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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第1章

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第026話 もぐもぐ


「確かに30個だな」


 アーヴィンが持ち運び用コンロを確認し終えた。


「良かったらまた買ってくれよ」

「そうする。ちょっと待ってろ。金を持ってくる」


 アーヴィンがそう言って、奥に向かう。

 少しわくわくしながら待っていると、アーヴィンが札束と一緒に書類を持って戻ってきた。


「おー……」


 札束だ。


「150万ミルドな。確認して、サインを書いてくれ」

「わかった。アンジェラ」

「うん」


 俺とアンジェラは手分けをして、10万ミルドずつに分け、数えていく。


「そういえば、演習っていつからなんだ?」


 数えながらアーヴィンに聞く。


「2、3週間後だな。当初の予定では東の森を抜け、さらに奥にある山まで行く予定だったんだが、急遽、北の森に変わった」


 盗賊が出たからか。


「見回りを兼ねるわけか」

「他に盗賊なんかがいないかの確認と魔物の討伐だな。ご苦労なことだ」


 アーヴィンはその演習には参加しない。

 義足があるとはいえ、その足ではさすがに遠征は厳しいからだ。


「軍は大変だ」

「まったくだ。俺は指導員だから楽なもんだけどな。あ、そういえば、この前、神父さんが来たぞ」


 軍に教会関係者が来ることは珍しくない。

 命を懸ける兵士は祈りや神の加護を求めるからだ。


「何て?」

「お前に心底、呆れてた」


 だろうな。


「ウチの子が神父さんの娘のカトリーナと組んでるから挨拶に行ったんだよ。そしたらまあ、説教だ。うるせー、うるせー」

「ギルドの冒険者もエリックに対して、そう思ってんじゃない?」


 アンジェラがツッコんできた。


「ははっ! そうだろうな!」


 アーヴィンが楽しそうに笑う。


「うるせー。神父さんは何て?」

「エリックがいい年してよくわからない遊びを始めたってぶつぶつ言ってたぞ」


 フルフェイス・マスクマンのことだろうな。


「ほっとけ」

「あと、さっさと結婚しろってよ」


 それも聞いたな。


「そうかい……確かに150万な」


 金がちゃんとあったので書類にサインをする。


「じゃあ、また頼むわ」

「こちらこそ。じゃあな」


 俺達は屯所をあとにし、店に戻る。

 すると、【外出中】にしておいた看板が営業中に変わっていた。


「ん?」

「メアリーが帰ったみたいね」


 アンジェラにそう言われて店の中を覗くと、カウンターにメアリーの姿が見えた。


「ホントだ」


 俺達は扉を開け、店に入る。


「おかえりー。デート? 真面目に仕事をしろよー」

「ただいま。例のコンロをアーヴィンのところに納品してきたんだよ」

「おー! あれかー! 儲かった?」

「ああ。おかげさまでな。お前も手伝ってくれてありがとうな」


 冒険をしながら休みの日に組み立てを手伝ってくれたのだ。

 大変だろうにね。


「全然いいよー! それにしてもめでたいねー!」


 ホントにな。


「メアリーはどうしたのよ? まだ昼前なのにもう帰ってきたの?」


 アンジェラがメアリーに聞く。


「それがねー……カトリーナが事故っちゃったんだよ」


 カトリーナが?


「事故? 大丈夫なの?」

「ううん、大丈夫じゃない。木の枝がローブに引っかかって、パンツが見える状態になっちゃった。カトリーナがさめざめと泣き、今日は解散」


 しょうもないな。

 しかし、それを言ってはいけないのを知っているのが娘を持つ父だ。


「それは災難ね」

「うん。アンジェラちゃんはパンツを見られてもオーケーなギャルだけど、カトリーナはね……」


 教会の子だからな。


「いや、私もオーケーじゃないから」

「そんなスリットが入ってるのにぃ?」


 お前も短いスカートだろ。

 この前のラシェルにスカートを引っ張られた時に見えてたぞ。


「私は見えないから。それよりも無事に帰れたわけ?」

「紳士のシャーリーが外套を持ってたからそれで隠して帰った。着替えてから再度、行く空気でもなかったから今日は午前中まで」


 まあ、しょうもない理由だが、メンタルは大事だからな。


「ふーん、それで店番ね」

「お客さん、来てないよー。エリックとアンジェラちゃんは昼にしなよ。私も弁当を食べるからさ」


 メアリーがそう言って、弁当のパンを食べだす。


「アンジェラ、昼食を頼むわ」

「ええ」


 アンジェラは頷き、リビングに入っていった。

 俺は金を金庫に入れ、帳簿を付けていく。


「エリックー、いくら儲かったのー?」


 パンを食べているメアリーが聞いてくる。


「150万で売れた。そこから魔石や部品の料金を引くと117万ミルドだな」

「おー! すげー!」


 まあ、ここに人件費やらもかかるんだが、それでも大幅なプラスなのは間違いない。


「そういえば、お前はどうなんだ? 儲かってるか?」

「あ、そうそう。家にお金を入れようと思うんだけど、どれくらいだろう?」


 ガキンチョが大人になって……


「入れんでいいわ。お前だって店を手伝ってくれてるだろ」

「そうかなー?」

「ウチは余裕もあるし、好きなものを買え」

「じゃあ、そうするー。お金を貯めて、王都にでも行こうかな? ヴィオラちゃんにめっちゃ美味いケーキ屋があるって聞いたし」


 行け、行け。


「そん時はお使いを頼むわ」

「はいはーい。しかし、カトリーナは行けるかな? その辺も作戦会議だな」


 楽しそうだ。


「メアリー、手伝ってくれた礼にこの前言っていた光の剣をやる」


 帳簿を書き終えたのでメアリーに棒を渡す。


「あり? もうできたの?」

「片手間に作ってたんだ。予想より早くできそうだったんでな」

「ほー……」


 メアリーがパンを咥えながら立ち上がった。


「魔力を込めれば剣が出る」


 そう言うと、メアリーが魔力を動かした。

 すると、ブーンッという音と共に黄色い光の剣が現れる。


「ふへー!」


 訳:すげー!


「剣には触れるなよ。一応、お前のショートソードと同じ長さにしているが、次の冒険でちょっと練習しておけ」

「ふぁふぁっふぁー」


 訳:わかったー。


「あとそれは最終兵器だ。何しろ魔力を使うから普段使いすると、いざって時に魔法が使えなくなることもあるからな」


 あと、あんまり見られたくない。

 だって、フルフェイス・マスクマンとお揃いだし。


「ほっへー」


 訳:オッケー……いや、パンを食え。


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― 新着の感想 ―
メアリーちゃんが王都とかに行って貴族の生まれだってバレたらどうしよう? あーこの調子だとバレへんか。
黒く色が変わるとかで、光らないようにしたり、音がが出なければ、暗殺や切り札には最高なんだけどなぁ。。譲れない所なんだろうな。
訳が書いてある親切な小説は大好きです ( ゜∀゜)ノ
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