第064話 飲み会
飲み屋の親父がエールを持ってきてくれたので乾杯をし、飲む。
「ぷはぁっ! 良い感じだ!」
アーヴィンが半分くらいを飲んだ。
「相変わらず、お前は飛ばすな」
ローレンスが懐かしむように笑う。
「これでも最近は抑えてるんだ」
「そうは見えねーな」
うん。
「嫁さんがうるせーんだ」
「そりゃそうだろ。嫁さんは元気か?」
「普通にな。戦争から帰った時はウチも暗かったが、まあ、10年も経てば普通になった。一番はエリックが義足を作ってくれたからだな」
「それなー……いや、エリック、マジですげーよ。アーヴィンが普通に歩いているじゃねーか」
ローレンスがばしばしと背中を叩いてくる。
「たまたま上手くいっただけだ」
「謙遜すんなって。しかし、お前、店まで開いてんだな。宿屋のおばちゃんに聞いたけど、評判が良かったぜ」
それは良かった。
ちょっと安心する。
「この町は魔道具屋がウチしかないんだよ」
「まあ、魔法使いなら魔導具屋は選ばないもんな。俺も色々考えたが、その選択肢はなかったわ」
ローレンスも魔法使いだ。
というか、黒影団は隊長を含めて、全員そうだ。
「みーんな、王都に行ってしまうんだと」
「それもわかる。お前は王都に戻らなかったんだな?」
「お前が啖呵を切って帰ったせいだ。王都に戻りづらくなったわ」
「俺のせいかよ。いや、皆、同じ気持ちだっただろ」
まあな。
でも、俺一人だったら報酬はもらってた。
「何にせよ、これで良かったと思う。昨日、アンジェラとそういう話をした」
「あのチャラチャラした嫁さんか?」
「嫁さんではないな」
見た目チャラチャラしているのは否定しない。
「あー……さっきの宿屋のおばちゃんがなんで結婚しないのかって首を傾げてたぜ。向こうの両親はもう嫁に出した気でいるのにエリックは何を考えているんだってちょっと怒ってた」
やっぱり周りはそういう認識なんだな。
「色々あるんだよ」
「ふーん……30にもなって何言ってんだかって感じだが」
「そういうお前はどうなんだよ」
「俺か? 俺は一人で旅する冒険者だから何もねーよ」
ふらふらしてんな。
「何やってたんだ?」
「あ、そうそう。俺達よりもお前だよ。マジでどこで何してたんだよ」
アーヴィンも食いつく。
「いや、本当に旅をしていただけだ。もう軍に戻る気もなかったし、何となく国を出た。それからは冒険者をしながら世界中を回ったな。まあ、色んなものが見たかったんだよ。帝国にも行ったぜ」
帝国……俺達の敵だった国だ。
「どうだった?」
「普通。マジで普通だ。この国と同じで多くの人々がいて、生活を謳歌していた。戦争の爪痕も消え、皆が平和そうに暮らしていた。もし、俺達が勝っていたらあの町はどうなっていたんだろうって思ったらやるせなくなった」
それは俺も思うだろう。
いや、メアリーの時に同じような感情を持ったことを覚えている。
「それで帰ってきたわけ?」
「まあ、それもあるが、さすがに10年も離れたからどうなっているんだろうって気になったからだな。何というか、俺の中であの戦争が終わったんだ」
「そうか」
「エリック、アーヴィン。お前らはどうだ? 戦争は終わったか?」
戦争……
「俺は終わっている。あれから戦いから離れたし、メアリーを育てることで必死だった」
「俺も似たようなもんだな。養わなければならない家族がいたし」
アーヴィンの場合は戦争に参加する前から結婚していたし、息子のパトリックがいた。
「お前らはそうなんだな……いや、良いことだ」
んー?
「何かあるのか?」
「いや、他の連中がどうなのかなって思っただけだ」
それは俺も気になるが……
「そういやローレンス、お前、次は王都に行くって言ってたな。そのまま王都に住むのか?」
アーヴィンが聞く。
「わからん。王都に戻る最大の目的は隊長に会おうかと思ってだ」
隊長……
「あの人も軍を辞めてるぜ?」
「マジか……いや、それでも王都にいるだろ。あの人は王都出身だし」
どうかねー?
「会って、どうするんだよ」
「ちょっと謝りたい。エリックは知ってるだろうが、終戦の時に隊長に暴言を吐いちまったし、当たってしまった。隊長は何も悪くないのにな」
今更、謝られてもって感じなような気がするな。
「ふーん……まあ、会えたらよろしく言っておいてくれや」
「あ、俺も」
当然だが、俺もあれから会っていない。
「ああ。まあ、会えなくてもいいさ。王都がどうなっているのかを見たいっていうのもあるしな」
そこは俺も気にならないでもない。
「数日は滞在するって言ってたが、どれくらいいるんだ?」
ローレンスに聞く。
「うーん、考えてない。ちょっと仕事はするかな」
冒険者だったな。
「仕事中にメアリーに会ったら頼むわ」
「あー、お前の娘な。可愛い子だったな。それに元気いっぱいって感じで好感が持てる」
「やらんぞ?」
30歳を超えてふらふらしている男はノーだ。
「何言ってんだよ。そういうのじゃないわ。しかし、ひねくれ者のエリックが育てて、あんな元気で笑顔がまぶしい子になるのが不思議だ」
「あ、それは俺も常々思っている」
うっさい。
「周りが助けてくれたんだよ」
「ふーん……」
「お前、Bランクって言ってたな? そんなもんか?」
ちょっと意外だった。
「え? お前、Bランクなの? Aになれよ」
アーヴィンもちょっと驚いた様子だ。
「Bランクだってすげーんだぞ」
「いや、それはわかるが、お前なら余裕でAランクだろ。何か問題を起こしたか?」
「きっとそれだな……」
ローレンスだもんな。
「ちげーわ。あまり難しい仕事を受けてないだけだ。あれから安全第一でやっているんだよ」
それでもAランクになれそうな気がするけどな。
「怪しい」
「ちょっとな」
昔から何か問題を起こすのはこいつだった。
逃げ出したのもこいつだし、盗み食いをしたのもこいつ。
全部、連帯責任で巻き込まれた。
「うるせー。それよりもエリックの半分嫁の彼女のことを教えてくれよ。昔からべったりっていつからだよ? 犯罪じゃね?」
「犯罪、犯罪」
「お前らこそ、うるせーよ」
俺達はその後も飲んでいき、色んな話をしていった。
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