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-女装男子と偽りの想い-  作者: 内田昇
女装男子と愉快な日常
15/20

3話「女装少年と金持ちお嬢様」

1



 私の名は“妙堂院アリナ”!大企業の父を持つ17歳の高校二年生!メイドや執事は私の言いなり!クラスメイトも教員も校長も!

 趣味?言ってどうするの?プークスクス。

 今日から新年生がやって来るそうね。どんな子が居るのかしら?ねー鈴花。

「は…え?何?」

 もー涼花ちゃーん、私の考えてることぐらい分かるでしょー?

(何だこいつ…)


 おや…おやや?何だあの少年は?短い茶髪、幼く、まるで女の子の様な顔立ち、程よいスタイル…男子の制服が全く似合わない…

「すーずかー、あの子誰か分かる?」

「(やっとしゃべった…)あの子…?あー、楓君ね」

 楓…?ほうほう…ふふふふふ…っ!



2



 入学式から一週間後。楓は中学の頃から同じ学校に通っている橋田と英二と共に食堂に向かおうとしていた。

 すると、後ろから一人の男子生徒が現れて楓を呼び止めた。その人はとても背が高くスラッとしていて、ハンサムで姿勢も良い。周りの女子の視線も彼に集まっている。

「アリナ様がお待ちしております」

「え…?アリナ?っていうかどちら様?」

 彼は楓の腕を引っ張って階段に向かって行った。

「えっ?!ちょっと?!」

「おーい楓?」「楓が攫われた!」

 その光景を修次郎と良平は見ていた。

「何だ何だ?」

「アリナって言ってたよね?」

「アイツに目付けられたって、何したんだ…」



 三年次の教室に楓は連れ込まれた。

「お疲れ様“貴宏君”」

 そこには、机の上に座り脚を組み、スマホを弄っているアリナが居た。両脇には少し女の子っぽさのある男子生徒二人が立っている。黒髪の男の子と少し日焼けしている銀髪の男の子だ。

「さて…楓君…

アナタ、私の下で働きなさい」

「…え?」

「時給10000円、時間はいつでも、仕事は簡単、私のいうことをきけば__」

「ちょ、ちょっと待ってください!僕もうバイト先を決めてるんですけど?!」

「毎日働くワケじゃないでしょ?それに深夜に働くっていう手もあるわよ」

「労働基準法ぇ…プスッ」と貴宏は呟いた。

「…とにかく、二つもバイトを掛け持ちする余裕ありません!というか何で僕が?」

「だってアナタ私の好みに合ってたんだもん」

「へ?」

 アリナはスマホを仕舞い机を降り、楓に攻め寄った。顎を指で持ち上げ、間近で彼の目をじっと見つめる。楓は恥ずかしくなって顔が赤くなってきた。

「まぁ可愛い。どうしても内に来てくれない?」アリナは彼の腰を抱き互いの身体を密着させた。

「い、行きませんよ…っ!」

「まーとにかく、お試しで一日だけでも来てよっ。待ってまーす」

 アリナは皆を引き連れて教室を出て行った。楓は教室で一人立ち尽くした。すると、修次郎達が入ってきた。

「修次郎さん…」

「アイツに目付けられたんだから今後の生活は気をつけろよ」

「え?」

「ま、俺も詳しくは知らないけど、アイツに目を付けられた奴はすばらくすると仲間になってるそうだ」

「は、はぁ…」



3



 放課後。今日はレストランのバイトは無い。修次郎達と共にアリナの家に徒歩で向かい、十数分で辿り着いた。黒い屋根の白い豪邸だ。広い庭には噴水や高級車や希少車が並ぶ駐車場がある。

「すっげぇ…ニスモフルチューンのGT-Rと新型のフェラーリがある…」「あっちには2000GTとかケンメリとかコスモスポーツもあるぞ!」「ベントレーもある…!すげぇ…」と修次郎と良平だけやけにテンションが高い。

「ここが気に入った?」

 アリナが皆の前に現れた。白いドレスを着て、髪を上げ、百合の花の髪飾りを付けている。

「でも、何で楓君以外も来てるのかな~?」とイラついた様に言った。

「一人だと心配だからな」

「そんなに私が怪しい?」

「うん怪しい」

「まぁまぁ、乗ってみたい車の鍵貸すからこれで時間潰してなさいっ。一ヶ月はお父様もお母様もお兄様も帰って来ないから何してもはっちゃけられるわ」

「マジか!あのケンメリの乗れるのか__」はしゃぐ良平に涼花は思いっきりチョップを喰らわせた。

「そうやって物で釣って楓君から遠ざけようとする…やっぱり怪しい…!」

「そうだな…

まぁ十分くらい良いんじゃね?いや、三十分くらい…」と修次郎は貴宏からGT-Rの鍵を受け取っていた。

「ぅおい!!?」

「安心しろ二人共。サーキットのように公道じゃない場所なら無免許でも運転できる!」

「聞いてないわ!!アンタ楓君がどうなっても良いの?」

「楓、一時間耐えろ!」

(延びてる…!)

「ふふっ…さ、行きましょうか、楓君…」とアリナが言うと二人の男が楓を掴んでアリナの後について行った。

「ちょ、ちょっと!」

「あぁ貴宏君、涼花ちゃんを例の場所へ」

「はい」

 貴宏は涼花の腕を引っ張りながらある場所に向かった。そのとたん、駐車場からGT-Rの野太い音とスキール音が聞えてきた。



「さ、コレに着替えて」

 アリナはクローゼットから旧スクール水着とフリルの付いた手袋や靴下やカチューシャ、ピンクのショートエプロンを取り出して楓に渡した。他の二人にも渡された。

「…え?」

「それを着て私についてきてもらうわ。さ、早く」

「は、はい…」

 三人はそれらを着・身に付けた。

「わぉ、かっわいー」

「あの…これで一体…?」

「付いてきて」

 外で爆走するGT-RやDB9の音を聞きながら下の階に降り、浴室に入った。とても広く、マーライオンも設けられている。浴槽は岩で囲まれており、壁には防水で薄型の壁大きいテレビが掛けられている。

「ここを掃除しなさい。やり方は二人から教わって」

 楓は男の一人からデッキブラシを受け取り、もう一人は床に洗剤を垂らした。アリナは浴室から出て、扉を開けたまま三人の様子を観察し始めた、いや、スマホを取り出した。

「…さて、やろうか」

「あ、あの…なんて呼べば良いでしょうか…?」

「あぁ…僕は“浩人”、白いのは“優二”」

「よ、よろしくお願いします…」

「コチラこそ」

 さっそく三人は浴室を掃除し始めた。ブラシで磨き、たわしで水垢や錆を落とし、水で洗い流し、モップで余分な水を吸い取って絞り、仕上げに鏡やテレビ等を磨いた。そして浴室はピカピカになった。

「お疲れ様―。次はガレージよ」

 一旦先程の部屋に戻り、今度は黒い革のライダースーツを着ることになった。ぴっちぴちで動きづらく、身体のラインがくっきり映し出される。

「うふふ…えろーい…」そう言ってアリナは部屋を出てガレージに向かった。

(うぅ…股とか胸が締め付けられて…色々硬くなっちゃった…)

 一階のガレージには、外の駐車場に無かった名車がずらりと並んでいた。ガヤルドやマスタング、SLRマクラーレン等々…。

「じゃ、頑張ってーねっ」とアリナは楓の着ているライダースーツに浮いた乳首を突っついてガレージを出て行った。突っつかれたとたん楓は高い声を上げた。

「セクハラで訴えて良いんでしょうか?」

「良いんじゃない?」



 ガレージの掃除も終わり、三人ともアリナのもとに向かった。

「お疲れ様―。


楓君、明日もよろしくね♪」

「…へ?」

 すると、アリナはスマホに先程撮っていた映像を楓に見せた。浴室やガレージで清掃している最中、皆各々各々の名前を呼び合っている。

「…これがどうしたんですか?」

 すると、周りの二人が跪いた。

「くっそぉ…!弱みが増えた…!」「汚いぞアリナ!解放なんて無かったんだ!」

「え?え?」

「分からない?もしこれを、学校の皆が見たらどう思う?」

「っ…?!!」

「恥ずかしいわよねー」

「け、消して!!」

「これだけけしても、もう私のパソコンとか遠い知り合いにも届いてるからなー」

「な゛っ…!」

「学校の皆に見られたくなかったら、三年間内で働いてね♪」

「そ…そんな…!」楓は絶望した。ただでさえ勉強が更に難しくなり、バイトも既に始めているのに…更に忙しくなってしまう。

「わ…わかりました…」

「うふふっ…わーい♪」とアリナは楓に抱きついた。そして片手で楓の股座を触り始めた。

「これで私のいいなりだね…」

「っ…!」



4



 夜。

「いやー、やっぱりGT-Rは日本の誇りだわ。大和魂がこもってるわ。マジぱねぇわ。

楓、そっちはどうだった?」

「どうだったじゃありませんよ…」

「…その様子だと何か弱み握られたな?」

「はい…」

「あちゃー__」

「あちゃーじゃないでしょ!!」と涼花は片手に愛くるしい犬のぬいぐるみを抱えながら修次郎の頭をグーで殴った。

「アンタが車に魅せられてる間にとんでもないことになっちゃったのよ!!どうするのよ!?」

「お前もその手に持ってるぬいぐるみは何なんだよ!!

ったく、どうするのって言われたってなぁ…どうしようもできねぇや。まぁよっぽど辛かったら相談に乗るわ」

「今も辛いんですけど…」

「耐えろ」修次郎は楓の肩をポンポンと叩いてそう言った。

 四人はアリナに手を振って見送られ、各々自宅に帰っていった。

 アリナの後ろでは、メイド服姿の浩人と優二、そして貴宏が居る。貴宏だけなぜか槍を持っており、非常に凛々しい。

「さて、可愛い新人も入ったことだし、お祝いでもしましょうか♪」

「「「かしこまりました」」」



(うぅ…これから僕はどうなっちゃうんだろう……あ~早く帰ってツバキに癒されたい…)

 楓は一人帰路をトボトボと歩きながらそう考えていた。

男の娘×ライダースーツってあんまり無いよね?気のせいかな。

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