第四話 初めての魔法
婆さんは俺を家の庭に連れ出した。
「じゃあ今から魔法を実演してやるよ。」
「なんの魔法を使うんだ?」
「そうだねぇ...被害が少ない
水の初級魔法を、使ってやるよ。」
そう言うと婆さんは家の壁に立てかけて
あった杖のような物を持った。
「フン!『水球』」
婆さんが水球と言い、杖を
持つ手を強めると杖の先から握りこぶし1つ分
位の大きさの水の玉が出てきて勢い良く
近くの木にぶつかった。
「す、凄い..」
メキメキ折れていく木を見ながらつい呟いてしまった。
「まだまだ初級魔法だよ。アンタもこんぐらいは、出来ると思うよ。」
「教えてくれ!魔法の使い方!」
「じゃあ最初に適正魔法を調べないとねぇ」
そういうと婆さんはポケットから青い水晶玉のような物
を出して俺の前へさし出した。
「これは?」
「適正魔法を、調べるための水晶玉さ」
「適正魔法?」
「一から教えないとなのかい...
魔法ってのは、多くの種類が有ってね。
人が一人一人使える魔法の種類も違うのさ。
その水晶球は触れると触れた人の使える
魔法...適正魔法が分かるんだよ。」
適正魔法..要するにその水晶玉が、
俺の使える魔法を教えてくれるのか。
俺が水晶玉に触ると文字が浮かび上がってきた。
『付与魔法』
「付与魔法...ってこれだけ?!」
嘘だぁ!絶対これ弱いやつじゃん!
名前からハズレ感が凄いよ!
「お、おかしいね。大体3つくらい有るはずなのに。
誤作動?もう一回やってみてくれないか?」
婆さんが焦りだした。
もう一回水晶玉に、触ってみる。
『付与魔法』
「おい!やっぱりこれだけだぞ」
「うーん...仕方ないねぇ。付与魔法は
使い勝手が悪いし、何より私が使えないから
教えてあげられないのさ。」
え。マジで?ハズレかよぉ。
しかも自力で覚えろってか。
「仕方ない。ちょっと待ってろよ。」
そう言うと婆さんは、家の中から一冊の本を取り出した。
「そこに付与魔法の事は、大体書いてある。頑張って覚えな。」
「マジかよ。どうにかならないの?」
「普通でも高価な本をタダで上げるんだ。それ以上何を
求めるんだい。」
「確かにそうか...じゃあこの本はありがたく使わせてもらう
よ。」
「ああ。そうしな。」
本か...試しに中をパラパラっと見てみる。
字がギッシリ書き込まれていて読む気が失せる。
そういえば何で、字が読めたり話が通じるのだろう。
俺は普通に日本語で喋っている。
まあここは異世界だ。常識じゃ通じない事が沢山
有るだろう。一々考えていたらきりが無い。
「そういえばアンタはどこの国の出身だい?」
いきなり話の内容を変えてきた。
どう答えれば良いんだ?普通に日本で良いか。
「俺はニホンって所からきたんだ。」
「ニホン?そんな地名聞いたことも見たことも無いねぇ」
こことは違う世界だからな。と言おうとして
止めておく。異世界から来た奴は殺す、みたいな
感じだったら洒落にならないからな。
もう一回死ぬのは、まっぴらごめんだ。
「あまり有名じゃ無かったからな。」
適当に返事をしておこう。
「まぁ、これで私の教えられることは、ほぼ無くなったが...
他に何かあるかい?」
「そうだな...近くに町とかは無いか?出来れば
教えてほしいのだが...」
森の中でさ迷い続けて野垂れ死ぬなんてなったらイヤだからな。
「なら向こうの方に行くと良い。
グラン王国の王都があるからね。
大体の物はそこで手に入るよ。」
婆さんは森の俺が来たちょうど反対側を指差した。
「そうか。ありがとう。」
「それじゃあねぇ。」
俺は婆さんに感謝すると王都のある方角へ進み始めた。