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マギア・フォレンジクス 〜スキルが真実を決める異世界法廷にロジックで抗う〜  作者: 里中 汪


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第4話 焼死事件発生

翌日、事務所に案内された。

昼でも薄暗い、治安が悪い貧民街の最奥。

そこの集合住宅の屋根裏部屋だった。

部屋に入るには、2階の廊下の行き止まりから

梯子で上がるしかない。


事務所というものの、簡素なベッドと本棚が1つずつ、

そして机と椅子が2セットあるだけだった。

古く老朽化した机は、脚の一本が短いのか、

書類を置くたびにわずかに揺れた。

本棚にはたくさんの書類が乱雑に突っ込まれている。

どれも敗訴記録だ。勝訴の記録は無い。

有罪率99%。

この職業の価値を示す数字として分かりやすすぎる。


ネズミは既に3匹通り過ぎて行った。

ホコリが常に舞っており、咳が止まらなくなった。

ハンカチをもらい、顔に巻くことにした。

「住む家が無いみたいだから、ここに住んでいいよ。

俺はここより格段にマシな家があるから。」

”格段に”を強調してアルバはそう言ってくれたが、

早めにお金を貯めて家を探せそうと決心した。

多分、半年住むと肺炎を患うだろう。


その時、梯子を大きく軋ませて大男が登って来た。

その男は調査官だった。

調査官とは事故や事件の調査を行う役割を担う職種で、

騎士団の若手が兼務している。

以前見た門番の鎧とは素材や作りが圧倒的に違う

高価な鎧を身に纏っている。

おそらく、毎朝磨いているのだろう。

残念ながら、この部屋に入り埃を被ってしまったが。


「焼死体が出ました」

説明は短い。挨拶もない。

今まで挨拶を聞いていないので、

この世界にはその概念は無いのかもしれない。


被害者は貴族。職業は宮廷魔術師の補佐官で、

炎魔術師であるという。

「鑑定結果は?」

アルバは淡々と切り返した。

「死因は焼死。魔力残滓は炎属性。

 顔には暴行を受けた痕跡あり」


「被告人は?」

「被害者と同じ炎の魔術師。別の宮廷魔術師の補佐官。

 術師としての評価は高くなく、素行が悪いとの評判」

ありがちな話だ、と調査官は言わなかったが

態度がそう語っていた。


「事件前に被告人が被害者の部屋に入るところを

 見たとの目撃証言があります。

 その後、口論と大きな物音がしたそうです。

 1時間後に目撃者が被害者の部屋を見たところ、

 焼死体を発見」


密室。鑑定一致。動機あり。目撃者あり。

この世界の裁判で、これ以上揃うことはない。


「断罪官は?」

「フリューゲル氏です」

「……そうか」

アルバからはそれ以上の言葉は出なかった。



⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻



被告人との最初の面会は、留置室だった。

鉄格子越しに見る炎の魔術師は

噂通り軽薄そうな男だった。

長い髪は青色で、ポニーテールで結ばれている。

腕を組み、壁にもたれかかっている。

鉄製の大きな手錠をかけられ、苛立っているようだ。


「弁護官とその新米助手が何しに来たんだ」

蔑むような態度だった。

名前も名乗っていないのに立場は把握されている。


アルバは頷いて、話を切り出した。

「炎の魔術師エルディオ。事件について聞かせてくれ」

「殺してない」

即答だった。

「それが真実である前提で聞く」

「じゃあ、もういいだろ」

話を打ち切ろうとする。協力的ではない。

弁護官を心底見下している。

「事件前、被害者と何があった」

「口論した。それだけだ」

「手は出したか」

一瞬、視線が逸れた。だが、すぐに戻る。


「出してない」

嘘だと断定はできない。

だが、引っかかりは残る。

「被害者と揉めた原因は何だ?」

「……」

沈黙。

「その日あった詳細を説明してくれ」

「覚えてない」

取り付く島もない。

この男は、自分が詰んでいることを理解している。

だからこそ、余計なことは言わない。

アルバは溜息をついた。


助手として何の知識も能力も無いが、口を挟んでみる。

「協力して貰えなければ、こちらも助けようもなく

有罪になるだけじゃないか?」

「何も知らない新米が口を出すな!」

「自分が殺していないなら、真犯人に

 心当たりがあるのでは?」

「ねえよ。」

この世界の罪を着せる方式で聞いてみた。

「じゃあ、あなたがやったのでは?」

「俺じゃねえよ!俺は一発ぶん殴っただけだ!」

「それで死んだ可能性は?」

「なら、あいつは魔法で反撃してこねえよ!」

「どんな魔法をかけられた?」

「教えねえよ…」

刑務官が口を挟む。

「被疑者を無闇に刺激するな。面会は終わりだ」


連れ立って拘置所を出てすぐ、アルバから怒鳴られた。

「依頼人に喧嘩を売ってどうする!」

「向こうがあまりにも非協力的だったから」

「最初から協力してくれる依頼人はほとんどいない。

 何度も面会して、調査結果や弁護方針を説明して

 やっと協力してくれるんだ」

「すみません」

アルバと揉めたい訳ではないので、謝るしかない。

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