第004話 ノリノリ? ★
「エリック?」
「はい。声が同じですし、一緒にアンジェラさんがいるんです」
何してんだ、あいつ?
仕事はどうした?
「なんであいつがそんな格好をして冒険者登録をするんだ?」
「さあ? ただ、メアリーちゃんが関係しているような……」
あー、それだ。
冒険者登録できるようになる年齢を20歳に引き上げろとか、女性は冒険者にならない方がいいんじゃないかとか、すげー絡んできてウザかった記憶がある。
要は娘が心配なんだろうが、ついには変装してまで見に行くわけだ。
「ハァ……それで登録は?」
「どうしましょう? エリックさんって冒険者だったんですよね?」
そう聞いているが……
別人を名乗っているなら新規登録だな。
でも、血の審査があるし、一度登録しているならエリックってわかるから新規登録はできないぞ。
「審査は普通にしよう。それで諦めるかもしれん」
「わかりました。それでお願いします」
「わかった」
引き出しから新規登録用のカードを取り出し、立ち上がった。
そして、ヴィオラと共に部屋を出たのだが、すぐに足が止まった。
何故なら、普段は騒がしいギルド内がシーンと静寂に包まれているし、奥にいる悪ガキ共が呆然と一人の男を見ていたからだ。
「お前がフルフェイス・マスクマンか?」
顔だけじゃなく、外套で身体も隠している。
ホント、怪しい。
「そうだ」
うん、エリックの声だ。
そして何よりも嫌そうな顔をしているアンジェラがこいつはエリックだと言っている。
アンジェラは昔からエリックを慕っていたし、べた惚れだった。
魔法も師事していたし、今ではエリックの店で働いている。
何度か夜中に一緒に歩いているのを見たことがあるし、飲みの場になると、あの2人はデキていると噂になっている。
そんな彼氏がこんな格好をしていたらそんな顔になるだろう。
「冒険者登録をしたいと聞いたが、合っているか?」
ツッコミどころが多いが、スルーして、粛々と仕事をする。
「ああ」
しかし、向こうはこっちが見えてるのか?
まあ、エリックの店は変なものも売ってるからそういう魔道具なんだろうが…
「だったらまずはこのカードに血を垂らしてくれ」
そう言って、カウンターにカードを置く。
「わかった」
フルフェイスは頷くと、人差し指を見る。
そして、わずかに魔力を感じると、フルフェイスが人差し指をカードの上に置く。
魔法か……エリックは魔道具店の店主だから当然、魔法も使える。
「これでオーケーだ」
そう言って、カードをヴィオラと見てみるが、特に反応もない。
「あれ?」
「普通だな」
既に登録されている場合は反応が出るはずだ。
「だから私はエリックではないと言っただろう」
うーん……本当に別人?
いや、元冒険者というのがホラか。
となると、マジでこれで登録になりそうだな。
フルフェイス・マスクマンって……
「そうか……次に試験がある」
「実力があるかどうかか?」
娘が受けたから知ってるわな。
「ああ。魔法の試験と実技試験があるがどうする?」
魔法の試験は魔法を確認する。
実技試験は実際に演習をしてみて、実力があるかを確認する。
なお、こいつの娘のメアリーは何故か両方を受け、合格していた。
「魔法で良かろう。何を見せればいい?」
魔法か……
詳しくは知らないが、こいつ、アンジェラの魔法の師匠でもあるんだよな……
「実力があることがわかればいいから何でもいいぞ」
「そうか」
フルフェイスが頷くと、姿が消えた。
「え?」
「あん?」
どこに――
「これでいいかな?」
後ろから声がしたので慌てて振り向く。
すると、そこには何故かフルフェイスが立っていた。
「はえ? いつの間に?」
「どういう……」
何だ、これ?
いつの間に動いた?
というか、気配をまったく感じなかったぞ。
「魔法だよ」
フルフェイスがそう言うと、またしても姿が消える。
今度は気配が消えていないので正面を見た。
すると、顔が見えないが、ドヤ顔を浮かべてそうなフルフェイスと変わらずに嫌そうな顔をしているアンジェラがいた。
「これで実力があるとわかっただろう?」
何者だ、こいつ……いや、エリックか。
しかし、なんかキャラを作ってて笑えてくるな。
普段は愚痴ばっかりで不愛想なくせに。
「ああ。わかった。登録はしよう。ヴィオラ」
よくわからんが、試験も問題ないし、登録してしまえ。
「……はい」
ヴィオラは頷き、カードにフルフェイス・マスクマンの名前などを書き込んでいく。
「仕事はどうするんだ? 早速、何か受けるか?」
受けるとしても森だろうな……
「いや、今日は職場の確認に留めたい。森でも見てくるよ」
はいはい。
メアリーのところね。
路銀が尽きたって設定じゃねーの?
「あの、ギルマス……」
ヴィオラがカードを渡してくる。
「フルフェイス・マスクマン、今日からお前は冒険者だ。まずはFランクからだが、頑張ってくれ」
この謎の男もきっとメアリーが冒険者稼業に慣れてきたらいなくなるだろう。
「ああ。感謝する。アンジェラ、森まで案内を頼む」
「はーい……」
アンジェラ、すごく嫌そうだな……
2人はこの場を離れると、ギルドから出ていった。
「え? 何、あれ?」
「すんげーのを見たぜ」
「瞬間移動したぞ、おい」
「かっけー」
悪ガキ共が騒ぎ出した。
ガキ共が好きそうだし、噂になりそうだ。
「ギルマス、どうします?」
「ほっとけ。店のこともあるし、娘の冒険者っぷりをちょっと見たら満足して、店に帰るだろ」
アンジェラまで連れ出してたし、今、店には誰もいないはずだ。
「エリックさんってああいう人だったんですね」
「あいつも1人で娘を育てて苦労してきたから抑圧されたものでもあるんじゃないのか?」
しかも、メアリーは養子だ。
死んだ知り合いの子供がメアリーであり、行くところがなかったので引き取ったらしい。
10年前にこの町に移住してきた時にそう聞いた。
「メアリーちゃん、ショックを受けないかな? あの子もお父さんっ子だから」
メアリーがこの町に来た時は5歳であり、当然、物心がついていたため、エリックが本当の父親じゃないことは知っている。
それでも仲の良い親子だし、町の誰しもが普通の親子だと思っている。
「別人と言い張るんだろ。それで信じる。メアリー、バカだし」
明るく、素直な子だが、ちょっと抜けている。
「お父さんに似ちゃったんですかね? エリックさん、いつも若者は仕事しないってぶつぶつ言ってるくせに自分が店を放り出して遊んでいるじゃないですか」
こいつも言うな……
まあ、ヴィオラはエリックと家が近所だし、散々、説教されていたんだろうな。
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