第063話 10年
翌日、この日もメアリーが出かけていったのでアンジェラと2人で仕事をしていく。
コンロの納品も終えたし、水筒も落ち着いてきたのでかなりまったりとした感じだった。
そして、夕方になると、メアリーが早めに戻ってきて、アンジェラと駄弁っている。
「この前さー、シャーリーが告られたんだって」
女子の会話だな。
「へー……誰?」
「トビー」
あいつか。
熊から逃げたのに報告しなかったトビーだ。
「服屋の? ふーん……どうしたの?」
「断ったんだって。そんでもって、良い女と評判のアンジェラちゃんに良い断り方を教えてほしいんだってさ」
「そう言われてもね……あんまり気を持たせたらダメよ。シャーリーなんてそんな器用な子じゃないし、はっきり無理と伝えること」
ばっさり切るわけか。
「ふーん、カトリーナや私は?」
「あんたらはパパに聞いてって言いなさい。それで大丈夫」
「神父様もエリックも怖いからなー」
神父様はわかるけど、俺も?
「俺は怖くないぞ」
「いや、怖いよ」
「エリック、剣とかを教えてたでしょ。それで簡単にのしちゃってたし、あの世代の子達はあなたに苦手意識があるの。あと、説教が多いし」
説教は仕方がない。
あいつら、ロクなことをしてなかったし。
「アンジェラちゃんは全然、説教されてなかったよね?」
「そりゃ私は真面目で優しいもの」
昨日、俺が言ったやつだ……
「ギャルのくせに良い子ぶるからなー。要領良いよね」
「神父様とは顔を合わせる度に色々言われるけどね」
あの人はそういうのが仕事みたいなところがあるからな。
「私は神父様どころか、エリックから毎日のように説教だよ。とほほ」
何言ってんだ。
「お前に対しては説教じゃない。注意だ。脱いだ服を洗濯籠に入れろ。起きたら布団を畳め」
「ほらー」
何がほらーだ。
「いや、そこはあんたがしっかりしなさい。洗い物は私がやるけど、ちゃんと水につけておいてちょうだい」
「それそれ。アンジェラちゃん、年代的にこっち側なのに昔から大人側にいるんだよね。だから叱られない」
アンジェラは大人だったからな。
俺達が話をしていると、扉が開き、アーヴィンとローレンスがやってきた。
「おーい、エリックー」
「よう」
「ああ。アーヴィン、早いな」
まだ17時前だ。
「早上がりしてきた」
まあ、10年ぶりの再会だし、仕方がないか。
「そうかい。ローレンス、ウチの娘のメアリーだ」
ローレンスにメアリーを紹介する。
「こんにちはー。メアリーでーす」
メアリーが元気いっぱいに挨拶をする。
「ローレンスだ。メアリーちゃんは冒険者か?」
メアリーは帰ってから着替えていないので冒険者服を着ている。
「うん。Eランク」
「若いのにすごいな。俺も冒険者をやっているからギルドとかで会うこともあるだろう。よろしくな」
「ローレンスさんのランクはー?」
「Bだ」
あれ? Aランクじゃないんだ……
「すげー!」
「長くやっているだけだよ」
ローレンスが自嘲気味に笑った。
「アーヴィン、ローレンス、店を閉めるからちょっと待ってくれ」
片付けないと。
「いや、行ってきて良いわよ。後はこっちでやるから」
「そうだよー。せっかくだから行ってきなよー」
アンジェラとメアリーが勧める。
「そうか? じゃあ、後は任せるわ。あ、ラシェルの世話をしろよ。それからちゃんと戸締りをしてから寝ろ」
「わかったから。エリックも飲みすぎて迎えに行かないといけないことがないようにね。アンジェラちゃんと2人で抱えるのはめんどい」
「わかってるよ。アーヴィン、ローレンス、行こう」
後のことを2人に任せると、アーヴィンとローレンスと共に店を出て、飲み屋に向かう。
「お前、本当に親父になったんだな。随分と大きい子供だけど」
歩いていると、ローレンスが笑う。
「10年も経てばな。アーヴィンのガキも大人になってるぞ」
アーヴィンの息子のパトリックももう18歳だ。
「そうか……なあ、あの子は何歳だ?」
まあ、聞いてくるわな。
「メアリーか? 15歳になった。それで冒険者だ」
「15歳か……お前、いつの間に子供をこしらえていたんだよ」
「養子だ。当たり前だが、メアリーが生まれた時は俺も15歳で軍にいただろ」
こいつらと訓練をしていた時期だ。
「そうだよな……いや、すまん。デリカシーのないことを聞いた」
「別にいいよ。町の連中は全員知っているし、何ならメアリー本人も知っていることだ」
メアリーは記憶があるし、町の連中も少し考えればわかることだ。
「そうかい。しかし、お前の半分嫁の彼女も若いな」
「20歳だな」
「アーヴィン、良い御身分だと思わねーか」
ローレンスがからかうように笑った。
「言葉だけ聞けばそうだな。でも、アンジェラちゃんは昔からエリックにべったりだったし、微笑ましいと思うな」
「お前も結婚しているし、お前らの何が良いのかね?」
ローレンスが軽口を叩く。
「優しいところだろ」
「かっこいいところだろ」
「「お前にはないな」」
アーヴィンと口を揃えた。
「うっせーよ。お前ら、変わらねーな」
ローレンスが楽しそうに笑う。
「お前も全然、変わってないぞ。ちょっと老けたが」
「それこそ、お前らもだ」
10年経てばそうなるか。
俺達は歩いていき、町の中央までやってくると、飲み屋に入る。
時刻は17時前であり、まだ他の客はいない。
「あん? アーヴィンにエリックじゃねーか。お前ら、こんな時間から飲むのか?」
飲み屋の親父が聞いてくる。
「旧友が訪ねてきたんだ」
「へー……そりゃ良いことだ。奥の部屋を使っていいからゆっくり飲めや」
「悪いな。エールを3つと適当に摘まめるもんをくれ」
「あいよ!」
俺達は奥にある個室に向かうと席についた。
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