第008話 旧友
目覚ましの音で目を覚まし、時計を見ると、朝の6時だった。
「眠っ……」
いつもより早く起きたのでかなり眠かったが、それでもなんとか起き、寝室を出ると、朝食の準備をする。
ある程度できあがると、メアリーの部屋に入る。
すると、かけ布団を蹴り飛ばし、腹を出した状態で間抜け面を晒しているメアリーがベッドで寝ていた。
これがかつての貴族令嬢の姿だ。
「メアリー、起きろ。朝だぞ」
「まだ夜だよー……むにゃむにゃ」
リアルにむにゃむにゃ言う奴はこいつだけだ。
「お前が起こせって言ったんだろ。カトリーナに迷惑をかけるな」
今日も冒険者の仕事をするらしいが、その前にカトリーナのところで作戦会議をするらしい。
「カトリーナも寝てるよー」
「教会の子は起きてるわ。いいから起きて、朝飯を食え」
そう言うと、メアリーがのろのろと起き上がったので部屋を出て、朝食の準備に戻る。
すると、メアリーが目をこすりながら出てきた。
「おはよー……」
「おはよう。顔を洗ってこい。それとラシェルに水と餌」
「わかってるよぅ……」
メアリーは洗面所に行き、顔を洗うと、裏庭に行き、ラシェルの世話をする。
そんなメアリーをキッチンから見ていると、本当に大きくなったんだなって思う。
まあ、同世代の子と比べたら小さい方だけど。
その後、2人で朝食を食べると、店の方に行き、開店準備をする。
「いえーい、エリックー、見て、見て。可愛くなーい?」
着替え終えたメアリーが住居スペースから出てきて、昨日とまったく同じポーズを決める。
「可愛い、可愛い。それよりも剣を見せろ」
「ほい」
メアリーがショートソードを抜いて、渡してきたのでチェックする。
「ふーん……」
「ちゃんと言われた通り、メンテはしたよー」
そのようだな……
「いいか? 武器は己の命を預けるものだからな。いくら魔法があるとはいえ、気を付けろ」
「わかってるってー。耳タコー」
ところどころでアンジェラの影響を受けて、ギャルっぽいんだよな、こいつ……
もう貴族令嬢の面影がまるでない。
「そうか。じゃあ、行ってこい。遅くなるなよ」
「わかってる。というか、カトリーナの門限が18時だから」
教会はうるせーからな。
「気を付けて行ってこい」
「よっしゃー。伝説は終わらないぜー」
アホがテンション高めに出ていった。
そして、店の掃除なんかをしていると、アンジェラがやってくる。
「てんちょー、おはー。今日も店長自慢の看板娘が来たよー」
「おはよう。布巾で窓とカウンターを拭いてくれ」
「りょ。それにしてもさっき、朝から全速力で走るお宅の娘さんとすれ違ったよ」
ウチのバカね。
「楽しいんだろうよ」
「元気だねー。ワインは飲んだ?」
「飲んでない。飲むタイミングがわからない」
あいつを嫁に出す時だろうか?
「早めに飲んだ方が良いよ。せっかく買ったワインを飲んでないって知ったら『いらなかったのかな?』って思うし」
そんなものかねー?
「結構重いプレゼントだぞ」
「そう思ってるのはもらう側だけでしょ。メアリーはそこまで考えてないと思う」
「お前は親に何かあげたか?」
「この店の初任給で食材を買って、晩御飯を作った」
へー……良いな。
「親御さんはどうだった?」
「パパのトマト嫌いが治った」
そりゃ良かったな。
俺もピーマン嫌いが治る気がするわ。
その後、掃除を終えると、店を開き、仕事をしていく。
すると、店の扉が開き、客がやってきた。
「邪魔するぞ」
「ん? アーヴィンか」
客は短い金髪の優男であり、軍服を着ている。
軍部で指導員をしている旧友のアーヴィンだ。
「よう、エリック、景気はどうだ?」
アーヴィンが歩いて、カウンターにやってくる。
その動きはどこかぎこちない。
「普通だ」
「つまんねぇー返答だな。アンジェラちゃん、元気?」
アーヴィンがアンジェラにも声をかける。
「超元気ー」
「アンジェラちゃんは可愛いねー。それに大きくなった」
どこ見てんだ、こいつ?
「知ってるー。あとセクハラー。軍と奥さんに訴えるぞ、こら」
「ははっ、冗談だよ。今日も甲斐甲斐しく頑張ってるね。エリックとはいつ結婚するの?」
「エリックが子離れしたら」
「………………」
黙るなや。
言いたいことがあるなら言え。
「アーヴィン、何の用だ?」
「あー、悪い、悪い。調整を頼む」
「あいよ。こっちに回れ」
アーヴィンが受付内に入ってくる。
「アーヴィンさん、どうぞ」
アンジェラが椅子を2つ置く。
「悪いね。よっこらせ。いやー、冬も終わって暖かくなってきたな。こんな時は酒でも飲みたいわ」
アーヴィンは椅子に座ると、両足をもう1つの椅子に乗せた。
ぱっと見は行儀が悪いが、仕方がないことなのだ。
「毎年、同じこと言ってるな」
冬になったら『めっきり寒くなってきたな。こんな時は酒でも飲みたいわ』だ。
「そんなもんだ」
アーヴィンはズボンのすそを捲くった。
すると、人の足ではない機械の足が見える。
アーヴィンは元同僚である。
戦争中に一緒に戦った黒影団の仲間であり、共に生き残った戦友だ。
しかし、アーヴィンは森の中にあった敵のトラップの地雷魔法で両足を欠損したのだ。
あれ以来、地元であるこのミルオンの町に帰っていた。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




