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第二話 自己紹介と現状

 さて、突然だけど自己紹介をしよう。

ぼくの名前はルーシー。とある森の中にある名も無き村のルインズ家の長男で、最近十二歳になったばかりの自分で言うのも何だけど若々しい盛りだ。家族構成としては父、母、姉、妹の五人家族。

 少し多いかなとは思うけれど、ありふれた家族構成でありふれた家に生まれたぼくは、生まれた時から村の誰からも忌み嫌われる存在だった。

正確には生まれて髪が生え始めた辺りから、だけど。

 何にせよ、髪色が黒色だったのが原因でぼくは軟禁されている。

軟禁されていると気付いたのは物心がついた頃だけど、それから更に数年過ぎた今ではこの生活も慣れたものだった。そりゃ軟禁当初こそは泣きわめいたけれど、そこらに放置されている本を見つけてからは読書がぼくの暇潰し兼趣味になった。

 そして読書のお陰でぼくが軟禁されている理由も大体察しがついた。

 悪魔ないし魔人と呼ばれる存在の特徴が黒髪だから、だ。

それらに近いらしい存在の魔獣も黒い煙を纏っている為、正確には人間にとって黒い色自体が恐れられているからかな。どれも実物を見たことはないけど、本にそう書いてあったからそうなんだろう。

 そんな黒髪を持つぼくだけど、当然ながらぼく自身では人間だと思っている。

その、人外のものが持つ能力スキルを持っていないのが一番の自信だ。いや、自信を持って言うべきことでは無いけども。とはいえ逆に、持ってたら悪魔と言われても困るしね?

 ちなみにぼくの存在はルインズ家の秘密であり、村の人達にはぼくの存在は知られていないらしい。

知られるとどうなるか分からないから、だそうだ。両親のその判断にぼくはとても感謝している。正直に答えるならば理不尽に思うことが無いわけではないけれど、少なくともこうして生きて物事を考える事が出来ているのは両親のお陰だ。姉と妹もぼくの事を大事にしてくれていたと思っているし、ぼくはこの生活に不満はなかった。

 長くなってしまったけれどぼくの自己紹介はこれで終わり。

誰が聞いているか分からない、というよりも頭の中での事なのだから誰も聞こえてる訳が無いけど、自己紹介を終えたぼくは辺りを見る。

 本でしか知らなかった木々が鬱蒼と生い茂る緑の景色、森というべきそんな場所にぼくは今居る。

………現実逃避はもう終わり、かな……。

 うんまぁ、その。どうしてこうなったかを簡単に説明するとぼくの存在が村の人にバレそうになったから。

その結果、ぼくは家を追い出されて未知の地に居るわけだ。分かりやすい説明ありがとう、どういたしまして。自分で言ってて悲しくなった。

 とはいえ、こんな状況だからといって家族を恨んでいるなんて事は一切無い。

逃してくれた家族に感謝は尽きないけど、しかし今まで軟禁生活を過ごしてきたぼくがいきなり外で暮らしていけるかと言われれば、断言できるほどに否定する。しかし、生き残る可能性が高いのは間違いなくこちらの方だと思う。考えたくはないけど、あのまま家に居たらぼくだけでなく家族までも犠牲になってしまっていただろうから。その点、この状況なら最悪ぼくの犠牲だけで済むからね。

 もちろん、ぼくもただ野垂れ死ぬつもりはないけれど。

家族に迷惑がかからないように村から離れる。これが第一目標。幸い本のお陰で知識だけはある。森を歩いている中で食用植物を見つけれたので食に関しては問題無さそう。ただ、外で暮らしていく中で一番の問題がさっきからぼくにのしかかってくる。

 そう、ぼくの絶望的なまでの体力の無さ。

そりゃ生まれてこの方狭い地下で暮らしてきたぼくにあるわけがないよねっていう。休み休み歩いているからあまり村から離れられていないと思う。村を出てから半日ぐらい経っている今だけど、おそらく健康的な人ならその半分以下の時間で来れると思う。比較した事が無いから実際にどれだけの時間がかかるかは分からないけど、ぼくの身体能力は低く見積もった方が良いかな。

 先程採集した植物中で日持ちのしない物を食べながら歩く。

それに今はまだ遭遇していないけど森なのだから獣が居る、と思う。それが人間であれ獣であれ。少なくとも自然豊かな場所には何かが住んでいるのは本に書いていたし。どちらにせよ出会って良い事は無いから出会わないに越したことはない。

 そういえばと思い直す。

こうして歩いている森だけど、どこまで続いているのか。森を抜けた先があったとして、そこがどうなっているのか。

 ……体力以外の問題もかなりあるよね、そりゃ。

最初は良かったなぁ。初めて見る景色ばかりで興奮がぼくの原動力となって活力が尽きることはないと思っていた。でもそれは間違いでこうして現実を知る度にぼくの活力は減っていく。

 沈みゆく太陽を見ていると、ぼくの意思と連動している様に見える。

そんな訳はないけど。前途多難なこの状況にぼくは何度めか分からないため息を吐いた。

  



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