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マギア・フォレンジクス 〜スキルが真実を決める異世界法廷にロジックで抗う〜  作者: 里中 汪


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1/8

第0話 その世界の法廷

本作は、スキルや魔法が真実を決める異世界法廷を

舞台にしたファンタジー&リーガルミステリー。


鑑定魔法は絶対。魔力残滓は嘘をつかず、

論理よりもスキルの強さが判決を左右する世界。


主人公は、魔法を使えない弁護官。

派手な無双やチートは無い。

詰んだ法廷で、論理だけを武器に戦う。


異世界とリーガルミステリー、

その交差点で紡がれる物語。

ガレウス王国の第4法廷は異様なほど静かだった。

人の声が少ない訳ではない。

余計な物音を立てることが一切許されていない。


高い天井から白い光が均等に射し込む。

柱が少なく、影が生まれにくい造りになっている。

法曹界のポリシーである公平さを象徴する為だ。


被告人は中央に立たされている。

拘束具はない。逃げる事は不可能だからだ。


正面の高壇には審問官が座っている。

固められた無表情からは一切の心情が推し量れない。


被告人から見て左手、断罪官が一歩前に出る。

ボソボソと呪文を詠唱し、指先を突き出した。

指先に光が集まり、宙に大きな”鑑定結果”が

浮かび上がった。


「鑑定結果を再確認します」

断罪官の声は平坦で抑揚がない。

「死因は窒息。外傷はなし。毒性反応なし。

魔力残滓は微量。水属性は被告人と一致」


それだけだった。見解も、推測もない。

記録官の羽根ペンが紙を擦る音だけが、法廷に響く。

審問官は一度だけ被告人を見た。


「罪状の否認は?」

「私は……殺していません」

被告人の声は震えているが、取り乱してはいない。


審問官は短く頷く。

「目撃証言を」

調査官が前に出る。

「事件当夜、被告人が被害者の部屋から出てくる

 のを目撃した者が2名。その直前に口論のような

 声も聞こえたとの証言です。」

審問官は頷いた。

「現場の状況は?」

「内部結界が張られていました。

 第三者の侵入は不可能です」

「解除痕は」

「確認されていません」


記録官が淡々と書き留める。

審問官は再び被告人に視線を向けた。

「ここまでの事実に、誤りはあるか?」

「……争った覚えはありません」

「覚え、か」


審問官は視線を左に向けた。弁護官の席だ。

弁護官は手元の書類を眺めている。


「弁護官、異議は?」

「ありません」


即答だった。

それで、この件はほぼ終わった。


被告人が助けを求めるように弁護席を見るが、

視線は合わない。弁護官は下を向いたままだからだ。


審問官が右手を挙げ、ボソボソと呪文を呟いた。

法廷の空気が変質する。

”心眼”の結界が発動した合図だった。


審問官はこの結界下で対象者の感情分布を

完全に見抜くことができる。


「では問おう」

一拍置く。

「お前以外に、この殺人事件を行えた者はいるか?」


被告人は口を開きかけ、止まった。視線が宙を泳ぐ。

必死に頭を巡らせているのが、痛々しいほど分かる。

だが、答えは出ない。


部屋は静まり返る。


審問官は入念に被告人の感情分布を見ている。

混乱が大半。恐怖。迷い。

否定の意思もあるが、具体性は皆無。


断罪官が一歩前に出た。

「第三者の魔力残滓は確認されていません」


それは揺るがない事実だった。

審問官は記録官を見る。

「第三者可能性の提示、なしと記録」


羽根ペンが動く。

「それは……知らないだけで……」

被告人の声は、途中で掻き消えた。


審問官の声は穏やかだった。

「法は、起きたことを裁く」

間を置いて、続ける。


弁護官は何も言わずに、下を見ている。

そこで何もしない事が、この場の彼の“役割”だった。


審問官は心眼を解除する。


「判決を言い渡す。被告人を、有罪とする」

驚きの声は全く上がらなかった。


理由は簡潔だ。

•死因は確定

•魔力残滓が一致

•密室条件が成立

•第三者の可能性は提示不能


この世界の基準では、完全に合理的だった。


被告人は崩れ落ちない。叫びもしない。

ただ、不可解なものを見る目で、法廷中を見回した。


審問官は次の書類に手を伸ばす。

この国では、こうして今日も淡々と判決が下される。


結果は処理された。理由を探す必要はない。

それが、正義だった。

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