第071話 良い町
「あー、腹減ったな」
だいぶ戻ってくると、ローレンスが腹を押さえる。
「もう昼前くらいだろうな」
「こんなに遠いとは思ってなかったから昼飯を用意してねーよ」
それは俺もだ。
「帰ったら飯でも食いに行くか」
「嫁さんはいいのか?」
「アンジェラはアンジェラで作ってると思う。急に帰ったら悪い」
アンジェラは夕方くらいに帰ると思っている。
だから作っているのも1人分だし、そんな中で帰ると困ってしまう。
下手をすると、アンジェラは優しい子だからその昼食を譲ろうとするだろう。
「ふーん……嫁さん持ちは色々と大変だな」
「別に普通だ」
まだ嫁さんじゃないけどな。
「娘の方がいるぜ」
前方には数人の人間がおり、道の端で敷物に座っていた。
メアリー、カトリーナ、シャーリー、ベティさん、神父さんの5人である。
5人共、何かを食べており、昼休憩のようだ。
「あ、エリックだ!」
メアリーがこちらに気付いたので近づく。
「昼か?」
「うん。ハムサンド美味しい」
「良かったな。ベティさん、娘が世話になってます」
ベティさんに頭を下げる。
「こちらが手伝ってもらっているんですよ」
ベティさんはいつものニコニコ顔だ。
「こき使ってやってください。メアリー、迷惑をかけるなよ」
「かけないっての。私が人に迷惑をかけたことなんて一度たりともないよ」
それをマジな顔で言い切るのがすげーよ。
「カトリーナ、シャーリー、バカをよろしくな」
「メアリーちゃんは大丈夫ですよ」
「一緒に頑張ってます」
うんうん。
良い子達だ。
バカを否定してないけど。
「エリック、そちらは?」
神父さんがローレンスを見ながら聞いてくる。
「あ、旧友のローレンスです。旅から帰ってきたんですよ」
「ローレンスです。教会の神父様でしょうか?」
ローレンスが姿勢を正した。
「ええ。ミルオンの町の教会の神父です。よく来てくださいました。歓迎します」
「ありがとうございます。ミルオンは良い町だと思いますし、そこに住んでいるエリックやアーヴィンの幸せそうな姿を見られて良かったです」
「その2人はもう少し、ちゃんとして欲しいんですけどね」
出たよ、お説教。
「私なんかよりずっとしっかりしていますよ」
ローレンスが自虐的に笑う。
「神父さん、我々も昼にしますのでまた。それとメアリーをお願いします」
「ええ。親であるあなたから教会に来るように言ってほしいんですけどね」
それは無理。
何故なら、俺もアンジェラも行かないから。
「お祈りって静かでつまんないんだもん。しーんとしていると笑えてくるよね?」
「ううん。全然」
メアリーが聞くと、カトリーナが笑顔で首を横に振った。
「メアリー、目を閉じて、心を無にすればすぐ終わるよ」
シャーリーがアドバイスをする。
「シャーリー……お祈りで心を無にされても困るんだがね」
あ、シャーリーが捕まった。
「では、我々はこれで」
神父さんのお説教が始まりそうだったのでローレンスを連れて、そそくさとこの場を離れた。
「なあ、エリック、さっきの神父様だが、本当に神父か?」
ローレンスは気付いたようだ。
もっとも、神父さんも気付いただろうけどな。
何しろ、俺とアーヴィンの旧友ってそういうことだし。
「元軍人だ。俺達が参加する前から従軍していたらしい。多分、俺達と同じようなところにいたな」
「やっぱり軍人か。出す雰囲気に覚えがあると思ったわ。神父が軍人をしていいもんかねー?」
それは知らない。
「絶対に回復魔法が使えることを言うなよ」
「言わねーよ。何度も言うが、家族にべらべらしゃべるのはお前らだけだ」
それは否定しない。
メアリーはともかく、アンジェラにめっちゃしゃべってるし。
「過去の話になることもあるからどうしてもそういう話になるんだよ」
アンジェラ、聞き上手だし。
「惚気にしか聞こえねーよ。他の連中もこんな感じだったらどうしよう? というか、隊長がこえー」
隊長は女性だった。
当時、25歳だったから今は35歳だ。
怖かったけど、綺麗な人だったから結婚して、子供がいても不思議じゃない。
「すごい勝手だが、隊長から惚気を聞きたくないな」
申し訳ないが、まったく想像できない。
「絶対に聞きたくねーよ。俺、ウジ虫って言われたことあるぞ」
そりゃ盗み食いするからだ。
俺もこのボケカスって思ったわ。
俺達は森を抜け、町まで戻ってくると、定食屋に入った。
この時、すでに14時前になっており、かなり腹が減っていたので日替わり定食の鶏肉のソテーが非常に美味い。
「美味いな」
「ああ。昨日の飲み屋も美味かったが、ここも美味い。名産がないって言ってたが、普通に飯は美味いだろ」
「さっき行った森の他に北にも王都に行く道があり、そこも森だ。だから肉はよく獲れるな」
肉が獲れないっていうのは聞いたことがない。
「食が安定しているのは良いな。不安定な町も結構あったぜ」
地域によるだろうな。
この地方は森も川もある。
定期的に雨も降るし、作物も大丈夫だ。
「ここはそこまで王都から離れてないからな。それよりも午後からはどうする? もう森の奥には行かないぞ」
「俺はアーヴィンのところにスプーンを届けたら町を観光しようと思う。お前は店もあるし、帰っていいぞ。今日は付き合ってもらって悪かったな」
スプーンはローレンスに任せるか。
「じゃあ、そうするわ。また飲みにでも行こうぜ」
「ああ」
俺達は昼食を食べ終えると、その場で解散した。
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