第080話 飲んだ後の長風呂はやめましょう
俺達は遅い時間まで飲んでいったが、ローレンスが限界の一歩手前にまで来たので解散することにした。
「ローレンスー、大丈夫か?」
アーヴィン宅を出ると、壁に手をついたローレンスに声をかける。
「大丈夫だよ。最後のワインがちょっと効いただけだ」
「そうかい。送っていくぞ」
「大丈夫だ……アーヴィン、ケリーさん、今日はありがとう。ここ10年で一番の酒だった」
ローレンスが2人に礼を言う。
「オーバーな奴だな」
「また来てくださいね」
2人はやはり明るく返した。
「事実だよ。じゃあ、またな」
ローレンスはちょっと千鳥足だったが、帰っていく。
「大丈夫かね?」
「あいつなら大丈夫だろ。それよりもエリック、ちょっといいか?」
ん?
「もう飲めないぞ」
「そうじゃない。ちょっと歩こう」
アーヴィンがそう言うと、歩き出した。
「じゃあ、ケリーさん、また」
「アンジェラちゃんによろしく」
「ああ」
ケリーさんが奥に引っ込んでいったのでアーヴィンのあとを追う。
「何だよ? 俺も見送りはいらんぞ」
アーヴィンやローレンスほど飲んではいない。
「実はお前に仕事を頼むかもしれん」
「魔道具か?」
「いや、違う」
魔道具屋に魔道具じゃない仕事か。
「神父様は?」
「あの人はない。できたらお前1人でやってほしい」
なるほどね……
「内容は?」
「ちょっと色々と手を回さないといけない。詳細は後日だ。また、お前のところに行くからその時にでも」
手を回すか……
「フルフェイス・マスクマンでもいいか?」
「…………そっちが良いかもしれんな」
「なるべく早くしろよ」
「数日以内に行く」
そりゃそうだわな。
「わかった」
「頼む。それと今日はありがとう」
「招いてもらったこっちのセリフだな。この前のお返しでお前らのことを根掘り葉掘り聞けた」
まさかアーヴィンがケリーさんと付き合う時に花束を持って告白したとは……
ケリーさんは嬉しかったらしいけど、俺とローレンスは笑った。
「それはやめてほしいな」
「俺もこの前、そう思った」
「お前はほとんどしゃべってないだろ」
普通、しゃべんねーよ。
しゃべるのは女の方だ。
「アーヴィン、ローレンスに良い人を紹介してやれよ。そしたらそのままここに住むかもしれんぞ」
あいつはそういう奴。
「それもありだな」
アーヴィンが笑う。
「じゃあ、ここでいい。またウチに来てくれ。そろそろお前の足の調整もしたい」
「そうだな。頼むわ。じゃあ、また」
「ああ」
中央の広場の手前くらいでアーヴィンと別れると、家に帰る。
すると、やはり灯りはついていたし、アンジェラはもちろん、メアリーも起きており、2人で話をしていた。
「あ、おかえり」
「おかえりんこー」
「ただいま。まだ起きてんだな」
すでに22時を回っているし、メアリーはいつもなら寝ている時間だ。
「お話ー。女の園だからエリックはお風呂に入ってきなさーい」
「はいはい」
そう言いつつ、キッチンに行き、水を飲む。
「メアリー、明日は仕事か?」
「そだよー。森に行くー。魔物退治だね」
いつものやつか。
「カトリーナとシャーリーに王都のことを相談してこいよ」
「わかってるー。あ、それとね、今日、アンジェラちゃんが帰ってくる前にランドルさんが来たよ」
え?
「ランドルさん? スピアリング商会の商会長さんか?」
「そそ、この前のおじさん。留守って伝えたら明日また来るってさ」
マジか。
「内容は聞いているか?」
「商売の相談かな? まあ、こっち方面に用があって、寄っただけっぽいよ。明日、話をしたらまた発つんだって」
タイミングが悪いな。
いや、明日来るならまだいいか。
「わかった。明日は店にいるし、会って話すわ」
「はいはーい。他にも注文とかあったけど、それはアンジェラちゃんに伝えたから聞いといてー」
「ああ。今日はありがとうな」
そう言って、メアリーの頭に手を置くと、風呂に入る。
そして、風呂から上がると、リビングにはアンジェラしかいなかった。
「メアリーは?」
「さすがに寝かせた。明日も早いしね」
「今日は悪かったな」
「私が言いだしたことよ。それにメアリーとはちゃんと話をしないといけなかったからちょうどいいわ」
話か……
「話は以前もしてただろ」
「真面目にとか、真剣にっていう言葉がつくわ」
そうかい。
「何か言ってたか?」
「にやにやしながら色々聞かれたわね。それとやっぱり家を出ていった方が良いかって聞かれた。冒険者も儲かるし、別にそれでも大丈夫だからって」
いや、出ていくなっての。
そういう約束で冒険者になることを許可したってのに。
「何て答えた?」
「ここにいなさいって答えた。むしろ出ていったらダメって」
「ちゃんと頷いたか?」
「それはね。後はもう根掘り葉掘りね。きゃっきゃにやにやって感じ。こういう話題が好きな子だし」
それで遅くまで起きてたわけね。
「お疲れ」
「別にいいわよ。堂々と言ってやったわ」
いや、それはそれでどうなんだろう?
でも、アンジェラはそういう女だ。
「ケリーさんにも言ったんだってな?」
「道ですれ違った時にね。あ、そっちはどうだったの? あの領主様の息子さんが襲われたってやつ」
アンジェラも気になるわな。
「アーヴィンに聞いたが、息子は無事らしいし、町の警備が増えるくらいだってさ」
「なら安心ね」
「ああ。俺達も寝ようか。明日はランドルさんが来る」
多分、午前中に来るだろう。
「そうね。また良い話だといいけど」
「そうだな」
俺達は寝ることにし、この日を終えた。
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