第070話 捜索?
俺達が歩いていくと、前方に黒い塊が見えてきた。
いや、塊ではなく、街道の先と周囲の森が燃えて、炭になっているのだ。
「あれか……」
ローレンスがつぶやく。
「結構、燃えたって聞いていたが、想像以上だな」
雨が降らなかったらもっと大規模だったんだから危ないわ。
「行ってみよう」
俺達はさらに歩いていき、現場に到着する。
木々も炭になっており、地面も真っ黒だ。
とはいえ、かなりの数の足跡も見えている。
「軍が調査済みらしいぞ」
「みたいだな……しかし、すげーな」
ローレンスが驚くように周囲は本当に黒いし、木が燃え落ちたのですっきりしてしまっている。
「ノクスでも森が燃えることはあったが、ここまでではなかったな」
「すぐに消火するからな。ここは町から離れているし、消す人間がいなかったからだろう」
ここを消火するには俺達魔法使いの出番だろうな。
実際、そういう要請をするかもしれないってヴィオラが言っていた。
「流れを説明すると、火の不始末で火事が起き、それにより、オークが一斉に逃げ出したことで周囲の魔物が逃げ、大量の魔物が町の近くまで来たって感じだ」
「ふーむ……作為的とは考えにくいな」
「そう思うか?」
「ああ。町から想像以上に距離が離れている。スタンピードを狙うにはいくつかの偶然を頼らないといけない」
まあ、まずもって、オークが森の奥の方に逃げたらその時点で町に魔物は来ないからな。
「多分、軍もそう考えていると思う。事故で片付けるっぽいしな」
「事故?」
「ああ。念のため、見回りの強化はするらしいが、犯人捜しはしないそうだ」
「結構な事件だと思うけどな。しろよ」
そう思うのもわかる。
「犯人捜しに難儀するし、疑心暗鬼を招いて町が混乱する。それに見つけても重罰にしづらいって感じらしい」
「ふーん……なんか甘いな」
軍だったら厳罰ものだろうからな。
「平和な町だからな。事を大きくしたくないんじゃないか? 幸い、魔物も森から出ていないし、数人の兵士がケガしたくらいで犠牲者はいない」
「まあ、それもわからないでもないが……」
ローレンスが腕を組んで悩みだす。
「どうする? 帰るか?」
「火元はどこだろうか?」
「うーん……あそこだな」
右の方を指差す。
「なんでだ? 真っ黒でわからんぞ」
「足跡が多い。兵士が入念に調べたんだろうよ」
「なるほどな」
俺達は足跡が多い場所まで行くと、地面を見てみる。
「真っ黒だな」
「まあな」
「しかし、焚火の跡か……」
ローレンスが剣で炭をどける。
すると、穴があり、数個の石が出てきた。
「帰る時に埋めなかったのかね?」
「じゃないか? 素人か……それをする暇がなかったか……」
「この前、熊とか出てきたしな」
「この時期なら熊も人を襲うかもな。それにオークの巣が近いならオークもありえる」
熊よりもそれっぽいな。
「冒険者じゃないかも。ここまで来る奴ならオークとも戦えるだろ」
「どうかな……さっきのジェイクみたいに1人だったかもしれない。それなら複数のオークが来たら撤退も十分にあり得る」
それもそうか。
「わからんなー」
まあ、わかったら兵士達も苦労しない。
「なあ、この先は何がある?」
ローレンスが道の奥を見ながら聞いてくる。
「山だな。その山を迂回するように道があり、他の町に行ける」
「となると、商人の可能性もあるわけか」
「そうなるな。軍が調査をやめたのも調べて調べて調べまくっても犯人が外の商人だったらどうしようもないからだろ」
迷宮入りだ。
「確かにな……時間と金、労力に見合わないわけか」
「アーヴィンがそう言ってたぞ」
「ふむ……もう少し調べてみる。すまんが、付き合ってくれ」
ローレンスはそう言って、地面を見ながら周囲を歩き始めた。
「ぜーったいにお前が調べているノクスの亡霊とは関係ないと思うぞ」
「それは俺もそう思う。ちょっと気になるし、せっかく来たんだから調べてみるだけだ」
ふーん……性分ってやつかね?
俺は暇なので周囲を見渡してみる。
辺りは本当に黒いし、これなら証拠があっても燃えているだろうなと思った。
「俺も暇だから調べるか」
焚火の跡を探ってみることにし、拳くらいの石を持ってみる。
石は表面は黒かったが、裏は普通の石だった。
「焚火の周りを囲んでいた石か。地面についている面は燃えないわな」
となると、すべてが燃えたように見えても土の中に被っているものは燃えていないわけだ。
そう思い、ナイフを取り出して、焚火の周囲を掘ってみる。
すると、何かがきらりと光った。
「んー?」
何だろうと思い、拾い、表面の炭を払ってみると、スプーンだった。
「忘れ物かね?」
多分、落としたんだろう。
「ん? 何か見つけたか?」
ローレンスがこちらにやってくる。
「スプーンだ」
そう言ってスプーンをローレンスに渡す。
「確実に犯人のだろうな。ということは何か食っていた時に何かに襲われ、逃げたのかもしれないな」
その可能性も十分にあるだろう。
焚火をしていたわけだし、食事中の可能性は高い。
もし、そうならウチの持ち運び用コンロを使っていたら火事になっていないな。
「スプーンでは証拠にならないな」
「ああ。どう見ても普通のスプーンだ。その辺に売ってそうだ」
それはどうだろう?
「いや、売ってはないと思うぞ。それは銀のスプーンだ」
「銀?」
「ああ。銀だ。魔道具の素材でよく使うからわかる」
銀は魔力の伝導率が高いのだ。
「ふーん……銀ねー」
「たいした額にはならんぞ」
この辺りは銀が豊富に採れるから割かし安価なのだ。
さすがに鉄よりかは高いが、それでもそんなに変わらない。
「アーヴィンに届けるか」
「まあ、それでいいんじゃないか? もしかしたら軍も把握しているかもしれないがな」
他にもフォークが落ちていたかもしれない。
「まあな。とにかく、帰ろう。つまらないことに付き合わせたな」
「いや、俺も現場を見られて良かった。帰ったらメアリーに火だけは気を付けろって再度、注意するわ」
「俺も注意しないとな……」
ローレンスが頷いたのでこの場をあとにし、道を引き返していった。
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