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半分過ぎました!!
植物の毒を受け付けない体、それが森の民の秘密だ。
さらに、その血には強い解毒作用があり、万能薬としてほとんどの毒を解毒できる。
はるか昔、人と森の民を分かつ原因となったのが、この血であった。
人は、森の民の血を求め、狩りだしたのだ――――――。
いや、血だけでなく、その心臓を求めて―――――。
あらゆる毒を解毒できるなら、心臓を食べれば病が治るのではないか―――――。
そんな理由から、人は森の民の命を狙ったのだ。
もちろん、そんな効能はない。試した人間は思い知ったはずだが、それでもなお、大多数の人間がそれを求め、結局森の民は森の中深くへと隠れ住むこととなった。
今、この事実を知る人間は、ほとんどいないはずだった。
――――――最後まで人間と戦った者たちが、命を賭してそれらの書物を燃やし尽くしたはずだった。
知識馬鹿と縁を切ってから半月ほど。
あの花は、やはり森の民の住む森にしか咲かぬ花だった。
森の民の集落の中でも特殊な場所、『墓地』にしか咲かぬ花。
ほとんどの毒の影響を受けない森の民。けれど、ただ一つだけ、森の民に効く毒性をもつ植物がある。
森の民の体を栄養に育つ花。
幾重にも重なった五角形の花弁が美しい白い花、星見草。
人間の地で絶滅したとされるのは、人間の住む地に森の民の体がなくなったから。
今なお、森の民の集落では咲き誇るこの花。
「・・・・持ち出したやつがいるのか」
その人物に、心当たりがあるからこそ、一人で止めるつもりだった。
なのに―――――。
「・・・普通、姫を助けに行くのが王子じゃないの?」
手の中にある一枚の紙切れが、紙以上の重みがあるように感じる。見なかったことに出来ないだろうか?いっそ燃やしてしまおうか?
どちらもできないことは、自分が一番知っているのだけれど。
ため息が漏れる。
囚われの王子を、森の民が助けに行く。
「こんな物語、絶対流行らないでしょう・・・」
自分が姫、というよりは王子が姫の方が似合うけど。
ローラなんて女みたいなあだ名をつけたからだろうか?
もう会わないと、目を離したのがいけないのだろうか?
この半月、ちゃんと食事をとっているか。研究にのめりこみすぎて回りに迷惑をかけていないか。いや、研究にのめりこんで暴走しているだろう。そう、思わぬ日はなかった。
自分から離れたくせに、と、毎日自嘲していた。
ため息。
見捨てられないのに。
気にしないではいられないのに。
初めて会ったその時から。
自分はもう、彼の光に目を奪われていたのに。
「・・・・馬鹿は、どっちだろう」
ため息。
手の中の紙は、丸めて放り投げた。
代わりに持つのは、使い慣れた皮の鞭。
投剣を服に隠し、鉈を腰にさす。
やるべきことは、とうに決まっている。
「・・・・大人しく待っていてくださいね」
救うは姫のような王子である知識馬鹿だ!!
もう少し心理描写をしたかったかも・・・・。