第065話 亡霊?
俺達が飲んでいると、22時になったので解散することにする。
会計をし、店を出ると、当たり前だが、辺りはすっかり暗くなっていた。
「あー、飲んだ、飲んだ。じゃあ、俺はこっちだから」
アーヴィンが北の方を指差す。
アーヴィンの家は北区にあるのだ。
「大丈夫か?」
ローレンスが心配そうに聞く。
それもそのはずであり、アーヴィンは俺達の倍以上は飲んでいるのだ。
もちろん、足のこともあるだろう。
「問題ねーよ。それよりもまだこの町にいるんだろ? また飲みに行こうぜ」
「ああ。そうしよう。気を付けて帰れよ」
「俺は軍人だっての」
アーヴィンはそう言うと、笑いながら帰っていった。
「あいつ、本当に変わってないな」
「よー飲むよな」
「ああ。お前も帰るか?」
「さすがにな」
家でちょー良い女と寝ている子が待っている。
「そうか。ちょっとだけでいいから付き合え」
ローレンスはそう言って歩いていったのでついていく。
すると、町の中央の広場にやってきて、ベンチに腰かけた。
「どうした? 酔い冷ましか?」
こいつと並んで座るのもどうかと思ったので立ったまま聞く。
周りは仲良く手を繋ぎながら星空を見ているカップルしかいないのだ。
「そんなんじゃねーよ……本当にな」
ローレンスが俯いてしまった。
「アーヴィンか?」
「ああ。本当に良かった。俺はこの10年間、ビルとローランのことはもちろんだが、あいつのことをずっと気にしていた」
隊長に啖呵を切った時も言ってたしな。
「だったらもっと早く来い」
「どんな顔をして会えばいいのかわからなかった……はっきり言えば、会いたくなかった」
ハァ……
「だろうな。お前だけじゃない。他の連中もこの町には来ていない」
アーヴィンも会っていないって言ってた。
皆、アーヴィンがこの町の出身でこの町に帰ってきていることは知っているのにだ。
「お前はすげーな」
「すごくない。俺はアーヴィンを頼った人間だ」
メアリーのことがあったので頼ったのだ。
もちろん、気になっていたというのもあるし、何かの手助けになれないかと思っていたのもある。
「そうか……」
「お前、今更、なんで来た?」
「さっきの説明じゃダメか?」
帝国に行って、戦争が終わったってやつだ。
「それでもお前は来ない。お前の逃げ癖は俺達が一番知っている」
臆病とかそういうことじゃない。
「俺はお前らみたいに強くないんだよ」
「関係あるか」
「お前さ、ノクスの亡霊って知ってるか?」
ノクスの亡霊?
どっかで聞いたことがあるような……
「ノクスってノクス地方のことか? 戦場だった?」
戦地がそこだったから10年前に終わった戦争はノクス戦争と呼ばれている。
「ああ。そのノクスだ。ノクスの亡霊っていうのは俺達のことだ」
はい?
「生きてるが?」
「あの戦争で俺達黒影団は活躍した。しかし、戦後、全員が王都に戻らなかった。だからこそ、そう呼ばれている」
あっ!
ノクスの亡霊って大佐に言われたんだった。
「死神の次は亡霊か……つくづく嫌な二つ名が付くもんだな」
「暗部だし、名前が黒影団だからな。半分はお前のせいだ」
黒影団という名前を考えたのは俺……
「俺達ってそんなに有名なのか?」
「ああ。かなりな。特に軍の関係者では知らない者はいないレベルだ」
そういえば、死神の黒影団はアンジェラでも知っているくらいだったな……
「亡霊、か……いや、普通に軍を辞めただけだろ」
「面白おかしくしているという点はあると思う。ある意味では平和の証拠だろう。でも、それ以上に帝国の方で有名だったわ。すごい嫌われてるぞ」
まあ、帝国はそうだろうな。
「狙われたか?」
「いや、そんなことはない。俺はお前らと違ってべらべらとしゃべらないからな」
アンジェラにしゃべった手前、何も言えない。
「ふーん、それでその亡霊がどうしたんだ?」
「ちょっと気になることがあってな。冒険者をしていると、変な噂が入ってきたんだ」
変?
「何だ?」
「その亡霊がいまだに戦争に納得せず、暗躍しているってな」
あー……
「お前、それでアーヴィンを訪ねたのか」
「ああ」
「いや、あいつは無理だろ」
「わかっている。ただ、あいつしか居場所を知らなかったから何か知らないかなと思って来たんだよ」
そういうことね。
「さっきも言ったが、誰も来てないし、他の連中がどこにいるのかは知らないな」
「そのようだな……まあ、アーヴィンもお前も違うみたいで良かった。お前らはちゃんと次の人生を歩んでいる」
ふーん……王都に行くっていうのもそれ関係だろうな。
「噂だろ?」
「どうかな……お前、ちょっと付き合ってくれないか?」
「何に?」
「この町でちょっと前に山火事があったって聞いた。気になるから調べたいんだ」
ふむ……
「それがその亡霊の仕業ってことか?」
「あくまでも可能性だ。せっかく来たし、調べてみたい」
「まあ、付き合ってやるが、俺も店があるからな」
「わかってるよ。いつ行ける?」
うーん……今のところ忙しくないし、アンジェラに店を任せるか。
「明日でいいぞ」
「悪いな」
「2人か?」
「アーヴィンはさすがに無理だろ」
この前の動きを見る限り、足の方は大丈夫かもしれないが、そもそもあいつは仕事があるか。
「わかった。適当な時間に店に来てくれ」
「ああ。じゃあ、明日な」
ローレンスが立ち上がって、宿屋の方に行ったので俺も家に帰ることにした。
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