第三話「服屋で!」
良いタイトル思いつかなかったよ…。
あと日常パートのネタ切れ。
修次郎とのショッピングセンターでの買い物から実に三日経ったある日、楓のスマホに一件のメールが届いた。修次郎からだ。
『土曜日にまた買い物行かないかい?』とある。
楓は『良いですよ!どこで待ち合わせをします?』と打ち込んで返信した。
五分後、さらに返信が来た。
『じゃぁこの間のショッピングセンターのフードコートで11時に。』とある。
楓は『わかりました!土曜日を楽しみにしてます!』と打ち込んで返信した。
それから返信は来なくなった。
スマホを充電器に差し込み、宿題に手を戻した。
楓は薄い鼠色の長袖Tシャツのパジャマを着ていた。前に黒い文字で『caim boy』とプリントされており、その下に『58』という意味の分からない数字がプリントされている。
「…ほんとに楽しみ…。」
最近は修次郎の事を考えると、股間の辺りが暖かくなるのを感じることが多くなっていた。
「何だろう…この気持ち…。」
ふと触ると、少し硬くなっている。鼠色の薄いズボンが少し浮き上がっている。
顔が赤くなり、楓は宿題を片づけた後、ベッドに横になり、枕を抱いて眠りに漬こうとした。
体が火照ってなかなか眠れない。
仕方が無いと思い、ベッドから起き上がり、ティッシュボックスを取り、ズボンを下ろした。
翌朝。
楓はパジャマのまま階段を降り、広間に入った。朝食が用意されていた。
「おはよう!」
「おはよう。」
「ねぇねぇ!あの修次郎っていう人にメルアド貰ったんでしょ?何か来た?」
「…もう二日も同じ事言ってんじゃん。
昨日の夜来たよ。土曜日にまた買い物に行こうって。」
「ほぉぉぉっ!!!」
__今度は何を買うんだろうな…?
そんな事を思いながら、土曜日が来た。
楓は髪をいつも通り整えてから、水色のパンツと黒いショートパンツを履き、薄い紅色のワンピースチェニックを着て、その上に茶色いボタンの青いパーカーを羽織って、スニーカーを履いて自宅を出て行く。
一方、姉は広間で最新の小型ドローンの操縦に夢中になっていた。
「わっふー!これ楽し~!」
ショッピングセンターの四階にあるフードコートに辿り着いた。時刻は11時を少し過ぎていた。
フードコートの辺りを見渡すが、修次郎の姿が見えない。
「もしかして、あっちもおくれ__」
すると、後ろから冷気が漂い、右頬に冷たい物を当てられた。
「ひゃうっ!!?」
「やぁ、楓ちゃん。」
修次郎だった。右手に20%のオレンジジュース、左手にアイスコーヒーが入っている紙コップを持っていた。冷たいと思ったのは中の氷で冷えたオレンジジュースだった。紙コップには、前に二人で入った一階のハンバーガー屋の文字がプリントされている。
「こ…こんにちは…。あの、ここフードコートですよ?何で一階のハンバーガー屋のコップ持ってるんですか?」
「何となくだ。」
「は…はぁ…。」
__この人たまに変なこと考えるな…。
楓はオレンジジュースを取り、テーブル席に修次郎と共に座った。
少し世間話をしてから数十分後、二人は立ち上がり、入っていた飲み物を飲み干し、紙コップをゴミ箱に入れて、フードコートを出て行った。
「それで、今日は何を買いに?」
「服だ。」
「…妹さんの?」
と、
「いや、君のだ。」
__…ハッ!!?僕の!!?
二人は階段で降り始めた。
「えっと…なぜぼ、私の服を…?」
「まぁ…ちょっと着てほしい服があってな…」
「は、はぁ…。」
__着てほしい服か…それなら少し納得できるけど…
二階に辿り着いたところで、楓はある事に気づいた。
自分の股座が“あの症状”に見舞われていた。
__あれ…?勃ってる…?
自然に触ってみる。
__ヤバイ!!修次郎さんの事を考えてるだけじゃなくて、側に居るせいで、いつもより硬くなってる!!?
二人は服屋の前に来た。
__ヤァダァァァ!!!服屋無理ぃぃぃ!!試着して修次郎さんに見せている時に謎の風が来てスカートがめくれたり、急によろけて修次郎さんに倒れて、修次郎さんの手が僕のお○○○んに当たったり触ってたりしたら、僕が男だっていう事がバレるじゃないかぁぁぁ!!!イーヤーダーァァ!!!そんな劣化版T○LOVEるみたいな展開なんてヤーダーァァァ!!!!
二人は服屋に入っていく。
楓は顔を青ざめているが、修次郎は背を向けているせいか気づいていない。
__だっ…だめだ…!!体が勝手に動いちゃう…!!!
修次郎が立ち止まった。
「楓ちゃん。」
「フェイッ!!?」
慌てて返事したせいで声が裏返ってしまった。
「これとかいいんじゃないかな?探してるのと違うけど。」
修次郎は一着の服を手に取った。白い文字で『Love the life you live!Live the life you love!』という英文がプリントされているピンクの長袖Tシャツを手に取った。
「あぁ…良いですね…」
「楓ちゃん、服のサイズは?」
「ん~…SかMですね。」
「じゃぁいつまでも着れるようにLを買おうか。」
「は、はい!」
楓は赤いカゴを手に取り、その中にTシャツを入れた。
その後も、ジーンズのホットパンツ、黒いフリル付きのスカート、Vネックのセーターなどをカゴに入れていった。
__とにかく、着てほしい物がスカートの類いじゃないことを願って…
そして、修次郎がまた立ち止まり、
「おぉ、あったあった。」
__…・これか…?
「昨日の新聞に挟まってたチラシにこれが載っててさ、楓ちゃんに似合うと思って。」
それはフリルの付いたティアードタイプの薄い肌色のベストと、桃色のワンピースだった。
__あっ…スカート…しかも薄そう…。
「合いそうなサイズがあるから、ちょっと試着してみる?」
「えっ…」
__どっ…どうしよ!?した方が良いよね?試着せずに買って後で着た後、似合ってないことに気づいて修次郎さんにお金の無駄遣いして欲しくないし…!
__…でも勃ってる事がバレたら…?
「…わかりました。ちょっと着てみます。でも、感想は正直に答えてくださいね。」
楓はちょっとだけ睨んでみた。
__気づかないで…!!お願いします!!
他人に自分の気持ちが伝わるワケもなく。楓は修次郎に心の中で叫んでいた。
「お、おう…?」
楓は修次郎から服を受け取り、それを持って試着室に入った。
着替えを始めた。まずはパーカーから脱ぎ始める。
一方、待っている修次郎は、試着室の近くにあるベンチに座り、スマホを取り出した。
__近くに居るのかな?さっき足音が聞こえたけど…。
薄い紅色のワンピースを脱ぎながらそんなことを思っていた。
「なぁ楓ちゃん。聞こえてる?」
「は、はい。」
__何だ…?
「この間映画のDVD買ってたよね?」
「そ、そうでしたね…。」
「あの映画観た?」
「は、はい。観ましたよ。良い映画でした…。」
「そっか。それはよかった。」
「…面白くなかったら今頃お金を返してますよ。」
「ハハハッ…」
__笑えるところあった?
楓はようやく、試着する服を着始めた。
すると、
「あら、修次郎君。何してるの?」
修次郎にとっては聞き覚えのある声だが、楓にとっては始めて聞く人の声だ。
声の主は修次郎の目の前に立ち止まった。
「おぉ、涼花じゃねーか。何してんだ?」
修次郎のクラスメイトの作井涼花だった。黒い革ジャンの下に白いプリントTシャツを着て、キャラメル色のホットパンツを履いている。そして左手に服屋のビニール袋を持っている。中には冬用と思われる黒いダウンジャケットが見えている。
「私はただ服を買いに来ただけ。」
「俺は先日言ってた女の子の試着が終わるのを待っている。」
「あぁ。たしか楓ちゃんだったけ。その中に居るの?」
涼花は楓が入っている方の試着室を指さす。
「あぁ。よくわかったな。」
「だって中から服のこすれ合う音が聞こえるんだもの。」
「…お前耳良いな。」
「ま、“彼女“と仲良くしてなよ。じゃあね。」
そう言って涼花は服屋を出て行った。
「…相変わらず浮かない顔してんなぁ…。」
__…どんな人か見えなかった…。
数分後。楓が着替え終わった。
「しゅ…修次郎さん?」
「お?終わった?」
「は、はい…。」
修次郎は立ち上がり、スマホをポケットに仕舞い、試着室の前に立った。
楓は試着室のカーテンを開ける。
修次郎はしばらく、試着している楓を眺めた。
「ど…どうですか?」
「う~ん…思ってたより髪の色と合ってなかったかな…。」
__まぁ、肌色だしね…。
「ごめんなさい、こんな髪色で…」
「いや、その髪色の方が君らしい。
とりあえず、また元の服に__」
すると、
「ままはやく~!」
「コラっ!そんなに走り回らないの…!」
四歳ほどの女の子とその子を追っている母親が居た。女の子は腕を上下に振りながら走っている。
女の子が二人の間を走り抜けた。
女の子の腕が楓が試着しているスカートの中に運悪く入り、女の子が腕を上げたとたん、腕を上げた力と走って出来上がった風でスカートが全体的にめくれ上がった。
「「あ…__」」
修次郎が楓の股座が見えてしまっていた。水色のパンツが少し膨れている。
「ん…?もっこ__」
修次郎は女の子の母親に横から弾き飛ばされ、床に倒れた。
「だ、大丈夫ですか!!?」
「へ、平気です…さ、早く娘さんを、おっ…って…」
「す、すいませんでした!」
母親は再び娘を追い始めた。
楓は試着室を出て、修次郎の前でしゃがみ込んだ。スカートを太ももに挟みながら。
「し…修次郎さん!!しっかり!!」
「んぁ…なんか思ったことがあったのに忘れちまった…。」
__良かった…一瞬バレた気がしたけど大丈夫だったみたい…
__今度から何か対策を練らないと…!
その後、楓は試着していた服を脱ぎ、元ハンガーに掛けての場所に戻し、カゴを持ってレジに向かった。4280円だった。修次郎は4500円を出した。
「修次郎さんって意外とお金持ってるんですね。」
「趣味が趣味だし、バイトもしてるからね。」
「へぇ…どこでしてるんですか?」
「場所は言えないけど、ガソリンスタンドだよ。時給が高くて良いところだよ。」
一時間と数分後。いつもの公園に来た。
「じゃ、俺はこれで。」
「またいつでも良いので誘ってください!」
「あぁ。じゃぁな。」
修次郎は自宅に向かっていった。やがて姿が見えなくなる。
楓は公園の入り口で立ったままだ。
「…ひとまず、一件落着、かな…。」
ふと、公園の方に振り向くと、
見たことのある後ろ姿があった。その姿の主はすぐ近くのベンチに座っていた。
葛木優実だ。立ち上がって
ゆっくりと楓に歩み寄ってくる。
__ここまできてーーーッ!!?
__でも優実ちゃんは僕が女装をしていることを知らない…!!このまま…
すると、後ろからは複数の足音が聞こえてきた。
__…?
後ろを向こうとしたが、優実がすぐ近くに来ていて、どちらが優先か悩んだ。
__木を眺めているフリをする?それとも自然に後ろを振り向・・・
優実が脚を上げ、足音の主らしき者達の一人の腹を蹴り飛ばした。
「へ?」
後ろを見ると、前に公園で会ったチンピラ達が、優実に蹴り飛ばされていた。
普段の彼女とはまるで別人の様な顔つき・行動をしている。
__ゆっ…優実ちゃん・…?
チンピラ達は優実に怯えて、立ち上がってからどこかへ去って行った。
楓はきょとんとしていた。
優実が話しかけてきた。
「大丈夫ですか!?」
「え…あ、はい…。一体、あの人達は何を?」
「ナイフとガムテープを持ちながら貴方を襲おうとしてたんです。危ないところでしたよ…。」
「あ…ありがとうございました…!」
__ナイフとガムテープ…?僕を攫って修次郎さんを釣るとか…?
すると、優実がじっと楓を見ている。
「な、何ですか…?」
「あ、いえ。私の友達に似ている気がして…きっと気のせいですので、気にしないでください!」
「は、はい…。」
「それじゃあ、周りには気を付けてくださいね!」
「わ、わかりました…」
優実はどこかへ歩き去って行く。
「…以外だ。優実ちゃんがあんなことをすることが出来るだなんて…。」
その後、楓は自宅に帰ってきた。
時間は13時ほど。昼食を食べてこなかったせいか、胃が痛い。
楓は自室に行って買った服をベッドの上に置いて、鼠色のTシャツ型のパジャマを取って部屋を出て、階段を降りてキッチンに行った。
冷凍庫を開いて、中にあった炒飯を出して、皿とレンゲを出して、皿に炒飯を盛って電子レンジに皿を入れた。
炒飯を食べ終わった後、食器を洗い、パジャマを持って風呂場に行った。
体をシャワーで洗った後、自室に行き、ドアの鍵を閉め、ベッドに横たわり、布団を体にかけた。