第083話 商業ギルド
翌日、この日もメアリーが元気に冒険に行ったので店の開店準備をし、9時前にはオープンさせる。
「アンジェラ、俺はブロックのところと商業ギルドに行ってくるから店番を頼む」
「りょ。コンロを作ってるわ」
「頼む」
店をアンジェラに任せ、ブロックのところに向かう。
町は昨日ほど人が多くなく、ざわつきも落ち着いたように見えた。
喧騒が治まるのがかなり早いが、領主の息子が襲われたという情報しかわからないし、その領主の息子も『誰?』って感じだから仕方がない。
町の様子を窺いながら歩いていくと、ブロックの店にやってきた。
「ブロックー、いるかー?」
「お、エリックじゃねーか。どうした? 修繕の日程が決まったか?」
「まさしくだ。3週間後から頼みたい」
「3週間後ね……」
ブロックがメモ帳を見始める。
「いけるか?」
「ああ。いける。屋根の修理と物置きの改築で良いな?」
「それで頼む」
「あいよ。前にも言ったが、屋根の修理中は家に入らないでくれよ。崩れないようにするが、万が一っていうことはあるからな」
片付けもしておかないとな。
「わかってる。王都に行くことにした」
「なるほどな。じゃあ、その間にやっておこう」
「頼むわ。料金は見積もり通りでいい」
「了解」
ブロックに頼むと、今度は商業ギルドに向かう。
ブロックの店は俺達と同じ東区だが、町の中央付近にある。
そして、商業ギルドは町の中央にあるからすぐに到着した。
ギルドの中は冒険者ギルドと同じように受付があるが、たむろするようなテーブルはなく、ベンチがある程度であり、何人かの商人が座って待っている。
「やあ、エリックじゃないか」
受付にいる恰幅の良いおっさんが声をかけてくる。
商業ギルドのギルマスであるニールだ。
「よう、ニール。調子はどうだ?」
「普通としか言えないな。そっちは儲かってそうで何より」
当然、水筒のことは耳に入ってるだろう。
「俺の才能が開花したんだ」
「はいはい。それで今日はどうしたんだ? まさかスピアリング商会と揉めたとか言わないよな? 庇えんぞ」
庇えよ。
「そんなんじゃない。ちょっと相談があってな」
「そりゃウチは商業ギルドだから相談には乗るよ。でも、珍しいな。エリックの店は儲かってるし、経営難による相談じゃないだろ?」
正直、俺はあまりここを利用しない。
というのも商業ギルドは何かのトラブルがあった場合に利用するケースが多いのだ。
例えば、店の経営難、後継者問題、事業を広げる際の資金の相談なんかが主となる。
俺はどれも関係ない。
「実はウチを改修することになってな」
「ん? 去年辺りにやらなかったか? あ、いや、家の方か」
そうそう。
「ああ。前から考えていたことなんだが、良いタイミングなんでやってしまおうってなったんだ」
「水筒を当てて、儲かったしな。あとようやくかー」
ん?
「ようやくって?」
「アンジェラちゃん」
家の改築と言うと、皆、それを言う。
まあ、合ってはいるんだけど。
「皆、アンジェラが好きだな」
「嫉妬が半分、もう半分はまだ結婚してないのかって感じだろ。会合に一度、連れてきてたろ? 『上手くやりやがって、あの野郎』って言ってたのが何人かいたぞ」
そいつら、独身だな。
「そうかい。とにかく、そういうわけで2、3週間ほど家を出ないといけなくなったんだ。それで娘のメアリーが王都に行くって言うし、俺もスピアリング商会に挨拶がてら行こうと思っているんだ」
「王都にねぇ……アンジェラちゃんもか?」
「そうなるな」
連れていかない選択肢はない。
「新婚旅行みたいなもんか」
「微妙だぞ。メアリーとパーティーを組んでいる教会のカトリーナと肉屋のバリーのところのシャーリーも一緒に行くことになる」
新婚旅行感はゼロ。
「何だ、お守りか……ということはその2、3週間は店を閉めるってことか?」
「ああ。相談はそれだ。この町に魔道具屋はウチしかないし、町の人が困るだろ? だから事前に通知しておきたいんだ」
こういうのはかなり大事なのだ。
「なるほどな……役所に頼んで回覧を頼んでおこう。それとエリックは店の表にでもその通知を張っておくといい。家の改修じゃ仕方がないし、皆、納得してくれる」
「わかった。役所の方は頼む」
「ああ。それが仕事だ。それよりもスピアリング商会は大丈夫か?」
スピアリング商会か……
「そこは問題ないと思う。商会長さんはさすがのやり手だなと思うが、こっちにもちゃんとメリットはあるんだ」
「じゃあ、いいけどよ……王都に行って、帰ってきませんとかやめろよ」
引き抜きを心配しているのか。
特に俺はこの町の出身じゃないからな。
そういう人間は出やすいのだ。
俺はこの町に早く馴染めたと思う。
それは小さいメアリーがいたこともあるが、やはり魔道具屋を営んだからだ。
この町に魔道具屋がなかったから競合相手もいないし、町民からはありがたがられた。
もちろん、アンジェラのおかげでもある。
「大丈夫だよ。俺はこの町から出る気がない。それはアンジェラもだ」
「そうか。ならいい。多分、皆がアンジェラちゃんとさっさとくっつけって思ってるのはそういうこともあるからだと思うぞ」
そうなのか……
俺はこの町に来てから一度たりとも町を出ようとは思ったことがないんだがな。
まあ、そんなのは伝わらんか。
「俺はこの町に来て良かったと思ってるぞ」
「それは良かったよ。まあ、これからも頑張ってくれ」
「ああ」
用件が済んだのでギルドをあとにすると、家に戻った。
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