第十話「偽りの想いと本当の想い」
待っていたという方には深く謝ります。投稿遅れてすいませんでした。
来月にはこの小説を終わらせられるように努力します。
7/24:今月じゃ無理でした\(^O^)/
ショッピングセンターの喫茶店。
楓は少し厚い生地の薄いピンク色のドレスを着て、その上に若草色のベストを羽織っている。
出来立てのミルクティーが運ばれて来た。冷めるのを待つ。
__修次郎さん遅い…。
数分後、ミルクティーをすすり始めた時、修次郎の姿が喫茶店の入り口に見えた。知らない男を連れて来ていた。
__…誰あの人…。
「遅れてごめん…。」
「いっ、いえ…。あの…その方は?」
「会わせたい奴だ。」
そう言って二人は椅子に座り、着いてきていた店員にコーヒーを二杯頼んだ。店員は厨房に向かう。
修次郎が会わせたいと言っていたその男は、楓を見ながら「ん~…可愛いな…。」と呟いていた。その呟きが楓の耳に届き、苦い顔をした。
__何この人…。
修次郎は一度咳払いをして、
「…先に、君に謝らなければいけない…。
本当にごめん…。」
「…どういうことですか?」
「俺は何ヵ月も前から、彼女になってくれそうな女の子を探してきてくれと頼まれていた。
心当たりは有ったから了承したんだけど、後からこいつに合う女が居なくて悩んでたんだ…。
そんなとき、君はあの公園に居た…。」
楓の脳内に、修次郎と初めて会った時の記憶が浮かんだ。
「君はいい子だ。可愛いし、駄々をこねて俺を困らせるなんてことも無かった。 その上、性格もこいつの理想に一番近い子だったんだ。…だから、君を…。」
言葉が詰まったようだ。顔色から分かる。この先何と言おうか悩んでいるのだ。
「…俺は君への感情を偽りながら付き合ってきていた。こいつならこの子とこういう行動をするだろう、と。」
また黙り込む。顔色が悪化していく。本当に言っていいのか、と。
「…実はな…俺、今度ある女の子と、デートしようと思ってるんだ。」
その言葉で、楓の中の何かにヒビが入った。
__…え?
「言い方が悪いけど、つまりは…俺は君を…実験台と思いながら付き合っていた。」
更に亀裂が入っていく。
「俺のことを好きって言ってくれたのは嬉しかったけど、俺は気持ちを受け取れない…。」
もっと奥深くに入っていく。
「でも安心してくれ。こいつを俺だと思いながら付き合ってくれ。さっき言った通り、俺は自分をこいつなんだと思いながら付き合っていた…。たとえ付き合う相手は違えど、俺は女の子とどんな風に付き合っていけばいいかが学べたよ。
ありがとう…。」
修次郎は苦い笑いを見せて、隣に座っている例の男と楓について話始めた。
その一方で、楓の中の何かは完全に砕け散り__
「そんなの嫌だッッッ!!!!」
楓はそう叫びながら立ち上がる。その叫び声は店内に響き渡った。二人と店員達はきょとんとしていた。
「…楓…ちゃん?」
「僕が修次郎さんと一緒に過ごしたのは僕のタメじゃ無くてそいつのためじゃぁ僕が修次郎さんに今まで気を遣ってブツブツブツブツだいたいそんな人を修次郎さんだと思って生活出来るわけないじゃないかそんなんだったら最初からそいつと付き合わせれば良いじゃないか………」
呪いの呪文を唱えるかのようなブツブツと言う呟きが途絶え、
「…楓ちゃん__」
「僕は絶対に認めないッッ!!!!」
そう叫んで席から離れ、店の出口に向かって走って行った。
「楓ちゃん…!」
修次郎も席を離れ、楓の後を追い始めた
「…これは僕が悪かったのかな…?」
良平はそう呟き、店員が持ってきたコーヒーを受け取る。
見失った。ショッピングセンター前にある横断歩道を渡る人々の中に紛れ込んで行き、楓と修次郎の距離は一気に遠くなったのだ。
「やべぇ…どうにかしねぇと…!…許してくれるか?!」
スマホを取り、ガラス張りのバス停のベンチに座って、楓に電話をかけた。
楓は虚ろな目をしてスマホを取り出した。
「…修次郎さん…僕はまだ許さないよ…。」
と呟いて着信を拒否した。
「(__くそッ!!ダメか!!)」
スマホをポケットに仕舞ってベンチから立ち上がり、先程の横断歩道を渡った。
見つからない。30分以上街中を走り回ったが、楓はどこにも居なかった。
修次郎はいつもの公園のベンチに座って誰かに電話をかけていた。この日お公園は相変わらず無人で、カラスがベンチの近くに置かれている金網のゴミ箱の中身を突っついている。
「楓?まだ帰って来てませんけど…」
修次郎は楓の姉、奏に電話をかけていた。微かにツバキの鳴き声ガ聞こえる。
「そうですか…すいませんでした」
「あ、ちょっと!あなた誰__」
修次郎は会話を切り、スマホをポケットに仕舞う。
もう一度探し回ろうとする、が、体力の限界が近づいていて足が思うように進まない。許してもらえるかの不安も重なっていて、精神が少し不安定になっているのを感じる。
「ッ…クソ…!」
すると、後ろから小さな足音が聞こえ、修次郎の真後ろで足音が止まった。
「あなた…何してるの?」
修次郎にとっては聞き慣れた棘のある様な女性の声。後ろを振り向くと、
「!!…涼花?!」
「ま、まぁとりあえずそこに座りなさいよ…。」
「…あぁ…」
涼花はカラスを「シッシッ」と片手で追い払い、ベンチに座った。修次郎も、隣りに座る。
「何があったの?こんな時季に汗かいて?」
そう言われて額に手を当てた。冷気で冷えた汗がこびり付いている。
「…彼女が怒った。謝りたくて探してた…。」
「…何をしたの?」
「本当の気持ちを伝えたんだ。付き合っていた目的も。」
「…目的?」
「…俺は数ヶ月前に、良平に似合う彼女を探していたんだ。」
「何で貴方がそんなことを?!」
「幼なじみの頼みだぞ?簡単に断れねぇ…。」
「…それだけ?」
「いや、それを基に、俺が付き合いたい女の子とのデートの仕方を練習した。」
「ハァ!!?そんな、気持ちとか性格がまるっきり正反対だったらどうするの!!?」
「あぁ…迂闊だったよ。女との恋愛経験が薄くて__」
「常識っていうのがあるでしょ!!!」
涼花は溜息を吐いて落ち着き、呆れ顔をして、
「…誰と付き合いたいの?私の友達だったりする?」
「……」
「…大丈夫よ。誰にも言わないから。」
「……」
「……どうしたの?」
「涼花、君だよ。」
「…へ?」
呆れ顔が一気に恥じらいの顔になった。
「仲がよくなったあの中学二年の夏、俺は君が好きになった。
俺はほとんどの生徒から恐れられていて、誰もが俺を避けていた。だが君は、そんな俺を恐れずに積極的に声をかけてくれた上に、悪いことをすれば厳しく叱ってくれた。
中三の頃、良平と三人で同じ高校に行こうって決めてたのに、あいつ(良平)はほとんど勉強してなくて危機的状況だった。仕方なく俺はあいつの家庭教師になった。けど、俺は暗記科目は不得意だった。そんな時、学年成績トップの君が手伝ってくれたおかげで、俺達三人は今、同じ高校に通えている…。
他にも色んな事があった。君には感謝でいっぱいだ。
だから俺は、君と付き合って恩返しをして、」
涼花の熱が一気に冷め、
「共に一生を歩みたいと思って__」
「だったら…
だったら最初から、私に向かってきなさいよ!!!!!」
「__?!!」
「彼氏気取って他の女の子を役に立たなそうな練習道具にしておいて、挙げ句の果てには怒らせてしまって逃げてった!!!?馬鹿なことやって後悔するくらいなら、後先のことちゃんと考えて私とキッチリと向き合いなさいよ!!!!!」
涼花の怒声が公園中に響き渡り、修次郎は唖然とした表情でしばらく何かを考え込み、
「…ごめんな…本当に…。
不安だったんだ…君とは友人の関係だったのを、急に恋愛関係になることを…ずっとずっと…。」
「…すぐに謝って来なさい。
もし許してもらえたのなら、付き合ってあげても良いわよ…。」
「…いや、いい。決心が付いた。」
修次郎は立ち上がって、
「今まで通りの関係でいこう…やっぱり君に叱られると、悩みも晴れて気が楽になる…。」
「…そう。
…早く行ってきなさいよ。」
「…すまん…。」
修次郎は公園を後にした。
涼花は一人、公園のベンチに座り尽くし、自分の言動を後悔する。
「…言い過ぎよね、さっきの…。」
河川敷。
楓は青空が反射している川を眺めながら黄昏れていた。体育座りをし、顔を太ももの間に埋めている。
「…どうしよう…修次郎さんに合わせる顔が無い…。」
すると、
「あれれ~?どこかで見たことあるなぁ~?」
楓は顔を上げ、ゆっくりと後ろに振り向く。
見たことのある男達が立っていた。楓が初めて女装し、公園に狩り出されていた時に突っかかってきたチンピラ達だ。
「楓ちゃんだよね?久しぶり~!」
「…前に、あんたの仲間が私を攫おうとしていたらしいわ…アレはどういうこと?」
「いやぁ、“あの男“が居ないのなら大丈夫かと思ってね~…
…ったくよぉぉ!!!厨房の雌に蹴り倒されただけで帰って来やがってよぉぉぉ?!!!」
チンピラのリーダー(?)は、前に楓を後ろから捕らえようとした仲間のチンピラの腹を思いっきり蹴り倒し、倒れた隙に何度も腹を蹴った。
「ッ……!!!!」
楓は立ち上がって、その場を去ろうとする、が、
「逃がさないよぉぉぉ!!!」
他のチンピラ達は一斉に楓を円のような形で囲んで逃げ場を封じた。
「しまっ__」
チンピラのリーダーは楓が穿いているスカートのウエストを掴み、引っ張る。
「やっっめろ!!!」
楓はリーダーの腕を掴み、無理矢理スカートから手を離させた。
「っいてぇじゃんかよぉぉぉ!!!」
リーダーは右手の甲で、楓の頬をビンタした。
「うぐッ…!!!」
よろけたとたん、他のチンピラ達は一斉に楓の体や服を各々掴み、引っ張り、河川敷の下に停めてあるバンに連れ込もうとし始めた。
「は…離せ離せ!!!」
「静かにしてろ__」
「オイ、コラァ!!!」
「…あ__」
リーダーの頬が硬く握られた拳でめり込み、リーダーは河川敷の階段から転げ落ちていった。
拳の主は、修次郎だ。怒りに満ちた修次郎だ。
「しゅ…修次郎…さん!」
「お前ら…二度とその子に関わるなって、言ったよなァァァァ?!!!!」
またしばらく遅くなります。