第067話 こらー
準備を終え、店に行くと、迎えに来る予定のローレンスを待ちながらアンジェラと共に開店準備をする。
すると、住居スペースの扉が開いた。
「今日も太陽が応援している……風が後押しする……大地が伝説を作れと囁いているぜー!」
準備を終えたメアリーが出てきて、どこで覚えたか知らないかっこいいセリフを言う。
「はいはい。いってらっしゃい」
「気を付けてね」
「小うるさい父親と恋愛脳の継母も信じてくれている……いざ、ゆかん! プリンセスメアリーの出陣だ!」
「はよ行け」
長いわ。
「いえーい」
メアリーは元気に出かけていった。
「あいつ、役者の方が向いてないか?」
「主役にしかなれないわね」
あんな脇役は邪魔でしかないしな。
開店準備を終え、店を開くと、数十分後にローレンスがやってきた。
「ういーす」
ローレンスが挨拶をしてきたが、ちょっと体調が悪そうだ。
「おはよう。大丈夫か?」
「ああ……昨日はさすがに飲みすぎたな。アーヴィンのペースに乗せられてしまった」
かなり盛り上がったし、だいぶ飲んでたしな。
「延期するか?」
「いや、大丈夫だよ。あ、出発前にちょっといいか?」
ん?
「何だ?」
「お前、氷が1日以上も溶けない水筒を作ったってマジ?」
あ、それか。
「ああ。結構売れたし、王都にある大手の商会さんとも契約したぞ」
「すげーな。俺にも売ってくれよ」
「5000ミルドな」
「水筒にしては高いが、質を考えると安いんだな」
ローレンスが5000ミルドを支払う。
「アンジェラ、せっかくだし、氷とお茶を入れようか」
「そうね。青で良い?」
「ローレンスは青だな」
「わかった。ちょっと待っててね」
アンジェラは青い水筒を持ち、奥の住居スペースに入った。
「ありがたいが、青って何だ?」
「水筒の色は赤と青があるんだよ」
「あー、そういうことか…………青で良いな」
だろうな。
「火を使わずに調理ができるコンロとかもあるぞ。あと、折り畳みの傘もウチのヒット商品だ」
「また見に来るよ。今日は外だ」
確かに日を改めた方が良いか。
「いくらでも買っていけよ」
「もう旅も終えようかと思っているし、そんなにいらねーけどな。しかし、手広くやってるんだな」
「物作りが好きなんだよ」
「色々直してたもんな……まあ、お前はそっちの道の方が良いだろう」
ローレンスが頷くと、アンジェラが戻ってきた。
「はい、これー」
アンジェラがローレンスに水筒を渡す。
「ありがとう。じゃあ、旦那さんを借りていくぜ」
「夕方までには返してー」
「ああ。エリック、行こうぜ」
ローレンスが背中をポンポンと叩いてきた。
「そうだな。アンジェラ、後は頼む」
「はーい。いってらー」
俺達は店を出ると、東門に向かう。
「良い奥さんじゃないか」
「奥さんじゃないけどな」
まだね。
「正直、10年前のお前しか知らないからかなり意外だ」
「それは俺もだよ」
自分でもまったく想像していなかった人生を送っている。
「何が変わった?」
「メアリーだな」
確実に言える。
「そうか……」
「お前、旅をやめるって言ってたな?」
「世界は見て回ったし、故郷に帰ってきたからな。王都に戻った後、今後のことをちょっと考えてみるつもりだ。俺ももう32歳になる」
おっさんだ。
人のことは言えないけど。
「その年で旅はちょっときついな」
「ああ。何よりもお前らのせいで一人なのがむなしくなってきた」
この10年、辛いことは多かった。
知らないことばかりだったし、それなりの苦労もしてきた。
でも、メアリーがいてくれたから頑張ってこれたな。
いつも笑っているバカな娘がいたから心が救われたのだ。
あ、アンもね。
「王都に戻ったら落ち着いた生活をしろよ。別に冒険者を辞める必要もない。お前なら何でもできるよ」
「そうか? 俺はお前らほど器用じゃないぞ」
確かにローレンスは不器用だ。
手先とかではなく、生き方が……
「普通に働くだけだ。お前、魔法使いだろ。職なんかいくらでもあるし、いくらでも稼げる。1つの場所にいれば多くの出会いもあるし、良い人とも出会えるだろう」
「そんなもんかねー?」
「ひねくれ者と呼ばれてきた俺でも良い出会いはあったんだぞ」
「チャラチャラした若い嫁な」
アンジェラ、ギャル卒してもあのファッションはやめる気が一切なさそうなんだよな。
あの腕についている大量の腕輪に何の意味があるかさっぱりわからない。
俺達が話しながら歩いていくと、ギルドの前にやってきた。
「ギルドには寄るか?」
「いや、今日はいい。また明日にでも顔を出そうかと思っている」
仕事ではなく、個人的な調査だしな。
「じゃあ、スルーでいいか」
「ああ」
俺達はそのまま歩いていき、東門までやってくる。
「ここが東門だな。この先に森があり、さらには山がある」
「こっちは初めてだな。俺は南門から来たから」
南は平原であり、ずーっと街道が続いている。
「寄合馬車か?」
寄合馬車は皆で金を出し合って移動する馬車で冒険者はもちろん、馬車を持っていない一般人や商人がよく利用している。
「ああ。長かったぜ」
「だろうな」
俺達は門を抜けると、そのまま森に向かって歩いていく。
「かなり森が近いな。スタンピード一歩手前だったんだろ?」
ローレンスが森を眺めながら聞いてくる。
「ああ。冒険者連中が頑張って森の中で食い止めてくれたそうだ」
あと、闇の三人衆。
「ふーん……オークの巣が焼けたせいと聞いたが……」
「詳しいな?」
「俺なりに聞き込みとかもしたんだよ。焚火の不始末らしいな?」
そういう情報集めも得意か……
「そう聞いている」
「ふーん……そういえば、なんか変な黒ずくめの男がいるらしいな? フルフェイス・パンツマンだったかな?」
マスクマン!
間違えんな、ボケ!
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