第060話 旧友
メアリー達はもう大丈夫だと判断したので転移で家に帰ると、腕輪のスイッチを押して元の姿に戻った。
そして、店を開け、アンジェラと残りのコンロを作っていく。
「子供もいつかは大人になるもんよ。成長ね、成長」
そうだな……
「慰めてくれてるのか?」
「落ち込んでるかなーと……」
「いや、落ち込みはしないぞ? 普通に立派になったなーと思っただけだ」
「そう?」
当たり前だ。
「あと、色々と思うことがあった。前にも言ったが、俺はスラムの悪ガキだった。それで15歳になったら冒険者になろうと思っていた。もし、その道に進んでいたらどうなっていたかなと」
成功したか、野垂死んだか……
「エリックが冒険者ねー……かなり上まで行ってそうだし、成功してたんじゃない?」
「わからん。俺の技術はほぼ軍で培われたものだからな……」
「ふーん……まあ、いいじゃん。そういう人生があったから今のエリックがあるのよ。何か不満でもあるの?」
冒険者になっていたらメアリーを拾ってないし、この町に来ることもなかった。
当然、アンジェラとも出会ってないな。
「不満なんかない。メアリーに自分を重ねただけだ。アンジェラはこういう人生だったらどうだったんだろうって考えないか?」
「今は別にないわね。私は町を出る気がそもそもなかったし、魔法を習いたかった。あと、エリックのそばにいたかった」
うん……
「そうか……」
「というか、まだそういうのを考える歳でもないわよ。私はエリックと違って、何もなしえてないからね」
それもそうか。
「さて、作るか」
手が止まってたわ。
「私はできたから後はエリックのやつで50個よ」
あ、アンジェラはもう終わったのか。
同時に作り出したのにこの差があるってことは随分と手を止めていたんだな。
そりゃアンジェラも慰めようとするわ。
「すまん、すまん。これができたらアーヴィンのところに行こう」
「そうね。エリック、一度、家に帰ってもいい? 今日も泊まるとは思ってなかったし、準備がいる」
それもそうだな。
さすがに連泊だと親御さんにも言わないといけないだろうし。
「ああ。悪いな」
「謝ったらダメっしょ」
アンジェラは笑いながらそう言うと、店を出ていった。
「確かにダメだ」
自虐の笑みがこぼれると、さっさとコンロを作ってしまう。
そして、作った50個のコンロをチェックしていると、客が入ってきた。
客は皮の鎧を着た黒髪短髪の冒険者であり、外の冒険者のようだ。
年齢は俺とさほど変わらないように見える。
「いらっしゃい」
多分、水筒だろうなと思い、チェックしていたコンロを置いて、応対する。
「エリックか?」
「ん?」
名前を呼ばれた瞬間、この冒険者をどこかで見たような気がした。
懐かしい……そんな気がしたし、笑っている顔は確実に記憶の中にあった。
「久しぶりだな」
ああ……こいつは……
「ローレンスか?」
「ああ。そうだ。10年ぶりか?」
ローレンス……同じ軍の暗部、黒影団の同僚であり、戦友である。
終戦の時、隊長に暴言を吐き、真っ先に基地から出ていったあのローレンスだ。
「おー……お前、生きてたのか」
「すげー言い草だな。普通に生きてるわ」
あー、さすがに生きてるかはないか。
「いや、お前、何してたんだよ」
「冒険者をやりながら世界を回ってた」
旅をしてたのか。
「いやー、びっくりだ。マジでびっくり」
「俺もびっくりだぜ。アーヴィンの野郎が気になってこの町に来たんだが、アーヴィンが普通に歩いていることもだが、あいつからお前のことを聞いて、驚いたぞ」
確かに驚くかもな。
「アーヴィンに会ったのか?」
「ああ。相変わらず、軽薄そうだった。でも、そのせいで涙が出るかと思ったわ」
アーヴィンは昔からあんな感じで明るかったし、ムードメーカーだった。
そんなあいつが足を失ったのはこちらにもかなり精神的に来るものがあった。
まあ、だからこそ、なんとかしないといけないと思ったんだ。
「俺が義足を作ったんだぞ」
「聞いた。お前、すげーな。確かに昔から器用だったが、そんなことまでできるのかよ」
アーヴィンもだが、ローレンスも軍に入ってすぐからの付き合いになる。
「この店が見えんか? 魔道具店の店長だぞ」
「すげーなー……結構、儲かっているらしいじゃないか。しかも、なんかよくわからないけど、娘と半分嫁の彼女がいるんだって?」
アーヴィンだな。
まあ、あいつしかいないけど。
「色々あったんだよ」
「まあ、そうだろうな。俺も色々あった」
旅をしていればそうだろう。
そして、10年という月日はそれだけのものがある。
「お前、これからどうするんだ?」
「数日はいようかなと思っている。その後は王都に行く」
王都か。
「だったら飲みにでも行こうぜ。話がしたい。今日はダメだけど」
アンジェラと飲むから。
「ああ。アーヴィンからも誘われたし、行こう」
まあ、アーヴィンは誘うわな。
あいつ、酒が好きだし。
「明日でもどうだ?」
「俺はいつでもいいぜ。仕事があるお前らに合わせる」
「じゃあ、アーヴィンと話すわ。これからあいつのところに用があるんでな」
「任せる」
ローレンスが頷くと、店の扉が開き、アンジェラが戻ってくる。
「あ、いらっしゃーい」
アンジェラはローレンスに声をかけると、こちらにやってきた。
「アンジェラ、旧友のローレンスだ」
アンジェラにローレンスを紹介する。
「あ、そうなの? 知り合いが訪ねてきたんだ」
「そうそう。ローレンス、ウチの従業員のアンジェラだ」
ローレンスにもアンジェラを紹介した。
「あー、例の…………お前、良い御身分だな」
うるせー。
「アーヴィンにも言え」
あいつこそ、既婚者だ。
「ははっ、まあいい。エリックやアーヴィンの友人のローレンスだ」
ローレンスがアンジェラに自己紹介した。
「アーヴィンさんも? あー、軍の人?」
アンジェラが首を傾げると、ローレンスが俺を見てくる。
「お前、しゃべってんの?」
「色々とあったんだよ」
というか、アーヴィンの奴がべらべらとしゃべるんだよ。
「戦時中にハニートラップが来なくて良かったな」
来るわけないだろ。
森の中だぞ。
「んなもんに引っかかるか」
「そうかい……まあ、また来るわ。ちょっと町を見て回ってくる」
「ああ。またな」
「アーヴィンもだが、お前が元気そうで良かったよ」
ローレンスはそう言って、店を出ていった。
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