第039話 実は神父さんもノリノリ
「エリック……大丈夫なの?」
アーヴィンと神父さんと話した内容を伝えると、アンが聞いてくる。
「たいしたことじゃない。この町の軍の規模から考えて、半分いなくても十分に対処できる。それに魔物も町を襲うのが目的ではなく、逃げるのが目的だからすぐに治まる」
「でも、私もメアリーも冒険者よ。緊急依頼が来るかもしれない」
緊急依頼とは災害時などにギルドが冒険者に要請する依頼であり、基本的には断れない。
とはいえ、断ったらペナルティがあるわけでもないし、強制力はない。
「理由をつけて断ればいいだろ」
「断る人はいないわよ。町に関わることだもの」
まあ、そうなんだよな。
自分の命は当然、大事だ。
しかし、それと同じくらいに家族もこの町も大事なのだ。
「多分だが、緊急依頼が来る可能性は高い。でも、そこまでのことじゃない」
そうなるようにするのだ。
「そう? エリックは守ってくれる?」
「もちろんだ」
「ふふっ」
上機嫌なアンの頭を撫でる。
「お前も言ってた通り、俺達の本番は明日からだ」
俺達はあくまでも魔道具屋なのだ。
「それもそうね……さてと、そろそろ夕食の準備をしようかな」
「ああ」
アンジェラと共にリビングに戻る。
そして、アンジェラが夕食の準備を始めると、メアリーが帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえり。森はどうだった?」
「今日は全然、成果なし。昼で帰ったんだけど、その後は3人で今後の相談」
魔物に遭遇しなかったってことか。
やはりこれは想像通りの可能性が高いな。
「明日は店の方を頼むぞ」
「任せといて! アンジェラちゃーん、手伝うー」
メアリーがキッチンに向かう。
「その前に着替えて手を洗ってちょうだい」
「ほーい」
2人が夕食を作り、皆でそれを食べた。
そして、食後は2人のカードゲームを眺めていく。
「アンジェラちゃん、そろそろ帰らなくていいの?」
「今日は泊まり」
「ほー……ほー……」
メアリーがアンジェラと俺を見比べる。
「メアリー、アンジェラの言うことをよく聞けよ」
「ん? エリックは?」
「俺はちょっとアーヴィンと神父さんと会う約束がある」
「えー……飲みー? せっかくアンジェラちゃんが泊まるのにぃ……地味にエリックがアンジェラちゃんを嫁扱いするよね。自分は飲みに行って、奥さんに子守りを頼む感じ」
色々とツッコむところがあるが、お前は子守りでいいのか?
「話があるんだよ。いいか? 絶対にアンジェラの言うことを聞けよ」
「はいはい。アンジェラちゃんも大変だねー。私は絶対にこぶつきの男とは結婚しないね」
「自分で言う……?」
いや、ホントに。
「とにかく、頼んだぞ」
「あーい」
メアリーが頷いたので立ち上がり、部屋で準備をした。
そして、店の方に行くと、2人を待つ。
「さて、そろそろか」
待っていると、時刻は約束の21時前になる。
すると、店の扉が開き、アーヴィンと神父さんがやってきた。
「待たせたな……って、それかよ」
「エリック……」
2人が呆れている。
「エリック? この店の店主は奥にいるよ。私は代わりを頼まれたフルフェイス・マスクマンだ」
エリックはカードゲームをしているよ。
「こいつ、マジか……」
「何か抑圧されているものがあるのかもしれんな」
精神分析すんな。
「それよりも早く行こうじゃないか。町のピンチだ」
「そうだな……」
「やれやれ……」
俺達は店を出ると、暗い街中を歩いていく。
そして、東門にやってきたのだが、当然、門は閉じている。
「ちょっと待ってろ」
アーヴィンがそう言うと、門番に話をしに行く。
「神父よ、カトリーナは?」
「家だね。ただ、出ることになるだろう」
「わかるか?」
「ああ。ここからでも嫌な雰囲気をひしひしと感じる」
神父さんが門を見る。
いや、見ているのはその先だ。
「私もだ」
門の向こうから明らかに悪い気を感じる。
「待たせたな。話を通したから門を開けてくれる。とはいえ、すぐに閉じるぞ」
アーヴィンが戻ってきた。
「帰り道はないということか……まあ、このくらいなら飛べるが」
町を囲う壁は高さが10メートルもない。
「私も魔法で飛べるね」
神父さんもらしい。
「俺だけかい……」
アーヴィンは足がな……
でも、よじ登れるだろう。
「安心しなさい。担いで飛べるよ」
「その際はお願いします」
まあ、そんなことにはならないがな。
というか、転移で帰れる。
「行こうか」
「ああ」
「さて、やるか」
俺達が歩いていくと、門が開いた。
そして、門を抜けると、すぐに閉じられ、辺りは一気に暗くなる。
「ライトの魔法は?」
「俺は大丈夫だ」
「私もだ。暗視の魔法が使える」
神父さんも暗視が使えるのか。
神父さん、軍にいた時は俺達と同じようなところにいただろ。
俺達は真っ暗な街道を進んでいくと、森の前までやってくる。
「森が叫んでいるな」
「その表現はよくわからないが、動いているように見える」
「スタンピードでも起きそうだね。まあ、そこまでにはならないと思うけど」
雨が降らず、もっと燃えていたら魔物が一斉に逃げてきて、町を襲うこともあったかもしれないな。
この森はそこまで強い魔物がいないし、可能性はかなり低いが……
「さて、アーヴィン君、神父殿、どうする?」
2人に確認する。
「動いているのはゴブリンやコボルトなんかの魔物だな。もしかしたらスケルトンもいるかもしれない」
どちらにせよ、そんなに強くない。
「その辺りは兵士や冒険者に任せればいい。私達がやらないといけないのは大本となっているオークだ」
その通り。
「奥に行くには魔物の群れを突破しないといけないが、行けるかね?」
2人に再度、確認する。
「問題ない」
「さっさと行こう。私は明日も仕事なんだよ」
皆、そうだよ。
「では、まっすぐ進んでオークを叩こう。助力はせんぞ」
「いらんわ」
「オークを狩る。それだけだよ」
まるで相手にならないって言いたげだ。
まあ、実際、そうなんだろうな。
「行こう」
頷き、駆け出すと、2人と共に森の中に入った。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




