第028話 デート
コーヒーを飲み終えると、家を出て、ギルドに向かう。
「今日はどうするんだ? やはり討伐や採取か?」
「まあ、そんなところね。メアリーやヴィオラが言うように勘が鈍ったらダメだから適当に魔物を狩る。後は採取をしながらピクニックってところ。あ、お弁当を作ってきたから」
ほぼデートだな。
というか、弁当まで用意してくれたのか。
アンジェラ、何時に起きたんだろう?
「悪いな。アンジェラがいつも森に行く時はそんな感じで討伐や採取なのか?」
「基本的に私はパーティーに入れてもらう形になるからその時々で方針は変わるわね。部外者だし、疎まれるのも嫌だからあまり意見を言わないようにしてるの。あ、お弁当はエリックにしか作ったことない」
あ、はい。
「正直、ギルドはお前にメアリー達のパーティーに入って欲しいんだろうな」
経験もあり、大人な魔法使いだ。
未熟なあの3人にはぴったり。
「でしょうね。エリックもそれだったら安心するでしょ」
間違えたらダメ、間違えたらダメ。
「心配が2人になるだけだ。それに副店長に抜けられたら困る」
「そうでしょうねー」
すごい笑顔になった。
どうやら100点の回答だったようだ。
ご機嫌なアンジェラと共にギルドにやってくると、中に入る。
すると、いつもはたむろっている冒険者がいない。
「誰もおらんな」
奥にヴィオラがいるだけだ。
「この時間はいないわね。まだ8時前だもの」
さすがに早いし、ガキ共は寝てるか。
俺達はちょっと寂しいギルド内を進み、奥のヴィオラのもとに向かった。
「おはよう、ヴィオラ」
「よう」
ヴィオラに挨拶をする。
「おはようございます。今日もエリックさんですね」
「いつもエリックさんだよ」
何を言ってんだ?
「そうですか。しかし、今日はアンジェラさんもですか。意外と珍しい組み合わせですね」
「そういやそうだな」
アンジェラと2人でギルドに来たことはない。
依頼をするにしてもどちらかが店番をするし。
なお、フルフェイス・マスクマンは除く。
「それでどうされたんですか? また魔石か何かです?」
ヴィオラが首を傾げた。
「いや、依頼じゃない。大きい仕事が落ち着いたし、最近、アンジェラが冒険者の仕事をしてないってことでそっちの仕事だな」
「あー、なるほど。アンジェラさん、もうひと月以上は仕事してないですもんね」
「こっちの仕事があってな」
「例の持ち運び用コンロですね。好評ですし、注文があったら連絡しますね」
これは来るな。
やはりジェフ爺さんに追加の部品を頼んでおくか。
「悪いな」
「いえいえ。それでアンジェラさん、ひと月ぶりですけど、ギルドも嬉しいです」
ヴィオラがアンジェラを見る。
「まあねー。さすがに空きすぎたわ」
「それでエリックさんが付き添いですか? もう少しすれば、他の冒険者さん達も来られますし、いつもみたいに混ざる感じじゃないんです?」
「エリックが心配って言うから」
「デート感覚か……」
ヴィオラがボソッとつぶやいた。
「何か?」
「アンジェラさん、いつものギャルはどこに行ったんです? いつもは『チョリース』じゃないですか」
あと、『おはー』ね。
「ギャル卒。私も大人だから落ち着かないと」
「そんな装飾品をチャラチャラさせて何を言ってんですか。アンジェラさんってわかりやすいですよねー」
「うっさい。あんたは仕事しろ」
「はいはい。今日はどうされるんです?」
ヴィオラが呆れながらも受付の仕事をする。
「魔物退治と採取を適当に」
「護衛の仕事とかありますよ」
「デートの邪魔」
「ほらー……まあ、王都までですから冗談ですよ」
さすがに明日も仕事があるから泊まりがけは無理だな。
「じゃあ、そういうわけで行ってくるわ」
「お気を付けて」
俺達はギルドを出ると、東門に向かった。
そして、町を出ると、森に向かって歩いていく。
今日は当然、南に行かず、まっすぐ街道を進む。
「外は風が気持ちいいな」
「まあね……あー、フルフェイス・マスクマンは感じられないもんね」
フルフェイスにマントだからな。
ラシェルに乗った時もそこまでだった。
「あの格好は仕方がない」
「あのさー、今更だけど、大丈夫?」
ん?
「何が? ぎっくり腰にはならんぞ」
「そうじゃなくて……エリック、戦うのが嫌っぽいし」
嫌、か……
戦いが……人の生き死にが好きか嫌いかで言われたら嫌いだ。
戦争だって早く終わって欲しいと思っていた。
この気持ちは皆と同じだ。
ただ、勝利を求めていた俺達にはあの結果が辛かった。
「戦争が終わった時にもう戦わないと誓ったな。剣を置こうと」
実際の武器はナイフとかだけどな。
「別に今から本当にピクニックにしてもいいよ?」
「剣は置いたが、それは戦いで金儲けをしないという意味だ。実際はメアリーやお前を守るために戦わないといけないし、その時は迷いなく戦うさ。フルフェイス・マスクマンだってそうだし、今だってそうだ」
やる時はやる。
やらない時はやらない。
「守ってくれるの?」
「ずっとそう言ってるだろ。1000人の兵が来ても守ってやるよ」
抱えて逃げればいいな。
俺の足には追い付けまい。
「ふーん……」
アンジェラがにやにやしながら腕を組んできた。
「いや、さすがに離れろ。もう森だぞ」
あと10メートルといったところだ。
「じゃあ、帰ってからにする」
メアリーがいるんだけどな。
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