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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第3章

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第097話 しゅっぱーつ


 朝目覚めると、アンジェラが朝食を作り出したので布団をしまい、メアリーの部屋に行く。


「メアリー、起きろー」


 アホ面でむにゃむにゃと寝ているメアリーを揺する。


「ふふっ、おーっと、ここは王都だ……」


 ダジャレ?

 夢の中でもバカなのか、こいつは。


「しょうもないことを言ってないで起きろ」

「んー……あれ? 王都は?」


 メアリーが薄目を開け、聞いてくる。


「それはこれから行く。顔を洗ってこい。布団はしまっておくから」

「あーい……」


 メアリーはがベッドから下りると、ノロノロと部屋から出ていったので布団を片付けた。

 そして、リビングに戻り、3人で朝食を食べる。


「メアリー、お前らの準備は大丈夫だろうな?」

「うん。何度も話し合ったし、ギルドや先輩冒険者に聞いて準備をしたからだいじょぶー」

「心配ねー……」


 ホントにな。


 俺達は朝食を食べると、最後の準備をする。

 そして、家を出て、ラシェルと共に表に回った。


「ラシェル、頑張ってねー……ポニテを食べるなー!」


 メアリーとラシェルがじゃれているとカトリーナとシャーリーがやってくる。


「おはようございます」

「おはようございます。今日からよろしくお願いします……」

「おはよう。早速だが、出発するぞ。乗ってくれ」


 そう言うと、メアリーと共にカトリーナとシャーリーが馬車の荷台に乗り込んだ。


「アンジェラは?」

「御者台」


 一緒に乗るわけね。


 俺とアンジェラは御者台に並んで腰かけた。


「出発するぞー。忘れものはないか?」


 後ろの3人に声をかける。


「大丈夫ー」

「何度も確認しました」

「行きましょう」


 3人が頷いたのでアンジェラと顔を見合わせ、頷き合った。


「ラシェル、頼む」


 そう言うと、ラシェルがゆっくりと歩き出す。


「エリックー、馬車の操縦は誰がやんの?」


 メアリーが聞いてくる。


「今日は俺がやるが、明日からはお前らがやれ」


 俺は夜、寝ずに見張りをする予定。

 まあ、昼間も何かあっても対応できるように熟睡はしない。


「私、馬車を動かしたことないよー?」

「あ、私もないです」

「私も……」

「私もないわね」


 全員ないらしい。

 まあ、普通はない。


「ラシェルは賢いから大丈夫だ。進めって言ったら勝手に進むし、止まれって言ったら止まる。任せればいい」


 そもそも俺自身も馬車を操縦した経験はほぼない。


「そっかー。さすがはラシェルだね」

「そうそう。実際、俺もほぼお任せだ」


 馬車はゆっくりと進んでいき、中央の広場にやってきた。

 時間が時間なため、町の人の姿がかなり少ない。


「ラシェル、北門な」


 そう言って右の方を指差すと、ラシェルが方向を変え、北の通りに向かう。


「賢い馬ね……明らかに言語を理解しているじゃないの」

「すごいだろ。実はメアリーなんかラシェル以外に乗馬できないぞ」

「この子が特別なわけか」


 ラシェルがパカパカと進んでいき、北門までやってきた。


「さて、町を出るぞ。昼に休憩するが、その時は森だと思う。警戒は怠るなよ」


 後ろの3人に声をかける。


「はーい」

「わかりました」

「了解です」


 3人が頷いたので門を抜け、町を出た。

 前方には荒野が広がっており、遠くに森が見えている。


「揺れるわね……」


 町の外に出ると、町の中よりも振動が強くなった。


「街道も町ほど道が整備されていないからな」

「これ、お尻が痛くなりそう」

「それは我慢してくれ」

「私の柔らかお尻が……」


 慣れてないだろうしな。

 カトリーナもシャーリーも辛いかもしれん。


「ふっふっふ」


 なんか後ろの方で不敵な笑い声が聞こえる。

 後ろを振り向かなくてもメアリーがドヤ顔を浮かべているのがわかる。


「どうしたの?」


 アンジェラが振り向き、メアリーに聞く。


「ようやくこの1週間で作った私の大発明がお披露目される時が来たようだね!」


 そういやずっとなんか作ってたな。


「なんか座布団を作ってたわね」

「そそ。じゃーん!」


 メアリーが空間魔法から座布団を取り出した。


「痔か?」

「娘に嫌われる父親の発言第22位」


 すまんな。


「1位は?」


 というか、全部教えてくれると助かる。


「2位がおっぱい大きくなったな」


 そりゃ嫌われるわ。

 ってか、なんで2位?


「言うことないから安心しろ」


 メアリーはなぁ……


「それが1位」


 なるほど……


「それで、それは何だ?」

「馬車が辛いのは先輩冒険者から聞いてわかっていた。なので、天才メアリーちゃんはそれを緩和する座布団を作ったのだ。お尻が弱いアンジェラちゃん、使ってみて」


 メアリーがアンジェラに座布団を渡した。


「嫌な言い方……んー? ぷにぷにしてるわね」


 アンジェラが座布団を変形させるが、すぐに元の形に戻る。


「スライムゼリーが入ってる」


 スライムゼリーはスライムの体液を加工し、ジェル状にしたものだ。

 緩衝材に使われる。


「へー……」


 アンジェラが座布団を敷き、お尻を乗せた。


「どう? どう?」

「悪くないわね。かなりマシになった」


 へー……


「でしょ? やっぱり私って天才なんだな。あ、皆の分も作ったから」


 メアリーがそう言って、空間魔法から座布団を4枚取り出し、皆に渡す。

 俺も受け取ると、尻に敷く。

 すると、明らかに尻に来るダメージが減った。


「おー……メアリーちゃん、天才だね」

「すごいな、メアリー……」


 カトリーナとシャーリーも良いらしい。


「でしょー? エリック、店で売っていいよ」


 売れるかもな……

 とはいえ、ウチの町で馬車を使う人間が何人いるか……

 軍か寄合馬車の店、もしくは、王都に買い付けに行くジェフ爺さんのところのキースくらいしか思い浮かばない。


「メアリー、これについてはランドルさんに相談していいか? 良いものだと思うが、ウチの店では数を捌けそうにない」

「いいよー。メアリー座布団と名付けよう」


 ホント、自分が大好きだな。


「多くの男が尻を乗せるんだぞ?」

「やっぱりお尻守るくんでいいや」


 キャッチーだとは思う。


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