第066話 ご機嫌なアンジェラちゃん
家に帰り、裏口に回ると、まだ灯りがついていたので中に入る。
すると、テーブルにつき、両手で頬杖をつくアンジェラがいた。
「ただいま」
「おかえり。楽しかった?」
「昔の話で盛り上がったな」
主にローレンスの失態。
「そう。なら良かったわね。座ってて。水を持ってくるから」
アンジェラがそう言って立ち上がって、キッチンに行ったのでお言葉に甘えて、席につく。
「メアリーは?」
「さっきまで起きてたけど、寝たわね」
アンジェラが答えると、コップをテーブルに置き、隣に座った。
「まあ、時間も時間だからな」
メアリーは昔から基本的に早寝なのだ。
「ローレンスさんはなんで来たの? エリックは気にしてたわよね?」
「なんか俺らの良くない噂があるらしい」
「戦争が終わって10年も経っているのに?」
そうなんだよなぁ……
あれからウチの国は帝国はもちろん、他の国とも衝突はない。
平和そのものなのだ。
「わからん。そういう噂があるってだけらしい。念のため、ローレンスが調べているっぽいな」
自分達のことだからな。
正直、死神とか亡霊とか言われるのはちょっとかっこいいと思うし、別にいい。
恐れられるのも帝国に嫌われるのもそれだけのことはしてきたと思っている。
ただ、何もしてないのに暗躍しているだの何だの言われるのは納得できない。
もう俺達は引退しているし、暗躍なんかする必要がないのだ。
「それでアーヴィンさんを訪ねたわけね」
「ああ。アーヴィンしか居場所を知らなかったかららしい」
他の連中はどこで何をしているんだろうか?
「アーヴィンさんなら他の人のことも知ってると思ったんでしょうね」
「それもあるだろうな。アーヴィンは俺達の中でも一番慕われていたんだ。戦場の絶望的な状況でも冗談を言い、場を明るくさせてくれた」
良い奴だった……いや、生きてるけど。
「今もそんな感じね。ローレンスさんもアーヴィンさんを見て、ホッとしたでしょ」
「ああ。多分、泣いてたな」
気持ちはわかる。
「数日は滞在するんでしょ? また飲みに行ったら?」
「そうなると思う。それとな、明日、ローレンスの調べものに付き合うことになった。山火事の現場に行きたいんだと」
「あー、あの火事が噂に関係するかもしれないって思ったわけね」
アンジェラが納得したように頷く。
「可能性としては低いし、念のためって感じだな。だから、明日は店番をお願いしていいか?」
「それはいいけど……フルフェイス・マスクマン?」
「いや、さすがに俺で行く」
というか、もうフルフェイス・マスクマンの出番はないかもしれない。
メアリーはもう大丈夫だ。
「ふーん……」
あー……
「仕事も落ち着いたし、明後日か、明々後日くらいに川の方に行くか。アンジェラも冒険者活動をした方が良いだろ」
水筒やコンロ作りで負担をかけてしまったから全然、やってないし。
「行く」
アンジェラが即答する。
「じゃあ、そうしよう」
「うん。お風呂に入ってきなよ」
「そうする。先に寝てていいぞ」
「ううん。起きてる」
そうかい。
翌日、早めに起き、ラシェルの世話をした。
そして、朝食を作り、2人を起こすと、3人で食べる。
「眠いわー」
「わかるー」
2人は眠そうだ。
風呂から上がった後に色々と話をして、寝るのが遅れてしまったアンジェラはわかるが、メアリーはめっちゃ寝ただろうに。
「アンジェラ、別に休みにしていいからな」
「大丈夫、大丈夫。そこまでじゃないから。あ、さすがに今日は家に帰るわ」
「わかった。夕食は一緒に食べよう」
「うん。作って待ってるから」
多分、そこまで遅くはならないと思うけどな。
「頼むわ。メアリー、今日はどうするんだ? まだ勉強会か?」
「うんにゃ。ベティおばさんがまた薬草採取をするから護衛。よくわかんないけど、神父様も来るらしい」
神父様?
「何? 娘の仕事ぶりを見るのか? あの人、そんな過保護だったっけ?」
「ふっ……」
鼻で笑うな、アン。
「いや、神父様も薬草が欲しいらしい。自分で採りに行けばいいのにね。きっと説教されるよ」
教会でも薬草を使った治療はするし、その関係かな?
「まあ、神父さんがいれば何も問題ないと思うが、変に良いところを見せようとするなよ」
「するわけないじゃん。あ、いや、カトリーナか。言っとく」
カトリーナなら大丈夫だと思うけど、カトリーナと神父さんの親子関係がいまいちわからないんだよな。
放任っぽいし。
「俺も森に行くから鉢合わせても睨んでくるなよ」
「あれ? エリックも行くの? アンジェラちゃんとデート?」
「それは明日か、明後日。アンジェラは店番だ」
デートじゃなくて、冒険者の仕事だけどな。
「へー……アンジェラちゃんがついていかないのは珍しいね。というか、エリック1人? そっちの方が珍しいや」
俺が1人で森に行くことなんてない。
まずもって用がないのだ。
「昨日、ローレンスに付き合ってくれって頼まれたんだ」
「あー、道案内とかそういうのか。ローレンスさんも冒険者だもんね」
それでいいや。
メアリーに余計なことを言う必要もない。
「ああ。そういうわけだから遭遇しても睨んでくるなよ」
「いや、睨まないから。私が嫌なのはアンジェラちゃんと森デートしているエリックを見る私を見る気まずそうな顔なカトリーナとシャーリーだから」
出た、見る見る。
「そんなもん、気にするなよ」
「さっさと気にしないようにしてほしいね。よし、ごちそうさま! 着替えてくるー!」
朝食を終えたメアリーは部屋に走っていく。
「食器を水につけろって言われたことをもう忘れてやがる」
多分、布団も畳んでないだろう。
「エリック、洗い物は私がやっておくからあなたも準備していいわよ」
「悪いな」
「いいわよ。私、家事得意だし」
アンジェラが快く引き受けてくれたので洗い物を任せ、俺も部屋に戻ると、準備をする。
「うーん……そこまでの装備はいらんか」
ローレンスがいるし、あの森の魔物ならナイフで十分だろう。
そう思い、数本だけナイフを空間魔法に収納し、準備を終えた。
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