第084話 闇の仕事
店に戻ると、受付でアンジェラと話しているアーヴィンがいた。
「ただいま」
「おかえりー。義足の調整でアーヴィンさんが来てるわよ」
「ああ。アーヴィン、ちょっと待ってくれ」
「んー? ああ」
アーヴィンが頷いたので受付の中に入った。
「アンジェラ、ブロックの店と商業ギルドに行ってきた」
先に結果を報告する。
「何て?」
「ブロックは3週間後で良いそうだ。ギルドも了承してくれて、役所に回覧を頼んでくれるってよ」
「それは良かったわね。じゃあ、決まり?」
「ああ。ウチは通知文を書いて、外にでも張っておけばいいって」
ウチは楽なもんだ。
「了解。じゃあ、それを書いてしまうわ」
「あ、ちょっと待って。その前に注文を受けていたコンロを渡してきてくれないか?」
「あ、それもそうね。じゃあ、行ってくるわ」
アンジェラは作ったコンロを空間魔法に収納し、店を出ていった。
「待たせたな。こっちに回ってくれ」
アーヴィンが座る椅子を用意し、手招きをする。
「ああ。それよりも何かあったのか?」
アーヴィンが椅子に座りながら聞いてくる。
「ウチを改修するんだよ。それでその間に家に住めないから王都に行くんだ」
「お前も王都に行くのか……」
お前もというのはもちろん、ローレンスのことだ。
「俺のは旅行みたいなもんだ。メアリー達は随分前から行く予定だったし、俺もスピアリング商会との付き合いがあって、顔を出すことになったんだ」
「ふーん、なるほどね。いつからだ?」
「3週間後」
「そうかい。土産はいらんぞ」
そうは言うが、アンジェラが買うだろうな。
アンジェラはケリーさんと仲が良いし。
「アーヴィン、それよりも仕事の話だ」
アンジェラが帰ってくる前に済ましたい。
「想像がついていると思うが、領主の息子が襲われた件だ」
もちろん、想像はついていた。
タイミング的にそれしかない。
「護衛か? 逮捕か?」
「一応、逮捕で頼む」
一応ね。
「内容を話してくれ」
なんで俺に頼むのかは聞かない。
「領主の息子は屋敷で襲われた。その時はすぐに大声を出し、警備の者が駆けつけたから問題なかったが、これで終わりとは思えない」
「領主の息子は襲撃犯の顔を見たのか?」
「黒装束だったうえに顔を布で隠していたらしい。ただ、男だそうだ」
忍びっぽいな。
「動機は?」
「不明」
まあ、わからんわな。
「領主の息子はどうしてる?」
「あれからビビってしまって、外に出られない様子だ。領主から早急に逮捕するように命令が来てる」
「その領主の息子を守ればいいのか?」
「護衛は別の者だ。お前に頼みたいのは囮だな。簡単に言えば、領主の息子の部屋で寝ててくれ」
なるほどね。
「来るのか?」
「来る。それも近いうちだ」
俺もそう思う。
「わかった。確認だが、フルフェイス・マスクマンでいいよな?」
「ああ。それで了承をもらった」
「よくもらえたな」
フルフェイス・マスクマンが一番怪しいぞ。
「大佐の推薦というか、一声だ。頼んだんだよ」
「なるほどね。今夜、お前と飲みに行くということにする」
「頼むわ。俺では厳しい」
この足ではな。
「わかっている。漆黒の使者フルフェイス・マスクマンに任せておけ」
やはりフルフェイス・マスクマンは引退できないか。
メアリーが立派になっても悪がこの世にはびこっているのだ。
ふっ、かっこいい……
「何、にやにやしてんだ?」
「うっせー。それよりも俺のところに警備はいらんからな。部屋の外に配置して、何があっても中に入るなって言ってくれ」
「わかった」
話を終えたのでアーヴィンの義足の調整をしていく。
すると、1時間くらいでアンジェラが帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえり。アンジェラ、今日はアーヴィンと飲むことになった」
最近、飲みばっかりですまん。
「本当は?」
「闇の使者、フルフェイス・マスクマンが暗躍する」
「あっ、そう。メアリーとカードゲームでもしてるわ」
アンジェラ、本当にフルフェイス・マスクマンのことが好きじゃないな。
「アンジェラちゃん、よく飲みじゃないってわかるね?」
アーヴィンが感心する。
「何年、エリックと付き合ってると思っているの? 私を不自然に追い出した時点で何かするんだろうなって思ったわよ」
俺も勘づいただろうなと思ったから秒で答えた。
「へー……エリック、浮気はできんぞ」
「しねーよ。俺はお前と違う」
「いや、俺もしてねーから。っぽいこと言うんじゃねーよ」
お前が言ってきたんだよ。
「ほら、足の調整は終わりだ。問題ないだろう」
「ありがとよ。何時に来る?」
「メアリーが帰ってくる前に出たいから16時より前には行く」
「わかった。領主の屋敷にいるから声をかけてくれ」
アーヴィンはそう言って、立ち上がると、店を出ていった。
「何? 例の件?」
「そうだな……ちょっと頼まれた」
「ふーん……まあいいわ。通知文を書いてしまうわね」
アンジェラはそれだけ言うと、受付で通知文を書き始めた。
「聞いてこないのか?」
「ちょー良い女は察することができるし、男のやることに口を出さないの。後で話してくれればいいわ」
ホント、ちょー良い女だな。
「俺、30年生きてるけど、お前より良い女を知らんな」
「何言ってんの? 当たり前でしょ」
うーん……言い切るのがすごい。
「アンちゃん、お茶飲む?」
「お茶は私が淹れる。エリックはコンロを作ってよ」
「そうだな。ありがとうよ。お前がいてくれて助かるわ」
「クッキーも焼いてあげるわよ」
どうも。
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