たち、疾風の剣を助けていただきありがとうございます。私はルイと申します、そしてこっちが仲間のエレナです」

ルイは、青色の髪の色でロングヘヤー、小顔で目が切れ長く、きれいな顔立ちをしている。身長は160cmぐらいで、スタイルは細く、肌は白い。しかし、武具の間から見える谷間を見る限り、なかなかのいいものを持っていることは容易に分かった。

そしてエレナは、赤髪でベリーショートの髪型。同じく、細めで、身長は165cmぐらいで目がぱっちり、顔立ちは可愛い。健康的な肌の色をしている。

「エレナもお礼を言って」

ルイに促されエレナも挨拶をした。

「エレナだ、お前のお陰であたい達は助かった、ありがとう、お前がいなかったらあたい達はとっくに死んでいた」

そういうとエレナも頭を下げた。

再度、2人が徹に向けて頭を下げた。

彼女らの防具は、オーガジェネラルからの逃走ですでにぼろぼろの状態になっている。そして、二人が頭を下げたことで胸元が露わになっている。

そして徹はそれを凝視していた。

「トール様!」

ルイを支えていたセシリアがジト目で徹を見ている。

「ん、おっほん、いいや、別にいいんだ、俺らも冒険者だから、モンスターを狩ることが出来てよかった」

徹がそう言うとルイが頭を上げ徹に話しかけた。

「いいえ、それはいけません。命のお助け頂いたのですから、お礼をさせてください」

「そうだ、あたいもトールに礼がしたい!」

ルイとエレナは徹に向かって礼がしたい旨を伝えた。

「本当に礼はいい、ちなみにお前たちは、なぜ、ここにいたんだ?オーガジェネラルに追われることは普通、あることなのか?」

徹が二人に尋ねるとルイが答えた。

「はい、まず、私たちは、疾風の剣と言いまして、ラクトークを拠点とするシルバーランクの冒険者です、あの林にいたのは、最近、国のあちこちでモンスターの動きが活発になっており、その調査の為、この周辺一帯を確認しに来ておりました、その中で、あのオーガジェネラルに見つかり切られ逃走する羽目になりました」

「くそー、あいつら、あたい達が逃げるのを楽しんでやがった、狩りでもしてるつもりだったんだろう、くそ!くそ!」

エレナは勢いよく拳と手のひらをぶつけた。顔の表情には怒りが現れている。

ルイはバツの悪そうな顔をしている。

「そうだったのか、大変だったな」

徹は二人に優しく声をかけた。

「しかし、トールさんには助けていただき、本当に感謝しております。ありがとうございます」

「ありがとう!」

2人は何度も礼を言った。

「事情は分かった、それは苦労したな、俺らも同じく冒険者で、帝都に用がありそこへ向かっている。今は、次の町のラトラタを目指している」

徹がそう言うと、ルイ達が徹にお願いをしてきた。

「よろしければ、私たちをラトラタまで同行させて頂けませんか?ラトラタは私達が帰るラクトークまでの中継地点でもあります。そして、私もエレナもこのありさまで防具はぼろぼろ、武器すらありません。ラトラタまで行き、そこで武器防具等を揃えたあと、ラクトークへ戻りたいと思います。ラトラタについたら、必ず、お礼はさせて頂きます、なので、よろしくお願いします」

「トール、お願いだ!」

2人は頭を下げた。

「トール様、いいじゃないですか?馬車も空いてますし、食料も余裕があります」

そう言ってきたのはセシリアだった。

3人は徹を見つめる。

「わかった、わかった、別に2人増えたところで問題ない、ラトラタまでは一緒に行こう」

すると、二人から歓喜の声が上がった。

こうして、徹とセシリアの一行にエレナとルイが同行することになった。

ここからラトラタの町までは通常10日ほどかかる。その後、ラトラタから帝都まで10日ほどで着く。ラトラタは帝都まで道のりで、最後の休憩地点の町と言っていい。そして、ラトラタからラクトークまでは、4、5日で着く位置関係だ。エレナとルイにとって徹たちの旅はちょうど都合がよかったのだ。そして、その日は日が暮れそうだったので野営することにした。

現在、セシリアとルイが食事の準備をしている。エレナは薪の準備をしているようだ。その中で、徹は、茜色の空と月の明かりを頼りに防具と武器を作っていた。

現在、ルイとエレナは武器もなく、防具もぼろぼろ。男性の徹からしたら見ていられない。自分には成長補正もあり、武器を作るスキルがある。そして、防具は大したものは作れないが、体を隠すだけのものは出来るだろう。そう思い、徹はまず、防具を作り始めた。素材は、徹のインベントリに保管されている本日手に入れたオーガジェネラルだ。まず、初めにオーガの素材で練習した。

ピコーン

 防具作成の道を知るものになりました。


そして、スキルを取得した後、オーガジェネラルの素材を使い、一つ武具を作成した。

結果、出来上がったものは相当のものだった。


鎧:不滅の鎧(★★★★)

特質級ユニークの防具。徹によって作成された鎧。オーガジェネラルの革を使用し作られた非常に丈夫で高価な防具。オーガジェネラルの革でできているため、かなり丈夫にできており、巷にある一般の武器がこの鎧を貫くことはまずない。また、防具に復元する能力がついており傷ついたとしても時間が経過すると元に戻る。


とんでもないものを作ってしまった。

「(ええー!俺やセシリアの武具よりいいのが出来たな!防具を買ったの無駄だったじゃん!)」

あまりにもいいものが出来てしまった。現在、徹がつけている防具はただの革であり、黒狼との戦闘ですでにぼろぼろ。セシリアの防具もそれなりにいいものだったが、今、自分が作り出したものの方が遥かにいい。ということで自分のを含め、4つ作ることにした。そして4つの武具が完成した。

鎧:不滅の鎧+1(★★★★)

鎧:不滅の鎧+2(★★★★)

鎧:不滅の鎧+3(★★★★)

鎧:不滅の鎧+4(★★★★)

「よっし、そしたら俺は不滅の鎧+3を付けるか、あとでまとめてみんなに渡そう」

徹はそう言うと4つの武具をインベントリへ収納した。

そして、次は、武器を作り始めた。

素材は、同じく、オーガジェネラルだ。オーガジェネラルの骨と牙を使用し作った。

作成すること数十分。

「(また、とんでもないものが出来そうだ。。。)」

徹は、武器を作った。作ったのは、二ふりの剣と一振りの短剣だ。


剣:不滅の剣(★★★★)

特質級ユニークの武器。優秀な武器作成の技能を持つ徹によって作成された剣。オーガジェネラルの骨を使用し作られた非常に丈夫で高価な剣。オーガジェネラルの骨でできているため、切れ味も抜群である。また、剣に復元する能力がついており刃が欠けても時間が経過すると元に戻る。


剣:大鬼の牙短剣+3(★★★★★)

伝説級レジェンドの武器。優秀な武器作成の技能を持つ徹によって作成された牙短剣。オーガジェネラルの牙を使用し作られた非常に丈夫で非常に高価な短剣。オーガジェネラルの牙でできているため、切れ味も抜群でまた美しい。また、剣に復元する能力がついており刃が欠けても時間が経過すると元に戻る。加えて、魔力を通りがよく、魔法剣としても利用が可能。


また、かなりのものが出来てしまった。同じく特質級ユニーク武器と伝説級レジェンド武器である。

「また、セシリアの短剣を購入したのが無駄になったな」

つくづく無駄な買い物をしてしまったようだ。

そうこうしていると、

武具と武器を作り終えた徹の鼻に食欲をそそるいい匂いがしてきた。

食事が出来上がったのである。

そうしているとルイが徹を呼びに来た。

「トールさん、食事が出来ました。セシリアちゃんも待っていますよ」

徹に優しく話し掛けた。

「(ルイは本当にきれいだな)うん、わかった、片付けたらすぐ行く」

「わかりました」

徹は、ルイにそう答えると、すぐに片づけをはじめ、みんなの元へ移動した。

出来上がっていた食事は、汁物とパンだ。

汁物には、たっぷりの野菜やぶつ切りの肉が入っており健康的且つボリューミーでうまそうだ。そして、パンもふっくらとしている。

4人は焚火を囲んでそれを食べ始めた。

4人で食事をしていると、エレナが食いながらセシリアと徹に話しかけてきた。

「野宿の食事にしてはうめーな、セシリアは料理がうまいんだな」

すると、セシリアは少し赤くなって答えた。

「いいえ、それほどでも、まだ全然でしゅ」

セシリアの顔が赤い。あまり褒められるような生活をしていなかったセシリアにとってはうれしいのだろう。

ルイも話に参加してきた。

「トールさんはすごいですよね、これだけの食材が新鮮にあるのもトールさんのマジックバックのお陰ですよね、マジックバックなんて、ごく一握りの人間しか手に入れられない高級品ですし、トールさんはどこかの貴族様なのでしょうか?」

ルイが徹に質問をする。

「いいや、俺はただの冒険者だ。まぁ、腕には自信があるがな」

徹は、少し笑みを浮かべルイに答えた。

「しかし、トールさんのほどの強さを持っていればかなり有名になるのではないかと思うのですが、私たちは御見それしていたようです。申し訳ございません」

ルイが徹に謝る。

「いや、いいんだ、俺も長いこと、森の奥で修業をしていたからな、恐らく、誰も知らないだろう」

徹とルイがそう話しているとエレナが会話に入ってきた。

「そうだ!そうだ!今日のトールはすごかったぞ!高位の回復魔法にかなりの威力の攻撃魔法、そして、卓越した剣技、まったく、アダマンタイト級冒険者ではないかと思ったぜ!」

エレナが興奮しながら話をしている。

「エレナさん、口から食べ物がいっぱい飛んでますよ」

セシリアがエレナに注意した。

「それはすまねー、しかし、本当にすごかったんだぞ、ルイは見てないだろうけどな」

するとセシリアも会話に入ってきた。

「トール様は、以前からお強く、私の村を襲ってきたジャッカルという頭がいる大盗賊団を一人でやっつけてしまったんです」

すると、エレナが驚愕した。

「え”ー!ジャッカルと言えば、何人もの冒険者を返り討ちにしている大盗賊団の頭じゃねぇーか、やっぱお前はすごいんだな!」

「トールさんはすごいんですね!」

「それだけではありません、その大盗賊団にかけられていた賞金を全部村のために寄付されたんです」

今日はセシリアは多弁だ。自分のことのように徹のことをほめている。顔がすごく誇らしい感じだ。

「トールさんは心お優しい方なのですね」

徹を見るルイの目が優しく、トローンとしている。徹もあまり褒められるのは得意ではないらしく、うれしいながらも話を変えようとした。

「ん、うん、いやいや、そんなことはない、たまたま、困ってそうだったので助けただけだ、深い意味はない」

「やっぱいいやつだなお前」

「俺の話はいい、そういえば、セシリアとルイとエレナに渡したいものがある」

徹はそう言って立ち上がった。

そして、バックから取り出すふりをして、鎧を取り出し、セシリアとルイとエレナの前へ置いて行った。

「今日、仕留めたオーガジェネラルの革で作った鎧だ。二人の防具はすでにぼろぼろで見ていられなかったから俺が作った。そして、セシリアはいいものへのクラスチェンジだ」

「トール様ありがとうございます!」

「お前武具も作れたのか!そして、オーガジェネラルの革だって!高級素材じゃないか!いいのかもらっても!?」

エレナは興奮しっぱなしである。

「いいんだ、もらってくれ」

「トールさん、ありがとうございます。この輝き、トールさん、これは、自動修復の能力がついていませんか?噂で聞いたことがあるのですが、オーガジェネラルの素材を使った武具は、作成者の腕が良ければ自動修復の能力が付与されると聞いたことがあります。この感じ恐らく自動修復が付与されているのでは?」

ルイは博学のようだ。

「ああ、少しだが、自動修復の能力が付与されている」

「マジか!そんなもの、本当にもらっていいのか?あたいは買い取れるだけの金は持っていねーぞ!」

「いいんだ、やるよ」

「ありがとー!トール、大好きだ!」

「トールさん、何から何までありがとうございます」

「トール様ありがとうございます」

徹が続いてそれぞれの前に武器を置いて行った。

「まだ、終わりじゃない、短い間だが、俺たちはこれから旅する仲間だ、武器も渡しておこう、セシリアはいいものへのクラスチェンジだ」

そう言い、3人の前に武器を置いて行った。

ルイとエレナに不滅の剣をセシリアに大鬼の牙短剣を置いた。

「これも、オーガジェネラルから作った剣だ」

「お前、武器も作れたのか!!それも、オーガジェネラルが素材ということはこれも相当の代物じゃないか!」

特質ユニーク級の剣だ」

特質ユニーク級!!どんだけだよ!家が数軒買えるレベルじゃねぇか!」

「トールさん!このような高価なもをいくつも頂きありがとうございます!」

「これにも、自動修復がついている、自動修復がついている為か武具が不滅の鎧、剣が不滅の剣という、まぁ大切に使ってくれたらうれしいが、武具も剣も消耗品だからそんなに気にするな」

「「「ありがとう!」ございます!!」」

みんな、武具や武器をみて笑みを浮かべている。作り手の徹も自分の作品が喜ばれて相当ご機嫌だ。

エレナに至ってはその場で鎧を脱ぎ、新しい鎧を着始めた。

慌てて、セシリアが徹に飛びつき、徹の目を塞いだ。

「トール様だめですよーー見ちゃ」

「わかっているよ、俺はあっちを向いておくからみんな着てくれ」

そう言うと徹はみんなとは反対側を向いた。

3人は防具を着始めた。

「ちょっと、胸がきついな、あれ?自動で調節されたのか?すげーな」

「さっきの方が強調されて良かったと思ったのですが、残念です」

「トール様、ちょうどいいです」

一部を除き、大満足したようだ。

「じゃあ、飯も食べたし、みんな、武具を新調したし、最後に風呂に入ってから寝るか!」

徹が言い出した。

「お風呂ですか?徹さんそんなことが出来るのですか?」

「風呂っちゃ、貴族が入るもんだろ、水がもったいなくて、見ていられねぇぜ」

ルイとエレナは驚いている。

「あぁ、魔法でできる、まぁ、見とけ」

すると徹は、土魔法と水魔法と火魔法を駆使し風呂を作り始めた。

それを見ていた二人は驚愕している。

「お前、何種類の魔法が使えるんだ!」

「トールさんと一緒にいたら驚いてばっかりです」

2人がそう言っている間に完成した。

「これが、俺流、露天風呂だ、相当気持ちがいいぞ、気が向いたらお前たちも来いよ」

そう言うと徹は、風呂に向かい、服を脱ぎ、風呂につかり始めた。

風呂につかっている徹を見ながら、ルイとエレナが話を始めた。

「ルイどうする?お前は行くか?あたいも一様、女だし、ちょっと、トールと入るのは少し恥ずかしい」

 エレナの顔が赤い。恥じらっているエレナの顔はすごく乙女な感じで可愛い。

すると、ルイが答える。

「エレナ、ここは行くべきよ、せっかくトールさんが、作ってくれたんですもの、ここは入らなければ礼儀に反するわ」

そう言うとレイは服を脱ぎ始めた。

大胆である。

レイに促されるがまま、エレナも服を脱ぎ、風呂に向かおうとした。

「お二人とも待ってください」

セシリアが露天風呂に行こうとする二人を止め、急いで馬車へ向かい、バスタオルを取り、その後二人のもとに行き、バスタオルを渡した。

「これを使ってください。トール様はすごくエッチですから、気を付けてください!」

っとセシリアはふくれっ面で二人に話しかけた。

「おお!気が利くなセシリア!ありがとう!これで心置きなく入れるぜ!」

「私は別にいらなかったのですが。。。」

「ルイさん、何かおっしゃいました?」

「いいや、なんでもありませんわ」

ルイがにっこりとセシリアに笑顔で答えた。

そして、3人が、バスタオルに身を隠しながら露天風呂に入っていった。

「星がきれいだな」

徹がぼそりと独り言を言う。

「本当にきれいですね、こんなにゆっくりと夜の空を眺めたのは何年ぶりでしょう」

徹の独り言に反応してルイも言葉が出る。

「確かに、仕事の依頼をこなす毎日でこんなに夜空を見ることはなかったな、ありがとよ」

エレナも満足のようだ。

「満足してもらってよかったよ、造った甲斐があった」

「ほんときれいです、トール様のお風呂はいつも最高です!」

4人が湯船につかり夜空を見上げている。

「(ほんと、確かにこんなにゆっくりと夜空を見たのは何年ぶりだろう、日本にいるときは仕事漬けだったしな、しかし、この状況、おいしい状況なのに、いまいち、エッチな展開にならないなぁ~)まぁ、短い間がこれから毎日作るから」

「ありがとうございます」

「ありがとな!」

4人は露天風呂を堪能した後、床へ就いた。


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