第085話 脱いでもいいかな?
仕事をしていくと、15時になったのでアンジェラとクッキーを食べながらお茶をする。
「そろそろ出るか……」
コーヒーを飲み終えた時には15時半だった。
早ければメアリーが帰ってくる時間だ。
「何をするのかは知らないけど、気を付けてね」
「ああ。大丈夫だ。改修のことと商業ギルドのことをメアリーに話しておいてくれ」
「そうね。その辺の話もしておくわ」
「頼む」
最後にクッキーを一枚食べると、立ち上がる。
そして、腕輪のスイッチを押すと、和やかなティータイムにフルフェイス・マスクマンが現れる。
「漆黒の使者……」
「それ、毎回やんの?」
やはり姿見の鏡にはかっこいい漆黒の使者と呆れているちょー良い女が映っている。
「別にいいだろ。じゃあ、行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
アンジェラに見送られ、家を出ると、領主の屋敷に向かう。
領主の屋敷は北区にあるので中央の広場に出る必要がある。
そのため、かなりの人に見られたが、これは仕方がないのでさっさと歩いていった。
そして、領主の屋敷の近くまで行くと、かなりの数の兵士が屋敷の周りを歩いているのが見えた。
とはいえ、元暗部の俺から見たらかなり隙があるように見える。
「平和な町の兵士か……」
仕方がないことだと思いつつ、門に向かう。
すると、俺に気付いた兵士の空気が明らかに変わった。
持っている槍や剣を向けてくることはないが、かなりの緊張感が走っている。
「失礼。アーヴィン殿はいらっしゃるかな? 依頼を受けてきたフルフェイス・マスクマンだ」
名乗ってもまだ緊張は解けない。
まあ、これも仕方がないことだ。
誰がどう見ても怪しいし。
「話は聞いております。少々、お待ちいただけますかな?」
「ああ。お勤めご苦労」
兵士は屋敷に入っていったのでその場で待つ。
すると、すぐに兵士がアーヴィンを連れて戻ってきた。
「来たか。いや、本当に怪しいな」
アーヴィンが笑う。
すると、兵士達の緊張が和らいだ。
さすがはアーヴィンだ。
「怪しい? これはかっこいいと言うんだ。いつかフルフェイス・マスクマン変身セットが売り出されるから見ていろ」
スピアリング商会が売り出してくれるはずだ。
「そんなのが流行ったら世も末だ」
「闇の三人衆の一人のくせに」
「それやめろ。いいから来い。お前は目立ちすぎる」
目立つのは確かなので素直にアーヴィンについていく。
そして、屋敷に入ったのだが、ちょっと拍子抜けした。
領主は貴族だし、さぞ豪華な生活を送っているのだろうと思っていたのだが、屋敷の中は何と言うか古い。
もちろん、掃除はしてあるし、綺麗なのだが、調度品が飾られているわけでもないし、煌びやかさがない。
「ここが領主の屋敷なんだよな?」
「そうだ。お前は知らないだろうが、築100年を超える伝統ある家だ」
すごいな……
「税金で遊んだりは?」
「しない。地味だが、堅実な仕事をする人だ」
へー……
まあ、アーヴィンですら地味って思ってるんだな。
「その領主と会うのか?」
「いや、会わない。領主様もお前のことを把握はされているが、この状況では会えないそうだ。もっとも、周りが止めたんだがな」
まあ、止めるか。
「それでいい。話すこともないしな」
「ああ。こっちだ」
アーヴィンが正面にある階段を上っていったのでついていく。
そして、2階に上がると、左の方に行き、奥にある扉の前までやってきた。
「ここか?」
「ああ。領主の息子の部屋だ。今は誰もいないから入ってくれ」
そう言われたので扉を開け、中に入る。
部屋の中は豪華な天蓋付きのベッドがあったし、絵画や調度品が並んでいる豪華な部屋だった。
「これこれ」
貴族の部屋だ。
「これも別に贅沢をしているわけではないぞ。領主の息子は芸術に優れた方でこういうのが趣味なだけだ。実際、自分で稼いだ金で買われている」
自分で稼ぐ、ね。
「領主の息子は何を?」
「それは秘密だ」
「冒険者だろ」
「お前ら、似たもの夫婦だな」
アーヴィンが苦笑いを浮かべる。
「これ以上は聞かん」
「そうだ」
やっぱりね。
身分を隠して冒険者をやっているんだ。
もしかしたら俺も面識があるかもしれない。
「ここで待機していればいいのか?」
「ああ。襲撃者は夜に来るだろう。それまで待っていてくれ。もちろん、食事も用意する」
「お前は?」
「俺は正門で待機している」
そう言われて窓から外を見ると、ここは正門とは真逆にある部屋だった。
「わかった。後は私に任せておけ」
「頼むぞ」
アーヴィンがそう言って、部屋から出ていったので絵画を見る。
絵はどこかで見たことがある絵だなと思ったが、すぐに西の川にかかっている橋だということに気が付いた。
「作者は……フィリップ・フォン・グレイディ……」
グレイディはこの町の領主の姓だ。
ということはこの絵は領主か息子が描いた絵……
いや、息子だな。
「ふーん……まあ、黙っておいてやろう」
何となく察したので絵を見るのをやめ、布団に腰かける。
「暇だな」
まだ16時だ。
どれくらい待つんだろうか?
でも、多分、今日来ると思う。
「武器の確認でもするか……」
暇なので武器のメンテナンスをしながら時間が過ぎるのを待つことにした。
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