おうさまのにっき、2ページ目と3ページ目の間
主人公マルスによる補足です。彼は軍人になる予定なので文才なんて必要ないんです! 敷居の低い語り手兼主人公バンザイ!
これは僕が後から聞いた話をもとに想像して書いたメモである。
未来の僕、2ページ目と3ページ目の間から動かさないでくれ。
その日、アヴァース家当主ルシフルは困惑していた。というのも大切な財布を落としてしまったからに他ならない。彼は財布を落としたことはなく、そのために財布にまとめて貴重品を入れる癖がついていた。その財布には亡き妻との結婚指輪が入っていた。
(殺される。ばれたら簀巻きにされて川流しか、素っ裸で市中引きずりの刑か……)
僕の考えでは、きっと彼の想像した人物はもっとひどいことを微笑みながら実行するだろう。絶対にあの人を怒らせてはいけない。絶対だ。
彼は本日の行動を思い起こす。今、太陽は昇りきる直前。この下町に来てからそう時間がたったわけではない。財布を出したのは三回。一度目は小腹が減って団子を食べたとき。二度目は幼い娘(かわいい。将来性◎)に花を勧められたとき。三度目は靴を磨いてもらったときだ。
彼がウザ、失礼、名誉のために書き加えよう。彼はロリコンではない。熟女好きだそうだ。(彼の監督のもとに書いているため、許してほしい)
となれば、靴を磨いてもらったのちから気づいた現在地の間で落としたわけだ。
(金はいい。指輪だけでいいから見つけなければならない)
来た道を辿ったのだが、やはり財布は見つからなかった。この下町で彼の財布の中身は大金だ。持ち去られて当然である。あまり事態を大きくしたくなかったのだが下町に詳しくない以上はここの衛兵に尋ねるしかない。
彼が尋ねたところ、大慌てで汗を垂らしながら接待しに来たのがデブロブだった。いやデロブタかデブタローか? どこかの貴族の三男坊でひねくれ者のいけ好かないやつだ。
事情を話したら、ニンマリと汚い顔で提案してきやがりましたそうだ。敬語は難しいな。
「そういうことでしたらお任せください。きっと汚い孤児どもが閣下の財布を懐に隠したのでしょう。私にとっておきの作戦があります。なぁに、治安もよくなり一石二鳥ですよ。安心してお待ちになってください」
そういって御ブタ様は豚足を揉みながら、部下を集め始めた。