第四話「修次郎の強盗退治!」
※内容がいつもよりずっとR15なのでお気をつけください。
いつもの自分(銃とゴミ)発揮したから、ブックマークしてくれた方には、この言葉を贈ります。「本当に申し訳ない」
日曜日。昨日は服屋で内心が騒いでいたせいで、疲れて長い昼寝に漬いていたせいか、夜はよく眠れず、朝がだるい。
時刻は7時15分程。楓はパジャマ姿のまま階段を降りて来た。
姉は広間で紺色のリクルートスーツに着替えながら朝のニュースをTVで観ていた。
『昨日、○○県○○市の△△銀行に、三名の男達が押し入り、銃を乱射して、現金“二千万円”を奪い逃走する事件が起きました。犯人は未だ行方が分からなくなっています。』
「また物騒な事件が起こったねぇ…しかも割と近所で…行くのどうしようかな…。」
姉が楓に気づいた。
「あら、おはよう。」
「おはよう…。」
「ねぇ楓。」
「ん?」
「後ででもいいから銀行に行ってきて。」
「何で僕が…?」
「今日は日曜日なのに出勤日になったの。それで、お金を下ろして夕食の材料かなにか買って来て。」
姉はテーブルに置いてあった茶色の革財布を手に取り、蓋を開け、中から二千円を出して楓に差し出した。楓はそれを受け取る。
「口座番号とパスワードは分かるでしょ?」
「うん。何円ぐらい下ろしてくればいいの?」
「そうね…二十万ぐらいかな。」
姉がスーツに着替え終え、キッチンに置いてあった朝食のトーストと目玉焼きに手をつける。
一方で、修次郎は自宅の自室でベッドに横になりながらサバゲーの雑誌を読んで寛いでいた。部屋の壁には『コルト・パイソン(6インチステンレスモデル)』『グロック18c』『H&K・USP』『ベレッタ・M93R シルバースライドモデル』『AKM』『AK74』『SCAR-H』『H&K・MP5』『ウィンチェスター・M70』などのエアガンが飾られている
すると、スマホから『H.W.Complex no’3』が流れて来た。スマホの着信音だ。画面には” 松風良平“と映っている。
修次郎はスマホを手に取り、受話器型のボタンを触った。そして耳元にスマホを当てる。
「何だよ。」
『すまん、今金持ってるか?』
「…何円?」
『ざっと九万円!』
修次郎はスマホを耳から遠ざける。
『今何をしようとしているのか俺は解ってるぞ!!』
「あっそ。」
修次郎はスマホをまた耳元に当てる。
「何を買うつもりだ?」
『「H&K417」の最新型だよ!しかもスコープ付き!!お前も欲しがってただろ?』
「それは“新型の銃が欲しい”だろ?俺が欲しいのは「AK」の新型だ。じゃぁな。」
またスマホを耳元から遠ざけた。
『お願いーー!!!あと残りわずかなんだよ!!!今店員さんに待っててって言って待たせてるの!!!このままじゃ別の客が来て買わされちまうよぉぉーー!!!来月にまた大会があるんだからさぁぁーーー!!』
「…お前今何円持ってる?」
修次郎は起き上がり、ベッドから立ち上がり、壁に掛けておいた紺色のダウンジャケットを着た。
『え…四万円…。』
「じゃぁ俺が持って行くのは五万円だ。それでもいいだろ?」
修次郎は財布の中身を見る。一万五千円しか入っていない。
「…良平、少し遅くなりそうだ。」
『え?』
「今どこの店に居る?」
『○○町のいつものところ。』
「わかった。」
修次郎はスマホの電源を切り、自室から飛び出した。
「女装して出ようかな?」
楓は下半身裸になっていた。上半身だけまだパジャマを着ている。
ベッドの上に女物のジーパンと水色のパンツとキャミソール、先日修次郎から買ってもらったピンクのTシャツを広げていた。
「…やっぱいいか。」
楓は広げていた服をタンスに仕舞い、男物のジーパンと白ブリーフ、アメカジプリントの男物の黒く薄い長袖Tシャツ、それらをすべて着た。全体的に少しぴちぴちとしている気がする。
「…長く着てればこうなるか…」
楓は財布とスマホ、貯金通帳、封筒を取ってウエストポーチに入れ、巻き、自室にを出た。
数十分後。
銀行の周辺に着いた。銀行の裏口には人二人ほどが入れる程の大きさのゴミ箱がある。中にはビニール袋に入った大量のゴミが入っている。蓋は開いている。
楓は銀行に入った。客はあまり居ない。
ATMに通帳を入れ、パスワードと下ろしたい金額を打ち込んで、二十万円を下ろして、封筒に入れてウエストポーチに入れた。
すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「や…やっと着いた…」
楓の隣りに、修次郎が立つ。そしてATMに人差し指を触れ、通帳を入れる。
__し…修次郎さん!?
__…僕に気づいてない?女装してないから?髪を整えてないから?
修次郎は十万円を下ろした。
「よーし、これで__」
後ろから銃声が聞こえてきた。
「「__ッ!!?」」
後ろに振り向くと、骸骨のマスクを被っている三人の男が居た。一人は『ニューナンブM60 回転式けん銃』を持ちながら右腕を上げている。M60の銃口からは煙が舞っていて、真上の天井から火花と蛍光灯のガラスが落ちている。
「ご…強盗だっ!!!」
銀行の従業員の一人がそう叫び、他の従業員達と客達が騒ぎだし、何人かは銀行を出ようとしていた。強盗犯はすんなりと逃げようとしている者達を通す。
楓は腰が抜けたせいか床に尻を着いていた。
「あ…あば…!」
修次郎はいたって冷静だ、が、「タイミングわりぃよ…ったく…。」と呟いている。
銀行に残ったのは楓と修次郎、そして銀行の従業員三名ほどだ。修次郎以外は楓と同じ状態になっている。皆怖くて震えている。
「お前ら、此所に集まれ。」
強盗の一人がそう指示した。
銀行の従業員達は這いつくばりながら進み、楓はゆっくりと震える足で立ち上がってゆっくりと前に進む。修次郎は普通に歩く。
皆一カ所に集まり、手を頭の後ろに組んだ。一人の強盗が見張っている。
他の二人は金庫などから大金を取り出し、首に持っていた大きめのバッグに入れた。
「おい坊主共!!」
急に見張りをしていた男はそう叫び出す。
「お前らのバッグこっちに寄越せやごるぁ!!」
見張りをしていた強盗が、『S&W・M37』を振り回しながらそうわめき始める。
楓はおろおろと自分のウエストポーチを外して強盗の一人に渡す。
強盗は修次郎の額に銃口を当てる。
「おめぇも出せや。」
「何?そんなんで俺を脅そうっての?そんな安物で脅そうっての?」
修次郎は聞いた誰もが腹を立てるような声で強盗を煽り始める。
「…頭ぶち抜かれたいのかこのガキャァ!!」
「やめろf。無駄な死人は出すな。」
見張りをしていた強盗は、金庫から二百万円を取り出してバッグに入れている仲間の強盗に言われ、M37を修次郎の額から遠ざけた。
やがて、パトカーが何台も銀行の前に停まった。
すると、楓は右手を挙げる。
「おい!!動くんじゃ__」
「あ、あの…トイレ行ってきて良いですか?」
「…大か小か?」
「…小さい方です…。」
強盗達は顔を合わせ、見張りの隣りに居た男が、
「俺が着いていこう。」
見張りの男にバッグを渡し、楓の腕を掴んで立たせた。
階段を登って行く。
トイレのドアの前に来た。楓が男性用トイレのドアを開け、着いてきた強盗が閉めながら中に入る。
__と、とりあえず、これで殺される可能性が下がった…。実際お○っこしたいからね…。
楓は小便用の便器に歩いて進んでいく。
前に立ってジーパンのチャックを開ける、
と__
強盗の一人が楓の体を抱き、左手で口を塞いだ。
「__!!?」
「捕まえた…。男のわりには可愛い顔してんじゃーん…」
__なっ…何この人!?
楓が藻掻き始めると、バランスを崩した二人はトイレの床に倒れた。
「かわいいかわいいかわいい…」
強盗の男は楓の股座に手を当てる。
__やっ…!!やばいッ!!これ殺されるよりもヤバイ!!!
__し…修次郎さん!!!助けてぇぇぇっ!!!
修次郎が手を挙げた。
「俺もさっきの“男の子”見たいにトイレ行ってきていいっすか?」
「座ってろ。」
「おい、クソぶつけんぞコラ。」
「…わかった。ただし一人で行け。」
「はいはい。」
修次郎はゆっくりと立ち上がり、男性用トイレに向かった。
すると、トイレの中から何かが倒れる音がした。
「……?」
修次郎は男性用トイレに入った。すぐに閉める。
強盗の男が楓を抱いて床に倒れていた。
「ん~~ッ!ふん~~ッ!!…!!」
__修次郎さん!!?
修次郎は真顔になった。
「…なんだこれ…。まぁあいつらが気づいてないだけ良いか。」
修次郎は強盗の男の顔を素早く蹴り飛ばした。強盗の男は楓を離す。
「てめッ__」
また蹴り飛ばす。
強盗の男は気を失った。
「あ…あの…」
「お前、大丈夫か?」
__お前…そりゃまぁ女装してないもんね…。
修次郎はしゃがんで、小さな声でしゃべり始める。
顔が近づき、楓の顔が赤くなる。
__ち、近い近い!!
「だ、大丈夫です…。」
「とりあえず、ここから外に出よう。」
「え!?ここ位置的に二階ですよ?」
「このトイレの窓の真下に、ゴミ箱がある。それがクッションになってくれるだろう。」
修次郎は楓の腕を掴んで立たせる。
窓を開け、楓の腰を掴んで持ち上げる。
「ぼ…僕だけが外に出たとしても、他の人達は?」
「ちゃんと策はある。さっ、行け___!!!」
「えッ!!ちょ!!心の準備が__」
修次郎は楓を突き落とした。
楓は真下にあったゴミ箱に勢いよく入る。
ビニール袋の音がやけにうるさく感じる。
修次郎は窓を閉めた。気絶している強盗から『S&W・M36』を奪い取り、胸ぐらを掴んだ。
「しゅ…修次郎さん…男と女の扱い方違いすぎるでしょ…。」
楓がゴミ箱から出ようとすると、ゴミ箱は倒れた。
強盗二人が楓の叫び声に気づき、各々持っている銃の撃鉄を下ろした。
「お前は警察を見張ってろ。」
「うい。」
一人だけ階段を登ろうとする、が、
「動くな。仲間を死なせたくないだろ。」
修次郎が気絶している男の耳元に銃口を向けながら階段を降りて来た。
「お…落ち着け…落ち着けよ…。」
「人質を全員外に出せ。」
強盗二人は速やかに銀行のドアを開け、修次郎以外を外に出した。
解放された人質達は警察の壁に走って行く。
強盗二人はドアを閉めた。
が、修次郎に後ろから蹴り飛ばされて、外に倒れ込んだ。そして横に待機していた警官隊達によって捕まった。
修次郎は掴んでいた男と銃を放り投げ、外に出た。
放り投げられた強盗の男は捕まり、銃は覆面パトカーの隣りに居た警察官が手に取った。
「…お疲れさん。」
「どういたしまして。」
「死人は?」
「居ない。」
「それは良かった。」
楓はそれらを遠くから眺めていた。
「…修次郎さん…。」
この後、下ろした二十万円は無事咲良家に渡り、隆平と修次郎の大きな買い物は不発に終わった。
翌日。楓はスマホで修次郎に『この間強盗があった銀行から出てきましたね!かっこよかったです!』とメールを送った。
そのメールを見た修次郎は、
「…見てたのかよ…はずいわ…。」
スマホを放り投げ、枕に顔を埋めた。