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知識馬鹿  作者: よもぎ
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6

あと一話!!

「ふむ、お前は先祖返りか」

「・・・・」

「耳の形が森の民とは少し違う」

「・・・・」

「かつては森の民も人間と生活していた。人間に緑の瞳を持つものが生まれたのも、そのためだ」

「・・・・」

「耳がとがってはいるが、森の民ほどでもないお前は、おそらく先祖にいた森の民の血がたまたま顕著に表れたのだろう」

「・・・・」


 大人しく待っていなかった。


 指定された場所に向かえば、そこには両手を後ろで縛られ、床に座らされた知識馬鹿と、相対する男。


 知識馬鹿を拘束したいなら、手よりもまず口を塞がなければ。


「・・・・来ましたか」

「・・・・王子を、解放しなさい」


 男が、こちらに目を向ける。窓から差し込むわずかな光に映し出されたその顔は、自分の予想通りで、顔をしかめずにはいられなかった。


「・・・アデル、あなた自分が何をしているか分かっているの?」

「・・・・ああ、分かっているよ。アールヴ」


 笑む男。


 汚い部屋のせいか、ほこりが充満して鼻が利かない。


「アールヴ!!口を塞げ!!」


 知識馬鹿が何か言っているが、ここは無視させていただく。これは、森の民の問題だ。


「・・・・あなたは、あの花を持ち出した」

「ああ」

「しかも、それを人の世にばら撒いた!!」

「くくくっ、面白いくらいにすぐ広まったよ」


 懐から出したのは、確かに星見草。


 けれど、星見草に魔の成分はなかったはず。


「・・・その色は?」

「知ってるだろ?この花は、森の民の血で育つ」


 そう。だから持ち出したところで育つわけがない。


「だからね、僕の血を与えてみたんだ」

「なっ!!」


 袖をまくるアデルの腕には、深い傷跡が。


「でも足りなくてね。試しに人間の血を与えてみたんだ」

「なんてことを・・・」


 床がなくなったような気がした。


 アデルは、かつで同じ森の里で暮らした少年だった。


 先祖返りのせいで、人の世を追われ、たまたま森に迷い込んだところを保護した少年。


 人間不信で、でも、彼に森の民の能力はなかった。


 姿だけが、森の民のもので。


 けれど、それも森の民とは少し違って、人間とも違って。


 少しずつ、心を病んでいたのは知っていた。


 けれど、救えなかった。


「人間も、たどれば森の民の血が入っているだろう?だから、緑の瞳を持つ人間を集めたんだ。随分苦労したんだよ?森の民よりたくさん血がいるんだ」

「ふむ、いくら緑の瞳を持つとはいえ、その中に血が残っている可能性は低いな」

「ローラ。少し黙っていてください」


 おかしい。なんだろう?目がかすむ。


「そしたら色が変わってね?そしたら、魔の成分をもつようになったんだ。不思議だろ?人の血を吸って、人を毒する花になったんだ」


 笑う。


「一石二鳥だったんだ。僕はね、人間が大嫌いだから」


 笑う。


「人間を使ってこの花を育てて、この花で人間を破滅させる」


 笑う。


「ね?効率的でしょ?」

「やめて!!」


 耐えきれなかった。


「あなたは人間でしょ?なぜ、人間を憎む?」


 笑みが、消えた。


「僕が、人間?何言ってるの?」


 ことり、と傾げた首。その瞳に、狂気が宿っている。


 ああ、駄目だ。


 そう思った瞬間、私の足が崩れた。


「うっ」


 この視界の悪さは、ほこりじゃ、ない。


「アールヴ、口を塞げ!!」


 もう遅いですよ、ローラ。


「星見草・・・」

「ふふふっ、やっぱりアールヴは森の民だ。体が、動かないでしょ?」


 近づいてくるアデル。必死に下がろうとしても、体が言うことを聞かない。


「僕に賛同してくれる仲間もいっぱいいるんだよ?」

「アールヴ!!」


 情けない!!助けにきた自分がこの有様。


「ね?アールヴも一緒に行こう?」


 差し出される手。


「人間のいない世界へ」

王子の過去とか、番外編書きたいなぁ。

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