第068話 俺もメアリーがいなかったらこんな感じだったかもしれない
「フルフェイス・マスクマンな」
「それそれ。そいつが怪しいと思っているんだよ」
フルフェイス・マスクマンも元黒影団の人間だからあながち間違ってはいないな。
「そんないかにも怪しい奴が暗躍するか? 暗躍できないだろ」
目立ちすぎ。
自分のことだからあんま言えないけど。
「そこはあるな……ただ、実力は相当らしい。謎の剣を使い、魔法も使うらしい」
あとかっこいい。
「ないない。そんな目立つ奴が森に入ったら目撃者もいるだろうし、犯人なら軍がしょっ引いてるだろ」
「確かにな……まあ、容疑者の一人だ」
容疑者にされちゃった。
まあ、フルフェイス・マスクマンもお役御免だから別にいいけど。
俺達は街道を進んでいき、森までやってきた。
「この森は浅いところではスライム、ゴブリン、コボルトってところだ。奥に行けばオークがいるらしい。他は知らない」
マッドモンキーが出たくらいかな?
「そこまで特殊な森じゃなさそうだな」
「猟師や山師も入る森だ。この前の火事の件はともかく、俺がこの町に来た10年では大きな事故も事件も起きていない」
「じゃあ、脅威になる魔物はいそうにないな」
そんなのがいたらメアリーどころかアンジェラも森に入れない。
「お前の脅威になる魔物って何だよ?」
「いないな」
はっきりと言うだけの強さをこいつは持っている。
「じゃあ、問題ない。行くぞ」
「ああ」
俺達は森に入ると、道を進んでいく。
「お前、冒険者になってどういう仕事をしていたんだ?」
「普通だよ。魔物討伐、護衛が中心だな」
こいつが採取をしているところを想像できないし、そんなところだろう。
「いないと思うが、一応、聞く。パーティーは?」
「想像通りでいねーよ。たまにどっかのパーティーに入れてもらうこともあるが、1人の方が気楽だし、ソロで適当にやっている。旅をしているからいずれ別れは来る。その時に仲良くなりすぎると別れが辛くなるんだよ」
その時がその地に永住するタイミングだと思うけどな。
「こっちでも同じようにソロか?」
「どうだろ……経験上、こういう町はすでに固まっていることが多いし、外の人間に排他的なところがあるんだ」
あー……ジェイクとかそんな感じだな。
フルフェイス・マスクマンにも当たりが強いし。
「わからないでもない。メアリーのパーティーはどうだ? 15歳と16歳の若い女子パーティーだ。3人共、可愛いぞ?」
ウチの子が一番。
もっとも、きっと肉屋のバリーも神父さんもそう思っているだろう。
「面倒を見ろってか? 別にいいけど、会話に困るわ。世代も違うし、何を話していいのかわからん」
適当に話せばいいだろうに。
「うーん、となると、他は手ごろなのがいないな」
ジェイクは絶対に無理だろうし。
「お前の嫁さんは? 冒険者なんだろ?」
昨日、色々聞かれたからアンジェラが冒険者であることも話した。
しゃべったのはアーヴィンだが。
「アンジェラはダメ」
「絶対にそう言うと思ったぜ。まあ、あの子はないな。まず向こうが拒否する」
「そうか?」
社交的な子だぞ。
「アーヴィンが昔からお前にべったりだったっていうのがよくわかるわ。あの子、見た目はチャラチャラしているけど、完全に嫁面している。ちょっと面白かったわ」
見た目はいいだろ、見た目は。
ああいうファッションが好きなだけで真面目で優しい子なんだ。
「メアリーはもっと面白いぞ」
タンスに説教する女は伊達ではない。
「楽しそうで何よりだ。羨ましいねー」
ローレンスがそう言うと、前方の草むらががさがさと動き、コボルトが出てきた。
「アーヴィンの家にでも行ってこいよ。あそこはもっと明るいぞ」
何回かご馳走になりに家を訪ねたことがあるが、奥さんも息子も明るかった。
「そういや俺も誘われたな」
ローレンスはそう言いながら剣を抜き、襲いかかってきたコボルトを歩みを止めずに斬った。
そして、真っ二つになったコボルトを一瞥もせずにそのまま歩いていく。
「魔石とかは?」
いらんの?
「コボルトはスルーだな。オークレベルで考えるくらいだ」
高ランクは儲かっているんだろうな。
「お前、貯金とかある?」
「無駄に貯め込んでいるな。俺、趣味とかないし」
そういやローレンスからあれが好き、これが好きって聞いてことないな。
「娼館とかは?」
ちなみに、この町にもあったりする。
とはいえ、俺は人生で一度もそういう店に行ったことがない。
いい子ぶっているわけではないが、そういうタイミングもなかったし、メアリーのことが第一だった。
あと、アンジェラ。
「それも行かねーな。楽しみといえば、酒くらいか?」
あまり遊んでないんだな。
だったら貯め込んでいるわ。
「話していると、どっかの地に住んだ方が良いように思えるぞ」
遊びもしないし、堅実だ。
「そうかもな。王都に戻ったら旅も終わりだ。そのまま王都に住んでも良いし、別の地を探してもいい。どうすっかなー? この町はどうだ?」
「平和だぞ。名産品があるわけでも観光名所があるわけでもない。普通の平和な町だ」
「すげー魅力的に聞こえるな」
俺もそのつもりで言った。
「これまでに良い町だなって思ったことはないのか?」
「何度もある。もうちょっといようかなと思った町もあるし、また来ようと思った町もある。そこに行っても良いな……まあ、じっくり考えるさ」
ふーん……どうすんのかねー?
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