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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第1章

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第025話 納品


 神父さんと話をしてから2週間が経った。

 あれからひたすら持ち運び用コンロを作成しており、アンジェラも残業していたし、メアリーも休みの日は手伝ってくれた。

 そのおかげもあり、想定よりかなり早いペースでものを作れていた。


「できた!」


 今日も朝から作っていたが、最後の1個をアンジェラが組み立て終えた。


「できたなー。30個は大変だったが、次に繋がる」


 ヴィオラから聞いたが、冒険者の中でも評判が良いらしい。


「もう慣れたもんだし、次はもっと早く作れるわね」


 確かにな。

 次に備えて早めに部品や魔石を押さえといても良いかもしれない。


「よし、納品してその辺も考えてみるか。実は今回のこれの派生で良いものを思い付いたんだよ」


 記憶から引き出したとも言う。


「あまり期待できなそう……」


 失敗も多いけど、当たる時は当たるのだ。

 自称、異世界エジソンだぞ。


「楽しみにしておけ。ちょっとアーヴィンのところに行くが、アンジェラはどうする?」

「行く。大事な仕事だし、私もついていくわ」

「じゃあ、行くか」


 俺達は完成した持ち運び用コンロを空間魔法に収納すると、玄関の扉に【外出中】の看板をかけ、歩いていく。

 アーヴィンがいる軍部は町の南にあるのでまずは中央に行き、そこから大通りを南に行く必要があるため、まずは町の中央にやってきた。


「あ、そういえば、神父さんがお祈りに来いって言ってたぞ」


 すごい今更だけど。


「めんどい、だるい、アクセを外せってうるさいから行かない」


 ギャルは絶対の拒否だ。


「まあ、俺も行かないけどな」

「そそ。教会なんて人生で1回しか行かないでいいわけ」

「葬式か?」

「訂正。2回」


 そうだね。


 俺達は教会をスルーして、南に向かう。

 南は比較的住宅が多いが、徐々にそれも減り、牧場が見えてきた。


「あー、ラシェルを連れてきてやれば良かったかな?」

「今度にしましょうよ。今日は仕事」

「それもそうだな」


 俺達はそのまま歩いていくと、牧場近くにある軍の屯所にやってきた。

 屯所は東西南北の4か所にあるが、この南部の屯所が本部である。

 そのため、建物も3階建てと大きく、訓練所などもあり、施設も充実している。


「――アンジェラ」


 アンジェラを呼ぶ男の声が聞こえたので振り向く。

 すると、そこには真面目そうな顔した黒い短髪で軍服の男がいた。

 確か、アンジェラと同い年のサムだ。


「サムじゃん。おひさー」


 アンジェラがいつものように軽い挨拶をする。


「ああ。こんなところでどうしたんだい?」

「仕事に決まってんじゃん。じゃなきゃ、来ないっしょ」

「それもそうだね。魔道具店に就職したんだっけ? アンジェラは魔法の腕もすごいし、軍に入れば良かったのに」


 俺はそう思わない。

 このチャラチャラしたギャルが規律の厳しい軍は絶対に無理。


「きつそうだから嫌。それなら冒険者でいいね。つーかさ、あんた、よく軍なんて入るね」

「町を守る大事な仕事さ」


 それはわかる。

 良いことを言うな、サム。

 俺も国を守る軍人だったからよくわかるのだ。

 もっとも、俺は暗部だったけどさ。


「お偉いことで」

「アンジェラ、今度、食事でもどう? 久しぶりに話そうよ」


 おや? 不穏な気配が……


「忙しいからダメ。ってか、あんた軍なら寮でしょ。ダメじゃね?」

「それはいくらでも――」

「サム!」


 サムの後ろには偉そうな髭を生やした軍人がおり、怒鳴っていた。


「はっ!」

「訓練はどうした!?」

「すぐに行きます! ごめん、行くね」


 サムは走って、訓練所の方に向かったのでその後ろ姿を眺める。


「仲良かったのか?」

「普通」

「向こうはそう思っていないような気がしたぞ」


 食事に誘ってたし。


「おっかしいなー……あいつ、ヴィオラ狙いじゃなかったかな?」


 ヴィオラとアンジェラはタイプが全然違うような気がするんだが……

 ヴィオラは小柄で可愛らしい系だし。


「気が変わったんじゃないか?」


 超良い女だし。


「どうでもいいや。それよりもアーヴィン、アーヴィン」

「それもそうだな」


 俺達は屯所に入ると、受付の奥にアーヴィンを見つけた。


「アーヴィン」

「アーヴィンさん、やっほー」


 俺達が声をかけると、アーヴィンが気付いて、こちらにやってきた。


「よう、エリックにアンジェラちゃん。アンジェラちゃんは今日も可愛いね」


 アーヴィンがいつもの軽口を叩く。


「知ってるー。さっきもそこでナンパされた」

「それは困ったもんだね。いや、本当に」


 ここ軍部だもんな。

 サボって何してんだって話だ。


「アーヴィン、持ち運び用コンロを納品しにきたぞ」


 本題に入る。


「おっ、早いな」

「頑張ったからな。キースがちょっと危なかったが」

「それなー……盗賊が出たのがウチのテリトリーだったから王都の本部からどやされたわ」


 こっち側だったからな。


「どうしようもないだろ。お前らの政治が悪いからだって言ってやれ」


 いやー、一市民になると楽だな。

 好きなことを言える。

 当たり前だが、暗部にいた時は言えなかった。

 言ったのは最後だけ。


「言えるか。とにかく、あれから見回りを強化しているから安心してくれ」

「仲間はいなかったのか?」

「東の村から逃げてきたアホ共だ。村に確認したが、仲間はいない」


 キースが言った通りか。


「なら安心だ。じゃあ、これを納品するから確認してくれ」


 俺とアンジェラは30個の持ち運び用コンロをカウンターに置いていった。


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