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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第3章

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第096話 前日


 翌日からはメアリーが休みなため、3人で仕事をしつつ、この際なので片付けをしながら家の大掃除をしていく。

 水筒を求めていた客もかなり落ち着き、たまに他所からの人間が買いに来るものの、繫忙期は完全に過ぎていた。


 そんなこんなで日々が過ぎていくと、出発の前日となった。

 俺はラシェルを連れて、南にある軍の屯所にやってくる。


「大人しく待ってろよー」


 ラシェルを外に残すと、中に入った。


「アーヴィン」


 受付にいるアーヴィンに声をかける。


「お、来たか」

「よう。馬車を貸してくれ」

「わかってるよ。明日、出発か?」

「ああ。2、3週間はいるつもりだ」


 どれくらいいるかは決まってなかったりする。

 まあ、帰って家がまだ改修中だったとしても宿に泊まればいい。


「観光だな。まあ、お守りもご苦労さんだ」

「あいつらはちゃんとしているからそこまでだけどな」


 単独行動を避け、3人で行動していれば大丈夫だろう。

 そこに関してはアンジェラが強く言ってある。


「じゃあ、観光だ。ローレンスと隊長に会えたらよろしく言っておいてくれ」

「わかった」

「じゃあ、馬車な」

「頼むわ」


 アーヴィンがこちらに回ってくる。

 そして、一緒に屯所を出た。


「おー……いたのか。たまに牧場で走っているのを見るが、近くで見ると本当にでかいな」


 アーヴィンが入口そばにいたラシェルを見て、びっくりする。


「すごかろう?」

「一般人の家にいていい馬じゃねーよ」


 アーヴィンがそう言って笑い、左の方に歩いていくと、屯所の裏に回る。

 すると、そこには馬車があった。

 新品ではないが、結構頑丈そうな輸送用の軍の馬車だ。


「これを貸してくれんのか?」

「使ってないからな」


 まあ、輸送することがないか。


「軍の馬車で王都に入っていいもんか?」

「普通に借りたって言えばいい。問い合わせが来てもこっちで答えておく」

「メンテナンスはしてるか?」

「してる。まあ、もし、壊れたとしても直せよ。お前ならできるだろ」


 できるけども……


「じゃあ、借りるわ」

「ああ。気を付けてな」


 ラシェルに馬車の器具を取り付けていく。


「よーしよし。良い子だぞー」

「全然、暴れないよな、大人しい馬だ」

「盗賊は踏み殺していたぞ」

「軍馬だな」


 多分、そう。


「よーし。ラシェル、ちょっとだけ動いてみろ」


 そう言うと、ラシェルが動き、馬車が進みだす。

 そして、数歩歩くと、止まった。


「大丈夫そうだな」

「すんげー賢い馬だな」

「メアリーより賢いと評判だ」

「何も言えねー」


 アーヴィンが苦笑いを浮かべる。


「よし、じゃあ、王都に行ってくるわ。もし、何かあったらお前と神父さんを頼れってギルドに言ってあるからな」

「お前、何気に俺達をダークヒーローの道に連れ込むよな」


 ノリノリだったくせに。


「いいから頼むぞ」

「そりゃ俺は軍属だからやるさ。お前も気を付けろよ。この前も盗賊が出たし、王都は悪い奴も多いからな」

「わかってるよ。人様の娘さんを預かるわけだからちゃんとやる」

「そういや女の子ばっかりのキャピキャピ旅だな」


 キャピキャピ旅……すげーおっさん臭がする響きだ。


「アンジェラはともかく、娘とその友達の引率だよ」

「まあな。頑張れ」

「ああ」


 ラシェルを連れ、町を歩いていく。


「馬車を引くのは久しぶりだが、大丈夫か?」


 そう聞くと、ラシェルが鼻で笑ったような気がした。


「こいつ、休まずに進みそうだな……」


 牧場でもずっと走っているし、馬力が他の馬とは根本的に違う気がする。

 その分、めっちゃ食うけど。


 馬車を引くラシェルと共に家まで戻ると、店の前にアンジェラとメアリー、それにカトリーナとシャーリーが荷物を持って待っていた。


「おっ、帰ってきた」

「おかえり」

「こんにちはー」

「こんにちは……」

「はい、こんにちは」


 カトリーナとシャーリーに挨拶を返すと、馬車を正面の庭の方に止める。


「良い馬車ね」


 アンジェラが馬車を眺める。


「軍の輸送用だ。これで問題なく行けるだろう」

「じゃあ、荷物を積んでしまいましょうか」


 明日は朝早くの出発となるため、前日に積めるものは積めようということになったのだ。


「貴重品は明日にしろよー」


 皆が荷物を馬車に積んでいくのを眺めながら注意する。

 そして、皆が積み終えたので最後に自分の荷物を積んだ。


「エリックさん、明日は何時に出発ですか?」


 カトリーナが聞いてくる。


「門が開く夜明けには出るから6時だな。だから6時前にはウチに来てくれ」

「わかりました」

「早いですね……」


 シャーリーがつぶやくと、皆が一斉にメアリーを見る。


「お、起きるよぅ……というか、カトリーナとシャーリーは大丈夫?」

「私はいつも早起きだから。教会の仕事があるもん」

「私も店の仕事がある」


 カトリーナとシャーリーは立派だ。


「起こしてあげるわよ。眠かったら馬車の中で寝なさい」

「もうまったく家に帰ってなくて、完全に嫁いできたアンジェラちゃん、ありがとー」


 一言、二言多いんだよ。


「カトリーナ、シャーリー、今日は早めに寝ろよ。それと親御さんによろしく言っておいてくれ」

「はい」

「わかりました。明日からよろしくお願いします」


 2人は頷くと帰っていった。


「よし、最後の片付けをしてしまうか」

「おー」

「やりますか」


 俺達はラシェルを小屋に戻すと、家の片付けをする。

 そして、夕食を食べ、順番に風呂に入ると、この日は早めに就寝した。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
「何も言えねー」:訳、たいしたこと無いな〜……(笑)
ハーレムパーティーだけど、そう言ってからかうとアンジェラに折檻されるんだろうな〜
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