第059話 あっという間
ギルドを出て、東門に向かうと、アンジェラを見つけたのだが、そのまま外に行ってしまったので後を追う。
「こら、危ないから先に行くな」
「エリックに言ってほしかったわー。俺のそばにいろって肩を抱いてほしかったわ」
そんなことしたことないけどな。
いつもしてるみたいに言うな。
「今度、行くから」
多分、肩も抱かないし、そんなキザなことも言わないけど。
「はいはい。今日はメアリーね。随分と遅かったけど、ジェイクに絡まれた?」
「いや、ジェイクは森だそうだ」
真面目に仕事をしているのは良いことだ。
「遭遇しないと良いわね」
「あいつは存在がわかりやすいから大丈夫だ。そもそもすぐに帰る」
ジェイク、でかいし。
「まあねー。じゃあ、なんで遅くなったの?」
「ヴィオラにランクのことを聞いていたんだ。いまいちわかってなかったからな。メアリーも『ランクが上がったぜー』くらいにしか思ってないと思う」
「あー、ランクね。依頼が増えるってだけでしょ。あとはマウントかな? やっぱりDランクよりCランクの方が一目置かれるし」
それもわかるな。
わかりやすい指標の一つだ。
「F、Eが初心者でD、Cが中堅、B、Aが上級者でいいか?」
「そんな感じね。メアリーを見てればわかると思うけど、冒険者はランクに一喜一憂するの」
「わかるな。というか、冒険者じゃない俺でも冒険者はランクで見る」
依頼する立場はそれで判断する。
「ランクがすべてって言ってもいいからね」
「アンジェラみたいなのもいるだろ」
アンジェラは実力的にはもっと上だ。
「もっとダメよ。実力があるのにランクが下なのはサボり屋か問題を起こしている人だから」
サボり屋はともかく、問題を起こしているのは依頼主として嫌だな。
「アンジェラは本業がウチだから前者になるわけか」
「そういうこと。まあ、私は別にランクなんかどうでもいいからね。仕事しなかったら除名って言われてもそのまま辞めるし」
「言われることなんかないだろうけどな」
「わかんないわよー? とんでもない問題を起こすかもしれないじゃない」
アンジェラが?
「ないだろ。お前は真面目で優しい子だし、トラブルを起こすような人間じゃない」
ギャル卒もして、常識ある大人なちょー良い女になった。
「エリックに言われたかったわー。なんでその姿の時に言うかなー?」
すまんな。
俺達はそのまま歩いていき、森の手前までやってくると、立ち止まった。
「さて、薬草の採取ということはいつもの街道にはいないかもな」
「そうは言っても浅いところにいると思うわよ。私も薬草の採取をベティさんから教えてもらったけど、その時も街道が見えるくらいの位置だったわ」
アンジェラは薬草の採取が上手だったが、ベティさんに教えてもらったのか。
「となると、あのルーキー3人も同じ感じだろうな」
「だと思う。例の覗き道から行きましょう」
覗き道って言うな。
俺達は南の方に行き、以前伐採した道を進んでいく。
「久しぶりの森はどうだ?」
「嫌いじゃないわね。ただ、やっぱり夜と昼とでは全然、違う」
森は本当に姿を変えるからな。
まあ、見えなくなるからなんだが。
「夜の森は目を頼るのではなく、感覚を集中させればいいんだぞ」
「私、夜に出ないからそういうのはいいわ」
まあ、そうか。
狭い道を歩いていくと、ふと何かの気配がした
「ん?」
「どうしたの? メアリー達がいた?」
「いや、今、何かいなかったか?」
「そう言われても何もいないけど? また熊か何か?」
アンジェラが周りを見渡す。
「熊ではないと思うが……いや、すまん。マスクを被っているから勘違いかもしれん」
小動物かもしれない。
「ふーん……まあいいけど。それよりもメアリー達よ」
「そうだな」
俺達は遠見の魔法を使いながら奥に進んでいく。
すると、メアリー達の4人の姿を見つけた。
「いた」
「ええ。ちゃんとエリックの言いつけを守ってるわね」
遠くにはメアリー達がいるが、ベティさんとカトリーナがしゃがんで薬草を採取している。
そのすぐそばにはシャーリーが立っており、さらに数歩離れたところでメアリーが周りを見ていた。
「感心、感心」
そう言いながらナイフを取り出すと、後ろに投げた。
「え、何……って、マッドモンキー……」
後ろを見ると、黒色のサルがおり、ナイフを頭に受けて倒れていた。
「知ってるのか?」
黒いサルにしか見えないし、俺が知らない魔物だ。
「珍しい魔物ね。強さ自体はそこまでだけど、巧みに木の上を動くから見つけづらいの」
まんまサルだな。
「さっきの気配はそいつかもしれん」
「ふーん……それにしてもエリックはすごいわね。よく気付くし、全部一撃じゃないの」
「これくらいはな……さて」
引き続き、メアリー達を見守る。
すると、きょろきょろと周りを見ていたメアリーがこっちの方向を見て、止まった。
「え? 気付かれた? 数百メートルは離れてるわよ」
「いや、気付いたわけじゃない。違和感がある程度だろう」
それでもすごいわ。
あいつは攻撃魔法ばかりで遠見の魔法が使えないんだが……
「どうする?」
「ちょっと様子を見たい。あいつの後ろに同じサルがいる」
木の上にマッドモンキーがいるのだ。
「あ、ホントだ。気付くかな?」
「以前は気付かなかった」
そう言って、ナイフを取り出す。
「コボルトの時ね……あ」
メアリーが後ろを振り向いた。
そして、シャーリーに指示を出したタイミングでマッドモンキーが木から飛び降りた。
「気付いたわね」
「そうだな」
マッドモンキーが着地した瞬間、シャーリーが剣を振ったが、簡単に避けられてしまう。
しかし、避けた先にはメアリーが剣を振っており、マッドモンキーを斬った。
マッドモンキーは倒れて動かなくなり、メアリーとシャーリーがハイタッチする。
「上手いな」
シャーリーの剣が避けられることをわかっていた動きだ。
「連携も見事。言うことないんじゃない?」
カトリーナもすぐに立ち上がって、ベティさんの護衛に回っていた。
非常に良い3人だと思う。
「もういいかもしれんな……」
「見守り?」
「ああ。あれだけの動きができれば問題ない。あいつらならオークでも余裕だ」
それほどの動きだった。
無駄がなく、連携もちゃんとできていた。
良いパーティーだと思う。
「エリックが言うならそうなんでしょうね」
「どうでもいいかもしれんが、予想より早く、妹分に抜かれるぞ」
すぐにDランクになるし、Cランクもそう遠くないと思う。
「どうでもいいわね。私、魔道具店の副店長だし」
そうだな……
「帰ろう。メアリーはもう大丈夫だ」
「寂しい?」
「その感情もあるが、嬉しさの方が強い」
それとあの泣き虫がちゃんとした大人になったのかと思うとホッとする。
「そう?」
「アンジェラ、昨日もだったが、今日も泊まっていってくれないか? 例のワインを飲むから付き合ってくれ」
メアリーが初報酬で買ったワインだ。
「うん。そんなに飲めないけど、一緒に飲みましょう」
普段まったく酒を飲まないアンジェラが頷いてそっと背中に手を置いてくれた。
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