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対決


徹たちの旅は、途中、小さなモンスターに狙われたが、特に問題はなかった。旅は、順調にいき、帝都までの中間地点のところまできていた。トトルの街からタンザスまで3日間、タンザスの街で1日過ごし、そのあと、8日間をかけて、ジンタの街へ来ていた。ジンタの街は、タンザスを小さくしたような街だ。ここでは、旅に必要な食料を買う為、市場に来ていた。ジンタの市場も活気がなく、人通りが少なかったが、ちらほら兵士たちを見かけった。二人は、兵士たちが多いことに少し疑問に思っていたが、食料を買うことを優先し、市場の中をゆっくりと馬車を進めていた。

「トール様、私の覚えた回復魔法ですが、これで少しはお役立つ立てますでしょうか?」

「あぁ、セシリアはすごいな、もっと修行を積まないと覚えられないと思っていたが、こんなに早く回復魔法を覚えるとは思わなかった。これで、ケガをしたときは自分で治せるな」

「はい、トール様。もし、トール様がケガをされたときは私が治しますから。いつでも言ってくださいね」

「わかった、その時はセシリアにお願いしするよ、ありがと」

先日の冒険者の奇襲の際、徹は火傷らしき?ものを負った。ただの魔法があたった跡だが。低位の魔法などで傷つくトールではない。しかし、念のため、徹が自分で治癒魔法をかけておいた。しかし、徹がケガをしている?光景を見て、何もできなかったセシリアは、自分に不甲斐なさを感じたのだろう。それからというものセシリアは今まで以上に魔法の練習に打ち込み、魔力操作と回復魔法(下)までを取得していた。普通であれば何年もかけて習得するところだが、セシリアの魔法に対するセンスがあったこと、また、成長補正も相まって短期間に習得できた。

「にしても、トール様、この町も人気がないですね」

「そうだな、帝国の町はこのような町ばっかりなのか?」

「わかりませんが、私の知っている町は、どこもこのように人気がなく、活気のある街を見たことがありません」

「そうか。しかし、ちらほら兵士たちを見かけるが、見回りかなんかだろうか?」

「恐らく、そうだと思いますけど、見回りにしては、慌ただしいですね」

「確かに、そうだな」

市場の位置は、町の北側に位置しており、そこから先に行くと、帝都につながる道と門とその先には関所がある。徹たちは、市場の買い出しのあと、北に向けてその日中に出発するつもりでいた。

徹たちが買い物をしていると、兵士達の一人と道を歩いていた旅人風の老人がぶつかった。旅人風の老人は跳ね飛ばされ、道に倒れこんだ。すると兵士が老人に向かい怒鳴った。

「クソジジイ!邪魔だ!叩き切るぞ!」

兵士は剣を抜いた。

その光景を見た徹は、すぐに兵士に近寄っていき、そっと兵士に話しかけた。

「兵士様、お忙しい中、老人にかまっている時間はないんじゃないでしょうか?仕事が終わった後、これで一杯飲まれて憂さを晴らしてください」

徹は、そっと兵士の手元に大銀貨を握らせた。

「貴様、殊勝な心掛けだ、我も忙しい、ここを立ち去るとしよう、老人、命拾いしたな」

そう言うと兵士は、その場を立ち去り、北の門の方へと走っていった。

「おじいさん大丈夫ですか?よかったらけがを見せてください」

そう言うとセシリアは老人に近寄り、おじいさんのケガを回復魔法で癒し始めた

「ヒール」

すると、おじいさんのかすり傷は見る見るうちに治っていった。

「こころ優しき、お嬢さん、ありがとう、助かったよ。そして、そこの少年、すまないな」

「いいえ、いいえ、困っているときはお互い様です」

「なんと、この帝都にもそのような心根の人間がおったとは有り難いことじゃ」

「いえ、それほどのことでは」

「いいや、この国の民は心が荒んでおる。皆、余裕がないのじゃ、とくに、帝国の兵士たちは、気性が荒く傲慢でかなわん、また、王は民の生活が見えておらず、国は疲弊している、軍国主義と不正の横行が原因じゃろうな」

「そうなんですね」

「そうじゃ、それにくらべ、お嬢ちゃんは、わしのケガを直してくれるし、優しい心の持ち主じゃ、ありがとな」

老人は、セシリアにお礼を言うと、そっとセシリアのお尻を触った。

「きゃ!」

セシリアは驚き、飛び上がった。すかさず徹が、おじいさんに

「おい爺さん、せっかくセシリアが傷を治してくれたのに、セクハラするなんどういうつもりだよ!」

「せくはら?尻を触ったことか?そうか、すまん、すまん、また、気づかぬうちに尻を触っていたのか?先ほどの兵士との衝突で気が動転していた。申し訳ない。あまりに、お嬢さんが、死んだばあさんに似ていてな、思わず、触ってしまった、すまなかった」

堂々と嘘くさい言い訳を言った。セシリアは、顔を真っ赤にして恥ずかしさを隠しきれていない。

「(絶対嘘だろうその言い訳・・・)もう、爺さん、そんなことするなよ」

「わかった、わかった、そうだ、おぬしら情報をやろう、これから帝都に向かうのだろう、北に向かうのはやめておけ、今、この町の兵士たちが関所に集合しておるが、あそこは危険じゃ」

「なぜ、帝都に向かうことがわかった?兵士たちは何をしているんだ?」

「ああ、この道は、帝都への最短ルート、馬車を持ち、食料を買い込んでいれば、何となくわかる、あと、今、この町の兵は、関所に集まり、防備を固めているのじゃ」

「なぜ、そんなことをしているんだ?」

「それは・・・黒狼が出たからじゃ」

徹は聞きなれない名前に老人へ質問した。

「爺さん、こくろうってのはなんだ?」

老人と徹が会話をしているとセシリアが話しかけてきた。

「私も聞いたことがあります、かなりの剣の使い手で、誰にも負けたことがないっていう大剣豪ですよね」

「おう、そうじゃ、お嬢ちゃん、よく知っておるの、そうじゃ、黒狼は剣士で名はジンと言い、黒狼という名は二つ名じゃ、かなりの剣の使い手で、その強さはこの大陸で5本の指に入ると言われておる。謎が多く、大陸全土を周り、強い相手を見つけては戦いを挑みそして倒し、それを繰り返しておる。以前、帝国のある都市の領主が黒狼に腹を立て、黒狼討伐の為出兵したが、出兵した兵士10000を返り討ちにされ、蹂躙されたことで有名じゃ。それ以来、帝国では一級犯罪者となっておる。しかし、あまりの強さに誰も裁くことが出来ず放置状態となっておる。悪いことは言わん。北を避けて一度、南に戻り、山脈を迂回して帝都を目指した方がいい。時間は相当かかるが、黒狼が過ぎ去るのを待つより安全じゃろう」

老人がそう言うと徹は、老人に対して言葉を返した。

「爺さん、情報をありがとう、俺らは急ぎの用があり、回り道はなるべく避けたい、北の道を進むよ」

「そうか、なら、気を付けていくのじゃぞ、基本的に黒狼はこちらから何もしなければ、何もしない、この町も兵士を集めているが、念のための対策じゃろう、強いやつしか目がないからのう」

「そうか、ありがとう、そういや、爺さん、名前をなんというんだ、爺さんとは縁を感じる、俺は、徹という」

「トールか、珍しい名前じゃのう、わしはリジュンという、また、あった時は今度は酒をおごってくれ、じゃあな」

そういうと老人はその場を去っていった。するとセシリアが徹に話しかけてきた。

「トール様、黒狼は私でも知っている大剣豪です。危険です。ここはおじいさんがおっしゃったとおり、一度、南に戻り、山脈を迂回し帝都を目指しましょう、ここをまっすぐ行けば危険に巻き込まれるかもしれません」

セシリアの言葉に対し徹は答えた。

「いや、唯でさえ、どれくらいの時間が持つのかわからない現状、遠回りをしている余裕はない、このまま帝都へまっすぐ進む」

徹には自信があった。自分のステータスとチート能力があれば特に問題ないと思っていた。そもそもこれまで死の危険を感じさせるようなことはなかった。あの、大盗賊を倒した時でさえ、なんの障害も感じなかった。

「わかりました。トール様、私のためにありがとうございます。危険になった時は迷わず戻りましょう、私の体は大丈夫ですから」

セシリアはにっこり徹に笑いかけた。

「ああ、俺に任しておけ」

徹はセシリアにそう言い、二人で関所に向かった。



関所には、兵がごったがいしていた。徹は、集まった兵の数を見てびっくりした。

数千という数の兵士が一か所に集まっている。その異様な緊張感と人が集まってまじりあう匂いが具合を悪くさせる。

「黒狼が来る、隊列を整えよ!」

「重装備隊は前へ、魔法師団は後衛で待機せよ、魔法師団はいつでも魔法を打てるように待機!」

ジンタの町の所属の将校たちの怒号のような号令が飛ぶ。その中で兵士たちの私語がちらほら聞こえてくる。

「黒狼とかやばいだろう、俺たち、生きて帰れるのか?」

「以前、1万の兵を単独で蹂躙した剣士だ、4000程度の兵じゃ勝てないよな」

「逃げたほうがいいじゃないのか?」

「逃げたら家族ものとも軍に虐殺される、俺達には選択肢はない」

兵士の中からそのような会話が聞こえてくる。黒狼という人物は相当有名なのだ。徹が、会話を聞きながら進んでいると、一騎、徹の馬車に向けて、進んでくる兵士がいる。

「貴様!なぜ、このような場所に馬車できているのだ?何者だ!!」

指揮官らしきものが徹たちへ話しかけた。

「騎士様申し訳ございません、この先の関所に兵糧を届けるように指示を頂いた冒険者です」

そうすると、騎士は少し眉間に皺を作って難しそうな顔をしたが、馬車の中に積んである荷物を見て徹たちを通した。

「わかった、さっさとしろ!ここは戦場になるかもしれん!お前らの命など守ってやれんぞ!」

「承知しました、お気遣いありがとうございます」

指揮官は、その言葉だけを残し去っていった。


そして、徹たちは、兵士たちの築いた陣の端を通り、関所まで来ていた。

関所の前には、複数の兵士がいた。その兵に対し、徹は話しかけた。

「すみません、この関所を通り帝都へ向かいたいのですが、どのようにしたらいいでしょうか?」

すると兵士は徹に答えた。

「今はダメだ!緊急事態でこの関所は通れん!」

「それは、申し訳ございません。お忙しい中、ご迷惑をおかけしまして。我々は旅を急ぐ者でして、どうかお通し頂けれないでしょうか」

徹も引くわけに行かず食い下がった。

「何度も言わせるな!通せんのだ!貴様!叩き切られたいのか!」

兵士たちが抜刀し、それに対し徹は直ぐに言葉を返した。

「いえいえ!滅相もございません!兵士様、これでお見逃しいただけませんでしょうか?私の帝都にいる母が倒れてしまいました。以前より、もう長くないと医師より聞いていおりました。このままでは、母の死に目に会えません。どうかお見逃しを!」

徹は、懐から金貨3枚を取り出し、兵士へ渡した。

「ん!んー、そうか、私も人の子、そういう理由とあれば、致し方ない、しかし、お前らに何かあったとしても助けてはやれんぞ、よいな!」

「問題ございません」

徹が、そう答えると兵士が関所の端にあるドアを指さした。

「わかった、その端にちょうど馬車が通れるぐらいのドアがある。そこから出よ」

「わかりました、ありがとうございます」

徹は兵士に深々と頭を下げお礼を言った。そして、徹は最後に兵士に質問をした。

「兵士様ちなみに1点伺ってもよろしいでしょうか?」

「なんだ、手短に言え!」

兵士はめんどくさそうな顔をした。

「はい、ザノバ大将軍配下の隊はこちらに駐屯されておりますでしょか?」

徹の質問に対し、兵士は即答した。

「ザノバ大将軍の隊だと?ここに駐屯しておらんし、通ってもおらん」

「そうですか、ありがとうございました」

徹は、兵士たちに礼を言いながら、そのドアを通っていった。


関所を通った徹たちは、そのまま帝都への街道を進んでいた。黒狼がいるとの話を聞いていたので慎重に進んでいたが、進むこと30分ほどの時間がたったにも関わらず、今のところ黒狼にあっていない。徹は、間違った情報だったかもしれないと考えを改めようとしていたが、前から、全身漆黒の男がこちらに向かってゆっくりと歩いることに気づいた。漆黒の男は大きさ190cmぐらいの大きさで、体にはぼろぼろの黒の布を巻いており、背中に自分の体より大きい大剣を背負っている。

恐らく、あれが黒狼だ。徹はそう思った。男が近くづくにつれ、感じる、ビリビリとした感触。恐らく恐怖だ。そう思いながら、徹は、ゆっくりと馬車を進め、男の隣を通り過ぎようとした。

「(このまま静かに過ぎ去ってしまえば)」

ちょうど、馬車が、男の隣を通り過ぎようとした時、見知らぬ声が聞こえた。

「バイコーンか、よく、そんな騎獣を得られたな」

先ほどまで馬車の隣ですれ違おうとしていたのに、気づくと徹の隣に漆黒の男が御者台に座っていた。徹の隣にだ。いつの間に。徹は思わず、新・兼光を抜刀し、その男を切りつけた。男はひょっと飛び上がり、馬車の前に降り立った。そして、男から発せられた殺気にバイコーンは怯え、足を止めた。

徹は、腹をくくり、男に話し掛けた。

「私は、駆け出しの冒険者をしている徹と言います」

すると、中からセシリアも

「・・・セシリアです」

漆黒の男は反応がない。

「・・・・・」

沈黙を耐えられず、徹が再度話しかけた。

「帝都に用がございまして、よろしければそこをお退きいただけないでしょうか?」

徹がそう言うと男は

「・・・・・俺と戦え」ととだけ言った。

「は?」

徹が、呆気にとられていると男は、再度言葉を放った。

「俺と戦えと言ったんだ」

少し沈黙があったが、徹はもう一度言葉を発した。

「いいえ、私には用事がありまして」

すると男は徹の言葉を無視して言葉を発した。

「では行くぞ」

すると男がその場から消え、次の瞬間、徹の隣に移動し、剣で切りかかってきた。そして、徹はその剣をよけるため、大きく、前へ回避した。

「トール様!」

中からセシリアが叫んだ。すると、男が徹に向けて話しかけた。

「ほう、あの剣を避けるとは、いいものを持っているな」

その言葉に対し、徹は怒った。

「あぶないじゃねーか!、なぜそんなことをする!」

「戦いたいから・だ!」

先ほどまで馬車にいた男がすぐ徹の目の前に移動し、徹の胴を薙ぎ払ってきた。徹も瞬時に刀と槍を持ち直しその剣を受け止めた。

「(重い!)」

その剣技を受け止めた徹は、受け止めたままの体制で後ろへ押されていく。すると、次の瞬間、男は徹の後ろに移動し、徹に切りかかってきた。

「(速い!)」

徹は、それを槍で受け止めたあと大きく距離を取った。徹は、透かさず、男を鑑定した。

【 名 前 】 ジン

 【 種 族 】 §¶▽ΑΘδжΛ

 【 年 齢 】 §±▲×Α◆◇ж

 【 称 号 】  黒狼

 【 レベル 】 ●§±▲ΑΘδ◆жΛ

 【 H P 】 §±×ΑΘδ◆◇жΛ/§±¶ΑΘδ◆◇жΛ

 【 M P 】 §±¶▽▲×◆◇жΛ/§×ΑΘδ◆◇жΛ

 【 魔 攻 】 ±¶▽▲ΑΘδ◆◇

 【 物 攻 】 ±¶▽▲×ΑΘδ◆

 【 魔 防 】 ◆▽▲×ΑΘδ◆◇

 【 物 防 】 ◆§±¶×ΑΘδ◆◇жΛ

 【 SPD 】 ◆●§±¶▽▲×ΑΘ

 【 スキル 】  ◆●§±▽▲×ΑΘδ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ◆●§±¶▽▲×ΑΘδ◆◇жΛ

徹の鑑定をしたが、ほとんどの項目が鑑定できなかった。

「(やばい、相手の強さがわからない、これは危険だ)ふざけるな!そちらが攻撃してくるのであればこっちも容赦はしない!ファイアーボール!」

今度は、徹が、ファイヤーボールを数十発黒狼に放ち、黒狼それを回避した。徹はすかさず黒狼の移動先を予測し蜻蛉きりで薙ぎ払った。予測通りに黒狼は動いたが、その斬撃も瞬時に回避された。徹はさらに追撃で、新・兼光で斬り掛かった。その攻撃も、黒狼に躱された。しかし、黒狼は大きく距離を取った。

「ほう、魔法に、槍に、刀と器用なやつだな、今のはヒヤッとした」

「それはどうも」

「久しぶりに骨があるやつを見つけたな、これは楽しい、じゃ今度は、こっちからも行くぞ」

黒狼が、徹に向けて剣を振り、かまいたちを発生させ、徹を攻撃してきた。徹はそれを避けたが、避けた先に黒狼がおり、そこで数十回の突きが飛んできた。槍と刀で受け止めた後、今度は、徹が、槍を使い、黒狼に目にもとまらぬ突きを繰り出した。黒狼はそれをすべて受け止め、地面をけり、徹の顔に砂埃をかけようとしたが、徹は瞬時にそれをよけ、また、黒狼に接近し、刀で数十回切りつけた。

「(攻撃が当たらないし、当たっても全て受け流される、これじゃ、ステータスが役に立たない)」

目にもとまらぬ斬撃や魔法のやり取りが徹と黒狼の中で行われていった。しかし、

決着が一向につかない中、黒狼が徹に話しかけた。

「お前」

「なんだ?」

「お前、剣と槍を覚えたばかりだろう?」

 黒狼は、急にそんな話を徹にしてきた。

「なぜわかる」

「確かに剣技、槍技、体さばきは出来ているが、それぞれに稚拙さを感じる、また、驚異的な身体能力を持っているが、それを全くと言っていい程、生かし切れていない、それにお前、恐らく、武技は使えないだろう?」

「武技?!」

徹は、武技という言葉を初めて聞いた。

「そうだ、武技とは、剣士や戦士などの武器を持って戦うものの特殊能力のようなものだ」

「そんなものがあるのか」

「そうだ、お前とやり合うのは楽しかったが、そろそろ終わらせてもらおう、死ぬなよ」

「あぁ、勝手にしろ、じゃお前こそ死ぬなよ、ファイアーボール!」

徹の規格外のファイアーボールがなん十発と黒狼に向かい飛ばされていく。そのファイアボールが地面に着弾し、爆音が鳴り響く。

「(やったか?)」

徹が思った瞬間、黒狼が、先ほどの位置から徹の後ろ側へ移動していた。

「面白かった、しかし、終わりだ、武技”黒龍滅殺剣”!」

黒狼が技を繰り出すと辺りが急に暗くなり、目にも留まらぬスピードで無数の黒き刃が徹に攻撃をしかけてきた。

「(すべて、防ぎきれない!)」

徹は、槍と剣で防御しているが間に合わない。

「トール様!!!」

セシリアが叫ぶ。

黒龍滅殺剣を受けた徹は、その場に倒れていた。すると黒狼が徹に近寄ってきた。

「あぁ、く、きさま・・・」

すると、黒狼に対し、矢をが放たれた。セシリアだ。

黒狼はすぐさまその矢を剣で薙ぎ払った。そして、その時、セシリアは徹と黒狼の間に入り黒狼を威嚇した。

「トール様は私が守ります!」

セシリアは必死に黒狼をにらみ受ける。

黒狼はセシリアに一瞬目を向けたが、興味がないのか、すぐに徹に目を移して話をつづけた。

「あれを受けて生きているとは、タフなやつだな、普通の人間なら、ばらばらになっているのだがな」

徹の体中には無数の切り傷があった。恐らく、徹の体でなければ、バラバラになっていただろう。

「今日は、楽しかった。久しぶりに骨があるやつと戦えて俺は満足だ、お前ならさらに強くなるだろう、お前が強くなったら俺に挑みに来い、相手をしてやろう」

「ふざけるな・・・」

徹の顔色が悪い。

「お前も楽しかっただろう、全力が出せて、お前の剣を受け止めれる奴など俺以外にほとんどいないぞ」

「余計な、お世話だ・・・」

徹は、黒狼に答えるだけで精いっぱいの状況だ。

「そうか、じゃ、俺は帰る、楽しかった」

「勝手な、やつ、だ・・・」

「ふふ、まぁ、ありがとよ」

黒狼は、徹に軽い礼を言うと、徹たちに背を向けて歩き出した。その時、黒狼が思い出したかのように、振り向き徹に話しかけた。

「あ~、そういえば、お前に言っておきたいことがあってな、お前、その懐に指輪を隠していると思うが、それは危険だ」

徹は急な話の変化に少し動揺した。

「なぜ、わかる」

すると黒狼が

「それだけ禍々しい気を放っているアイテムはお目にかかれないからな」

「そうか・・・」

「そのアイテムは、お前の望みを叶えてくれるしろものだが、その代償はでかいぞ、絶対使用するな」

「そうか、、余計なお世話だ」

「そうか、じゃあな」

最後にその言葉だけを残し、黒狼は去っていった。徹は、黒狼が去ったことを確認した後、気を失った。

「トール様!!」

セシリアは徹に抱き着き、泣きじゃくりながら回復魔法を行使した。


ピコーン

レベルが60になりました。

ピコーン

 剣技(上)が、槍技(超)、火魔法(中)水魔法(中)風魔法(中)土魔法(中)雷魔法(中)氷魔法(中)になりました。


徹にはそのアナウンスは聞こえていなかった。


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