2話「女装少年とアルバイト」
久しぶりなせいか楓君の口調や性格に違和感…
1
コ○ケでの出来事から数ヵ月後。
楓はついに、高校生になった。
学校は修次郎や涼花も通っている学校だ。
入学式を終え、良平も入れた四人は楓の家に集まった。三人や奏も進学を祝っている最中、楓はあることを告げた。
「“アルバイト”がしたいです!」
「アルバイトぉ?」
「はい!高校生になったら絶対やりたいと思っていたんです!」
「…してどうすんだ?」
「もちろん、
僕が着て皆さんが喜ぶような服を買います!」
「(最近何か変な方向に向かってねーか…?)で、どこでバイトするんだ?」
「あっ」
楓は黙り込んだ。思考が停止してしまったようだ。
「絶対するって言っておいて場所決めてないのか…」
「具体的にはどんな所が良いの?」と涼花がスマホで求人のサイトを開いて聞いた。一方で良平もスマホを取り出したがコチラは電話帳を開いている。
「う~ん…まず家と学校から近くて、夕方からの勤務ができて、お給料が高くて…あとまかないがあるとこ!」
「ん~…と?」
良平が立ち上がった。
「あったよ楓君!その条件にピッタリな所が!」
2
家から1.5キロ程離れた一軒のレストラン。チェーン店ではない。
楓はスタッフルームから出てホールに入った。楓は学校の制服から、フリルがいっぱいあるミニスカートのメイド服へ着替え猫耳と尻尾を装着したのだった。
「時給900円のところ楓君が可愛すぎて店長が萌え死んだから千円UP!」
「死んだ?!」「冗談だよ」
「学校と家の堺にあるし夕方からのシフトでもOK!制服も可愛い!」
「にしても…素敵…!これならどんなお客さんもメロメロ__
ってちが違―――――う!!」
「どうしたのだ楓君?!何が不満なのだね?!」
「女装は趣味!!仕事には持ち込むつもりはありません!!ちゃんと棲み分けしないと!!それにこの店の位置的に学校帰りの人来そうじゃないですか!!見られたらとんでもない三年間になっちゃいますよ!!」
「どんな三年間?」と良平はニヤケながら聞いた。
「とっ…とにかく!!男性用の制服無いんですか?」
「ごめん、この店女の子しか雇うつもりないらしくてさ。楓君は特別に許すってことで」
「な゛っ…!?」
「まーまー良いじゃないの。これ以上良い条件の店無いよぉ?そして君のファンが増えるかもしれないよぉ~」
「増えなくて良いですそんなの!!修次郎さん達も止めてくださいよ~!!」
「いや、普通に似合ってて可愛いから良いんじゃね?」と言う修次郎の隣で涼花はうんうんと頷いた。
「え゛ぇ゛~~っ!!?」
「う~~ん、じゃあもっと僕の“セルツェーム(奇妙な)・クルー(乗組員)連絡網”を酷使しなければならないか」
「いっそ千切れてボッチになれば良いのに」涼花は冷たい眼差しでそう言った。
「せる何とかって何ですか?」「あいつのサークル名だよ…」
コ○ケの時にも居た良平のサークルメンバーの家であるマンション。
楓は某短パン少年のメイド漫画のコスプレをしてリビングに入った。作り笑いをし、モップを持ちそれを抱きながらポーズをとる。それを見ながら良平のサークルメンバーの一人がスケッチをし始めた。
「うんうん!!良い感じだよ!!ただコスプレしてポーズとるだけでこんなに可愛くなるし、時給1200円だし、学校から約2キロ程度!!」
「あぁご主人様…どうか手際の悪い私をお許しください__
じゃなーーーーい!!女装から離れろーーー!!」
一応それは女の子用ではない設定だから女装ではない!!」
「え?そうなの?」
「でも女の子モノっぽく見えるよねー」「なー」
「楓くん、表紙用の原画終わったから次夜這いして短パンとブリーフ一緒にずらしてあざとく__」サークルメンバーの頭を楓は資料である分厚い冊子で叩き落とした。
「なんとか性的表現をR-15に収めてきたのにR-18にする気か」
「メタぁ…」
「っていうか、この仕事のまかないって何ですか?」
「使用済みのコンニャク」
「嫌がらせ以外の何物でもないじゃないですか!!」
「うーん…あとはあの店しかないなぁ…いでよ、“ボート・ダー・ラックゲセルシャフト(裏社会の使者)”!!」
「網もアナタも燃えて灰になってしまえ」
「ドイツ語好きなんですかね?」「いや違うだろ…」
夜になってしまった。場所はキャバクラ等の店が建ち並ぶ大人の夜の社交場である。そんな中にあるとある店。
楓は小学生男児の様な格好をしランドセルを担いでホールに入った。
「うーん…はっきり男の服だと分かると微妙だな」「ダメだ…」「女の子の服の方がこっちからしてみれば良いわね…」
「殴りますよ?
ていうかここ、何の店なんですか?」
辺りを見回すと、幼く見える男性達がショタコンの男女と戯れている。
「ショタのキャバクラ、略してキャバショタだ!!」
「高校生が働く場所じゃなーーーい!!!てか何でこんな店知ってるんですか?!!」
「楓君が男って知って半ば目覚めて受け入れられる性癖が増えたから知り合いを増やそうとこの辺り歩いてたら偶然店長と仲良くなった」
「どうしてそうなった?!
っ…ハァ…もういいです…僕がバイト先を探します…」
楓は働いてもいないのに疲れたようにロッカールームに向かった。
3
数日後の休日。楓はツバキを連れて近所の公園…修次郎とであったあの公園に来た、
ベンチにはチェック柄のシャツを着たデブで不機嫌そうな顔の男が座っていた。少なくとも楓よりも年上だ。楓はもう一つ隣のベンチに座って腰を落ち着かせた。
すると、ツバキが男に吠え始め、飛び乗って顎を突き始めた。
「ちょ…!こらツバキ!」と縄を引っ張った。ツバキは落ち着いて、楓に飛び移った。
「すいません、服汚れませんでしたか?」
「いえ…
ビーグル可愛いーなー…」
それからしばらく沈黙が続いた。気まずいと思い、楓は口を開いた。
「あの…初対面の方に聞く事じゃないんですけど…
バイト先が決まらない時って、どうすればいいんでしょうか?」
「えっ…えっと…そうだね……とりあえず適当に仕事をやってみて、そこでダメだったらまた別の所に働いてみたら?」
「適当に?」
「たとえばコンビニとかで夏だけとかそういう期間限定で働いたりしてさ…接客が得意かどうか分かるし、手際の良し悪しも自覚できると思うよ…まぁ、僕は7のコンビニでブラックなオーナーの下で働いて、こんな見た目とかだからか酷い扱いされて、接客がトラウマになって、それ以来バイトしてないけど…バイト先を決める時は慎重に、初めてなら自分だけで考えて決めて行動しちゃダメだよ…僕みたいになるから…」
「は…はぁ…(ようは決める材料を“自覚して増やす”ってことかな?…ならあそこかな?)」
楓はツバキを降ろして立ち上がった。
「急に話しかけてすいませんでした。アドバイス、ありがとうございました」
「お…おぉ…(あれで良かったのか…)」
4
「で、結局ここに?」
楓は最初に訪れたレストランで嫌々メイド服を着て働き始めた。学校の人が来てもバレないよう黒いロングヘアーのウィッグを被り赤縁の眼鏡を掛け、名札は『楓子』になっている。
「学校の奴に見られるのが嫌だからってあの軽装備かよ…すぐにバレそうだぞあれ…」
「まぁ良いじゃないの、あそこにするって彼が決めたんだから」
「そうだな…
にしても、楽しそうに働くな…」
楓はニッコリと笑いながら注文をとり、晴れやかな笑顔で厨房にメニューを伝えた、手際も良く、店内の皆も表情が和らいでいった。
「…そうね」
三人も楓の働く様子に微笑んだ。
「(僕、こういうの得意なのかも…!やった!これでもっと今後のバイト先の選択肢が増えた!)
あ、いらっしゃいませ!」
楓は来店した客に笑顔を大きい声でそう言った。
公園の男が言っていた7のコンビニでの話は私の実話です。あれ以来7のコンビニのアンチになってしまいLのコンビニ派になってしまいました。まぁ7だとヤフオクの支払できませんし、Lなら出来る上に、Fのコンビニと違って一つずつ支払わずまとめて支払わせてくれるから計画が崩れないし。