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マギア・フォレンジクス 〜スキルが真実を決める異世界法廷にロジックで抗う〜  作者: 里中 汪


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第12話 威嚇と尾行

躊躇はあったが、それでも事件現場へ向かった。

門前払いどころか、酷い目に遭う可能性もある。

それでもやはり、現場に行かなくては。


事件調書に記載の住所を頼りに、何とか辿り着いた。

宮廷術師を目指す数多の補佐官達が住む寮だった。

10階建ての集合住宅だった。しかも木造だ。

恐らく、建物全体に何か強度を補強する高等魔術が

施されているのだろう。ちなみに、エルディオは

ここではなく貧民街に家があると聞いている。


建物に入ると正面に、筒状の装置が4基並んでいた。

見ていると、魔術師が中で呪文を詠唱すると装置ごと

上昇していった。魔術式のエレベーターのようだ。

被害者の部屋は404号室。階段を探して登った。


部屋の前には誰もいない。戸は開け放たれている。

ただ、魔法陣が入り口の宙に浮いていて、

中に入ろうとすると柔らかな力で押し戻された。

現場保全の為、入室を拒む魔法が施されている。


しかし、扉は開いている為、中を覗く事はできた。

部屋はワンルームでそれほど広くなかった。

やはり、焼け焦げた箇所は不自然な程限定的で、

被害者が事件当時にいたベッド周辺だけだった。

両隣の部屋をノックしてみたが、応答はなかった。


階段で1階に下りた所で、調査団の男と鉢合わせた。

事務所に来た人とは別だが、同じ格好だ。

頭を下げて通り過ぎようとした。


「おい、弁護官が何故ここにいる?」

その声色だけで、剥き出しの敵意が伝わってくる。

「事件の調査です」

考えれば分かるはずだが、言葉にする気はない。

「結界で入れる訳ないだろ!暇なのか?」

相手にするメリットもないし、時間もない。

日が暮れる前にアルバのお見舞いに行きたい。

「そうですね、ははは」

返答が気に食わなかったのだろう。

その男は持っていた剣を喉元に突きつけてきた。

剣には濁った茶褐色の汚れが薄くこびり付いている。

血、肉、骨。色々な物を長く斬り続けた結果、

手入れをしても拭き取れなくなったもの。

突きつけられた剣よりも、汚れの方に恐怖した。


「次はちゃんと法廷で振舞えよ」

この前もちゃんと振る舞ったつもりだ、と

言いそうになったが相手を逆上させるだけだ。

反論は飲み込み、黙って頭を縦に振った。

剣を下ろされるとすぐに、そそくさと退散した。



⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻



アルバが入院している、古ぼけた診療所に向かった。

この診療所には、貧乏人か訳ありの患者しか来ない。

看護師は高額な有料オプションだった。


アルバは意識が回復し、上半身を起こしていた。

「体はどう…?話せるか?」

顔の右半分は包帯で巻かれて見えないが、

左半分の表情から意識ははっきりしていると分かった。

「…ああ、体は全く動かないが、喋れる」

「痛みはどうだ?」

「全然無い。体の感覚もない。この姿勢も、

さっきアンガスに動かしてもらったんだ」

かける言葉が見つからない。無理矢理捻り出す。

「きっと良くなるさ。しっかり休んでくれ。

裁判はきっと何とかなる」

「アンガスから聞いたよ。活躍したんだって?」

「活躍なんてしていない。アルバの調査記録を基に

再審理に持ち込んだだけさ」

アルバは笑う体力も無いようだった。


あまり長く会話すると、負担になるかもしれない。

聞くべき事に絞って聞こう。

「そういえば、なぜ、裏取引を拒否したんだ?」

「いつものあなたなら受け入れたのでは?」

「新人助手に汚い仕事振りを見せたくなかったのさ。

結果もっと格好悪い事になったが」

「そんな事はない。全然ない。俺も今、痛感している。

弁護官の信念を貫く事がいかに難しいか」

「誰かに嫌がらせされたか?」

「今日、尾行されたり剣で脅されたりしてる」

「そうか。頑張れ。謝礼はいるけどアンガスは護衛の

経験は豊富だからお金を惜しまず依頼してみろ。

あと、その服の使い方は分かるか?」

「ありがとう、分かるよ。使わせてもらう。

…それより誰に狙われたか覚えていないか?」

「顔は隠していたし、一瞬しか見えなかったが、

橙色の髪をした男だった。珍しくも無いが…」

「他に手掛かりになりそうな事は?」

「正直、事故直前の記憶も曖昧なんだ。」

「分かった。…1つだけ変なお願いがある。

火傷の跡を全身見せてくれないか」

「いいよ」

上半身、腹、足。包帯を外しながら確認していく。

背中には、探していた赤紫色の樹状模様が

はっきりと浮かんでいた。


「ありがとう。ゆっくり休んでくれ。明日の法廷では

アルバの分も暴れてくるよ」

「はは、頑張りすぎるなよ。自分の命が第一だ」

「裁判が終わったら、すぐ人がいない田舎に逃げるよ」

どちらとも無く、軽く握手をした後病室を出た。



⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻



帰り道、すっかり日が暮れてしまった。

急ぎ足で帰る。人通りが少ない所は全力で走った。

後ろから2人組の尾行がいる事に気付く。

何か金属製の大きな物がガシャガシャと鳴っている。

恐らく武器を持っている。襲撃される可能性がある。


幸い、事務所からほど近い場所まで戻れた。

撒くしかない。歩きながら周囲に目を走らせ、

目的に適う道を探した。少し先の酒屋の横道がいい。

外套のボタンを外す。


ゆっくり真っ直ぐ歩き、急にその道に曲がった。

全速力で走りながら、更に右に曲がる。

外套を脱ぎ、反対側にに折り返す。フードを被る。

更に道を曲がった所で、平静を装いゆっくりと歩く。


無事に尾行を撒けたようだ。

事務所の建物に入り、屋根裏に上がった。

今夜は灯りを付けずに月明かりで過ごすことにした。

明日に備え、時間を惜しまず法廷戦略を練り続けた。

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