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唐突に、  作者: 紅
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約定外

約定外かやのそと

 くれまち 巳御みおの17歳は(現在)華の女子高生である。

短く整えられた髪がえらく彼女に似合った、春一番の吹き荒ぶ今日この頃を物ともせずに彼女は本日も学路を行く―切れ長の目に縁取る睫毛はしゃらしゃらと長く、風になびく変わった色の髪はまるで遊ぶよう、着崩してもいないのに既製品の制服姿が可憐に映る―長身でいて細身だけれど決して肉付きがわるいわけではない。寧ろ男装しても麗しい姿がありありと想像出来る、そんな美男子ならぬ―――だった。

 「そうあの女史ひと、呉 巳御は乙女遊戯オトメゲームには不用な強敵なのよ!」と双子の姉 鬼灯あかりは朗々と言い放った。対して妹の鳴音めいろは素っ気無い「ふーん」と言ったきり参考資料の機体ゲームを手にぴこぴこと気の抜ける音を鳴らして、欠伸しつつもその目には微かな闘志が見え隠れしている。

 一体、この姉を差し置いて何をそんなに夢中になっているのか?咎めたい気持ちも涌いたが。一先ず妹の手元を覗き込むと予想外のジャンルに熱中していることが発覚した、格闘アクションとRPGの織り交ざった新要素を引き継いだそれだ。「姉、暗い」急に照明を遮ったかたちに為ったのでぞんざいな扱いを受けるも意に介せず、鬼灯は画面に視線が釘打たれたようであったという。

 「鳴音ちゃん?あら、めずらしいわね、鬼灯の部屋にいるなんて…」私たちは双子でありながら犬猿の仲であった。しかし最近は休戦協定をむすんでいる(と言うか鬼灯の方から打診したのだ)、これこそ姉の余裕「隙有々の姉の嗜好品ケーキは私のもの」わっとふりむいた鬼灯の顔に余裕如何はなく、般若もかくやとか。


 「霧花きりかさん、これなんて貴女に似合いそう、是非着てみて」憧れの先輩から勧められれば否とは言えない(鬼灯は決心した)。試着室にはいって彼是5分ほど経過している、けれどなかなか手強い代物を洒落気に着こなす自信もないのだ「霧花さん、大丈夫?手伝おうか」仕切りの向こうの影が手をのばす気配がした。「だ、大丈夫です!!」勢い込んで断った手前だ、仕方無に鬼灯は袖に手を通した。

 御似合いです、御客様購入なさいますか?店員の接客はなかなかで世辞でも悪い気はしない、けれど姫系ファッションに今まで手を出したことはない(おろおろと鬼灯が迷っている手前で先輩を待たせてしまう)。「あ、姉じゃなく、鬼灯。友達と買い物?それとも恋人?」妙なところで微妙なテンションの妹に出遭ってしまった、やばいこれは居た堪れない早く否定しないと「ふふ、可愛い妹さんだね」焦る鬼灯を余所に余裕綽々の先輩が衝撃的なことをサラッと言った「これ買うから会計御願いします、―店員にそれだけ伝えると―はじめまして妹さん。霧花さんと、いやこの場合は鬼灯さんかな、と親しくしてもらっているくれです。以後宜しく」と丁寧に御辞儀をした、暇をしていた店員達も拍手するほど所作が美しかった。唖然とする鬼灯を差し置いて「是非我が家にいらして」と妹。


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