○4 性癖なんてない……はず
目を開けるとまず見えたのは木の板。
ギシという音をたてながら起き上がろうとする。
「いたっ……!?」
動くと手首が締まってだんだん痛くなっていく。
これによって俺は手首を見てようやく現状を把握したのだ。
「縄……あ」
俺は縄で手首を縛られている。もちろん両手。
寝転んでいるところはベットの上。そして見覚えある木の板ということは俺の部屋だということだ。
「起きた?」
横を向くと白く細い足が見えた。
服装はワンピース、だがパンツは見えない。
スパッツなんて履きやがって、くそ。
「シノ、これを解いてくれないか」
そういって縛ったであろう人物に解いてくれと頼む。
「いいよ。満足したし、縛り方も痛そうだからもっと練習しとくね」
そういって笑うと俺の手首の縄を解いていく。
こうなった理由はもちろん、前回であったことだ。
「私、祐戸くんのこと縛りたいの」
そういったシノの顔は今まで見た中で一番の笑顔だったと思う。
シノは縄を持っている。
「縛りたいって……?」
「私、束縛癖があるの」
シノがいうには自分は大切な人を縛りたくなる癖というものがあるらしい。
今までも一人、親友のヒヨリを縛ったことがあると言っていた。
あれ以来ヒヨリはちょっとの間シノと話さなくなったのがきっかけでなかなか人には言えず、俺には言おうと思ってくれていたみたいだ。
それはそれで俺も話さなくなりそうだけど。
俺はちゃんと言ったんだ。
「縛られるのは正直勘弁だな……」
そして翌日朝起きたらこうなっていたわけだ。
「お母さんがご飯だっていってたよ。いってきなよ」
そういうシノは普段どおりで昨日とは違っている。
なんだか縛り癖があるようには見えなかった。
その後は至って普通。
ご飯中も話し方は昨日までと一緒、登校中も学校の話をしていた。
「んー……」
「何やってんの?祐戸」
振り返るとそこには黒髪ショートの白衣を着た女の人が立っていた。
なんということだ。俺は年上の人までにもモテているのか。
「えと……」
「あぁ……すまない。君はもう一人の方だね?」
「え?」
「僕は教授の境響夜。こう見えて男で君のことも知っているし君のサークルの担当だよ」
キザっぽく決めるが女顔の彼はとても男には見えなかった。
「では僕らの活動拠点にいこうではないか」
彼は俺にそういうとゆっくりと建物の中に入っていく。
慌てて俺もそれを追った。