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○1 別世界ではモテる……はず

「今からブックオフいかね?」


「了解ッ!……あ、祐戸。俺今からデートだから無理だわ」


 俺の友人カズはスマホを耳にあて誰かと会話しながら人ごみにまぎれていった。

 いつものことだ、気にしないようにしよう。そうしよう。

 ……やっぱ気にするわ、うん。


 現在彼女いない歴を更新し続けている俺高坂祐戸(21)は苦悩していた。


 彼女が出来ない、なぜ出来ない。

 有名な少年漫画誌のラブコメ漫画のさえない主人公にすら女にモテまくるというのになぜなんだ。

 顔は別に悪くないほうだと思う。体も太くはないし。

 俺みたいな容姿のやつなんて腐るほどいるのに何故人生でまだ一度も告白されてないんだ?俺はいたって普通の大学生だ。見た目も、中身も、健全でかつチャらくもナルシストでもない。

 それが汚点だったりするのか?

 もしかして健全すぎて常に友達とバカ騒ぎしているから?


 とにもかくにも俺は21年間彼女が出来たことが無い。

 告白なんてもってのほかだ。

 昔はあまり気にしたことが無かった。友達とバカ騒ぎしてるのが楽しかったからだ。

 だが最近古くからの友人であるカズに彼女が出来た。

 しかもその時からカズは異様にモテ始めたのだ。

 中学時代、女子のスカートめくってた小学生脳のやんちゃボーイとは思えないくらいだ。

 

「少年ジャンポ買って帰るか」


 もうすぐ夏休みがやってくる。

 今年もプールや海、花火は行かない。行ってもむなしくなるだけだ。


 近くのコンビニにより少年ジャンポを買うと俺はまっすぐ家へ向かった。



 ゲーム主題歌の着信音とともにカズからの着信が入った。

 出るとガヤガヤした音とともにカズの声が聞こえた。


「もしもし?」


「おー!祐戸じゃねぇかー!」


 カズはどうやら酔っ払っているようだ。

 カズは酔うと適当に誰かに電話をかける。


「祐戸今何してたー?」


「俺は少年ジャンポ見てた」


「ジャンポかー!今日発売日だったな!!」


「明日貸そうか?」


「お、貸してくれ!」


 そんな日常会話をする。

 ふと部屋のデジタル時計を見ると23時を示していた。


「そろそろ風呂入るわ」


「あ、待ってよー祐戸」


「何?」


「今度さ、合コンいかね?」


 


 ……合コン?


「いつ?」


「来週の土曜」


「どこで?」


「いつもの居酒屋」


「おけ、行くわ」


「じゃあまた詳細は後日な!じゃーな!」


 通話の切れる音がなるとスマホの通話画面を消す。

 

 合コン。

 人生初めて合コンに誘われた。

 これで俺も念願の彼女ができるんじゃね?

 カズ最高だわ、明日何かおごってやろう。


「ラッキーだわ!早く風呂入って寝よ!」


 聞こえていたらしく隣の部屋にいる姉にうるさい、キモイと言われたが気にしない。

 とにかく、俺は彼女ができるかもしれないということに期待をふくらませていた。



 俺はその夜、興奮しすぎて寝付けなかった。

 

 午前3時。

 寝付けず天井を見つめていた。


「少し、ネットでもいじるかな」


 そうつぶやいて体を起こしパソコンの置いてある机を見た。


 机を見ると妙にその付近が明るかった。

 カーテンからうすく光がさしている。


「夜中じゃねぇのか?」


 カーテンを開けると空は青く、雲ひとつない晴天だった。

 遮光カーテンだからわからなかっただけかな。


 ただ、ひとつ疑問が出た。


 違うのだ。

 よく見たらいつもの風景と違っていた。


 いつもある電柱が違う場所にあったり、知らない苗字の家があったり。

 見た目はかなり似ているが違っていた。


 そして目の前の家から一人の少女が出てきた。


「アイツ、俺んちに向かってきてる……?」


 制服を身にまとい、黒髪のセミロング。可愛い小柄な少女は俺んちのインターホンを押す。


「!?入ってきてる!??」


 その少女はなんと俺んちに入ってきたのだった。

 姉の知り合いか?


 しばらくしてどたどたと階段を勢いよくかけ上がる音が聞こえ、ドアが開いた。俺の部屋のドアである。


「祐戸くん!今日という今日は起きて……お、起きてるだと!??」


 少女は目を丸くする。

 まさかの俺の知り合いだとは。でも俺はこの子を知らない。


「祐戸くんが、起きてるなんて!!今夜はお赤飯!??」


 そう慌てる彼女。

 その慌てようが下まで聞こえたのか母がやってきた。


「アンタ起きたの!?珍しいわね!!ほら、シノちゃんも来てくれたんだから起きて支度なさい」


 どうやら彼女はシノという名前らしい。

 シノは私は下で待ってるよというと部屋を出て行った。


 ベットの上のスマホを見ると午前7時をさしていた。

 そこには一通のメールが入っていた。


「……別世界の僕へ?」


 メールのアイコンをタップし件名をタップする。


『これを見ている君はもうここの世界にやってきたということだね。

初めまして、僕は別世界の君だよ。

訳あって同じ大学の教授の協力によって君をこの世界までつれてきたんだ。

この世界は平行世界、つまりパラレルワールドだ。

君がいた世界と似ていてどこか違う、そんな世界だよ。


君にはこの世界で一時的に生活をしてもらいたい。

もちろん君は僕だから自分の家にいていいし何してもいい。

あ、犯罪的なのは除いてね


急かもしれないけど頼んだよ』


 まったく意味がわからないぞ自分。

 パラレルワールド……そんなものがあるのか?

 聞いたことはあるが……


 だが風景は同じようで違っていて……


 頬をつねっても痛くてこれは現実だと思い知る。



 結論、俺はパラレルワールドってやつに迷い込んだらしい。

 というよりは勝手に連れてこられてきた。そしておおざっぱな俺により詳細不明で進路不明。ある意味迷子。



 とにかく、俺はいそいで着替えると下の玄関にいるシノの元へ向かった。



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