第078話 うんうん
ギルドにやってくると、まだ16時なため、悪ガキ共の姿はない。
ただし、ローレンスがおり、テーブルについていた。
「よう、帰ったか」
ローレンスが手を上げる。
「お前、何してんだ?」
「お前を待ってた」
俺を?
あー、伝言の件か。
「エリック、私は精算をしてくるわ」
アンジェラがそう言って、ヴィオラのもとに向かったのでローレンスが座っているテーブルについた。
「伝言は聞いたか?」
「ああ。飲みだろ?」
「それそれ。どうだ?」
どうせ暇だろ。
「それなんだけどよ、実は昨日、アーヴィンのところに行った際に家に誘われたんだよ。それで今日行くことになってるからお前も来い」
「いいのか?」
「行く時にお前を拾ってくるわって言ってある」
へー……
「じゃあ、ちょうどいいな」
「ああ。それで仕事を早めに終えて、ここで待ってたんだよ。ちなみに、朝、お前の店に行ったらメアリーちゃんが元気に店番してたぜ。『へい、らっしゃい!』だってよ」
八百屋か。
「ふーん……しかし、アーヴィンは大丈夫かね?」
「ん? 何がだ?」
「いや、町が騒がしくてな……それでこの前の飲み屋の大将に聞いたんだが、領主の息子が襲われたんだってさ」
「あー、それか。俺も聞いたな。確かにそんなことがあったら微妙かもしれんな。ちょっと行ってみるか?」
「そうだな」
無理ならローレンスとどっかに行くか。
「エリックー、終わったわよー」
アンジェラが戻ってくる。
「どうだった?」
「成果は良いわね。やっぱり冒険者は儲かる」
だろうな。
でも、アンジェラはウチにいてくれる。
ありがたいことだ。
「アンジェラ、俺達はアーヴィンのところに行ってくる。そのままアーヴィンの家に行くか、ダメならローレンスと飲みに行くと思う」
「うん。じゃあ、私は帰るわ。メアリーがいるかわかんないけどね」
ラシェルと牧場にいるかもしれないからな。
「すぐ帰ってくると思うぞ」
「そうね。あなた達もケリーさんに悪いからあまり遅くならないように」
アンジェラはそう言って、ギルドを出ていった。
「良い女だなー。見た目も良いし、しっかりしている……本当に結婚してないのか?」
アンジェラの後ろ姿を眺めていたローレンスが聞いてくる。
「うるせーな。近いうちするんだよ」
「そうかい。俺達も行くか」
「ああ」
俺達は立ち上がると、にやにやしているヴィオラを無視して、ギルドを出た。
そして、南にある屯所に向かう。
「確かに騒がしいな」
いつもより外に出ている人が多い。
それでいて、井戸端会議をしている人達が目立つ。
「領主の息子が襲われたなんてこの町では大事件だからな。というか、領主関係で話題になることなんてない」
「どういう領主なんだ?」
「知らん」
本当に姿を見せない。
「いや、何かあるだろ」
「本当に知らない。良い噂も悪い噂も聞かないな。まあ、存在感のない領主なら良い領主なんじゃないか?」
問題がないってことだし。
「ふーん……珍しい町だな。王都が近いからかもな」
それはあるだろうな。
問題を起こしたらすぐにバレるし。
俺達は南の牧場にやってくる。
いつもいる軍人の数が少ないように見えるし、メアリーとラシェルの姿もない。
「領主のところかね?」
「多分、そうだろう。アーヴィン、いねーかもな」
「行ってみよう」
俺達は奥にある屯所に向かうと、中に入る。
すると、屯所の中もいつもより人が少ないうえにアーヴィンの姿が見えない。
「いねーか……」
「ちょっと聞いてみる」
そう言って、若い女性兵士がいる受付に向かった。
「あ、エリックさん」
若い女性兵士がこちらに気付く。
「よう。アーヴィンはいるか?」
「アーヴィンさんは領主様に呼ばれて、そちらにいますね。実は伝言を預かっているんです。もし、御二人がここに来たら伝えてほしいと」
「何だ?」
「領主に呼ばれたからそっちに行っている。ただ、そのまま直帰するから先に家に行っておいてほしい、だそうです。奥様にもそのことは伝えるそうなので」
アーヴィンの家は北区にあり、ここから領主の屋敷に向かう道中にある。
「なるほどな。とはいえ……」
壁にかけられている時計を見る。
まだ16時過ぎだ。
「その辺も大丈夫だそうですよ。いつ終わるかわからないですけど、すぐだと思いますし、そのまま早上がりです」
「そうか。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおう。ありがとうな」
「いえいえ」
俺達は若い女性兵士に手を上げると、屯所を出る。
「じゃあ、行くか」
「アーヴィンがそう言ってるからな。ちなみにだが、アーヴィンの嫁さんとはしょっちゅう顔を合わせているのか?」
んー……?
「たまにだな。なんでだ?」
「いや、お前がそうならいい。俺は嫁さんが王都を訪ねた時に紹介されて以来だからな」
アーヴィンの嫁さんのケリーさんはこの町出身だ。
俺達が王都で訓練をしている時にはすでに結婚しており、ケリーさんが訪ねてきたことがある。
「明るい人だから大丈夫だよ。足のことも大丈夫だ」
「そうか。ならいい……あ、手ぶらじゃ何だし、酒でも買っていこうぜ」
確かにそうだな。
「そうするか。そういやあいつの家に行く時はいつもアンジェラに言われてたわ」
手土産ぐらい持っていけって。
「ホント、良い嫁さんだな」
そう思う。
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