第003話 ギルドへ ★
俺とアンジェラは店の扉に【外出中】の看板をかけ、ギルドに向かう。
町中を歩いていると、町の人がこちらを見て、すぐに目を逸らしていた。
「てんちょー、すげーひそひそされてるよー」
アンジェラがすごく嫌そうな声を出す。
「アンジェラ、私の名前は?」
「キャラ作りだしたし……フルフェイス・パンツマンだっけ?」
「マスクマンだよ! 何だ、その変態みたいな名前は!」
マジもんのやべー奴だろ!
「一緒だよ……」
全然違うわ!
俺達は歩いていき、冒険者ギルドにやってきた。
冒険者は魔物退治や護衛などの仕事をする何でも屋である。
正直、見方によっては底辺の仕事ではあるが、活躍できたら儲かるし、名前も売れる。
実際、歴史に名前を残す伝説と呼ばれる冒険者も少なからずいるのだ。
だからこそ、子供達がそういうのに憧れる。
俺達の代は戦争があったから馴染みが薄かったが、平和になった今はガキ共が木の棒を持って、冒険者ごっこをするくらいには人気なのだ。
「ギルドか。冒険者としてここに来ることになるとはな……」
ギルドには何度も来たことがある。
しかし、それは依頼を頼む側としてだ。
「店長、本当に行くの? 今ならまだ引き返せるよ?」
「問題ない。ちゃんと考えてあるんだ」
「ホントかな……」
俺達は扉を開け、ギルドの中を覗く。
ギルド内は奥に受付があり、手前にはいくつかのテーブルがあった。
受付では職員が仕事をしているが、手前のテーブルでは冒険者の悪ガキ共が仕事も行かずにわいわいと騒いでいた。
中にはまだ午前中だというのに酒を飲んでいる奴もいる。
「まったく……」
仕事しろよなと思いつつ、中に入る。
すると、悪ガキ達がこちらを見て、唖然とした顔で黙りだした。
あれだけ賑やかだったギルド内がシーンとなっている。
「失礼」
そう言って、奥にある受付に向かう。
悪ガキ共はそのままの体勢で首だけを動かし、俺を追うように見ていた。
「こんにちは」
受付に向かうと、肩ぐらいで切り揃えられた茶髪の受付嬢のもとに向かい、声をかける。
「こ、こんにちは……えっと……」
受付嬢がいつもの笑顔が消え、困惑していた。
この子はヴィオラという名前であり、地元民なため、当然知っている。
なんなら家が近所だったりする。
ヴィオラは人懐っこく、おしゃべりな子でウチの店に来た時もアンジェラとひたすら駄弁っている子だ。
「私はフルフェイス・マスクマンという旅の者だ」
「フ、フルフェイス?」
「ああ。フルフェイスが名でマスクマンが姓だ」
「ハ、ハァ? 魔道具屋のエリックさんじゃないんですか?」
バレるの早っ。
「エリック? 知らんな」
「え、でも、アンジェラさんと一緒にいますし、籠ってますけど、声がエリックさんですよね?」
「声が似ているのかな? ゴホッ、ゴホッ。すまんが、ちょっとのどを痛めているんだ」
声もどうにかしないといけないな。
「えっと……」
ヴィオラがアンジェラを見る。
「ああ、この子は町中で会ってな。ここまで案内してもらったんだ」
偶然。
たまたま。
「そうなんですか……フルフェイスさんはなんでそんな仮面を被っているんですか?」
仮面じゃないんだがな……
「これは兜だ。顔を隠しているのは10年前の戦争で顔に火傷を負ったから人に見られたくないからだな」
「そ、そうですか……えーっと? ご用件は何でしょう?」
「旅をしているのだが、路銀が尽きてな。仕事をしたいのだ。そういうわけで冒険者登録をしたい」
「あー、でしたら復帰手続きになりますね」
なんでだよ。
「私は冒険者になったことがないので新規だ」
「え? でも、冒険者をやっていたって言ってませんでしたっけ?」
なんでだよ。
「君とは初対面だが?」
「あー、はいはい。でしたらこちらをお願いします」
ヴィオラがカウンターの下から1枚の紙を取り出した。
どうやら申請用の書類のようだ。
「書こう」
俺は紙に必要事項を書いていく。
名前はフルフェイス・マスクマンだし、年齢も本当は30歳だけど、25歳にしておいた。
他意はない。
その他にも特技とかを色々書いていく。
「剣も魔法も使えるんですか?」
書いている紙を覗いているヴィオラが聞いてくる。
「一人旅だから色々とできるんだ」
「へー……25歳?」
「そうだ」
嘘つけって顔をするんじゃない。
「こんなもんでいいか?」
書き終えたのでペンを置く。
「じゃあ、これでやってみます。ちょっと待ってくださいね」
ヴィオラがそう言って、立ち上がり、奥にあるギルマスの部屋に向かった。
◆◇◆
『ギルマス、ちょっといいですかー?』
書類仕事をしていると、ノックの音と共に受付のヴィオラの声が聞こえてくる。
「いいぞ」
そう答えると、困った顔をしたヴィオラが部屋に入ってくる。
「どうした? トラブルか?」
まったく、あの悪ガキ共は……
「いえ……新規に冒険者登録をしてほしいという人が来ています」
ヴィオラはそう言って、紙をデスクに置いたので見てみる。
「ふーん……フルフェイス・マスクマン? 変な名前だな」
少なくとも、ウチの町にはいない。
「なんか顔を覆うような兜を被っていて、顔が見えません。さらには黒い外套で超怪しい人です。旅人を名乗り、路銀が尽きたから冒険者になりたい、と……」
よくわからんが、姿を隠しているのか?
それでこの名前か……そりゃ怪しいわ。
「犯罪者か?」
「いえ、多分ですけど、魔道具屋のエリックさんです」
は?
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