第025話 納品
神父さんと話をしてから2週間が経った。
あれからひたすら持ち運び用コンロを作成しており、アンジェラも残業していたし、メアリーも休みの日は手伝ってくれた。
そのおかげもあり、想定よりかなり早いペースでものを作れていた。
「できた!」
今日も朝から作っていたが、最後の1個をアンジェラが組み立て終えた。
「できたなー。30個は大変だったが、次に繋がる」
ヴィオラから聞いたが、冒険者の中でも評判が良いらしい。
「もう慣れたもんだし、次はもっと早く作れるわね」
確かにな。
次に備えて早めに部品や魔石を押さえといても良いかもしれない。
「よし、納品してその辺も考えてみるか。実は今回のこれの派生で良いものを思い付いたんだよ」
記憶から引き出したとも言う。
「あまり期待できなそう……」
失敗も多いけど、当たる時は当たるのだ。
自称、異世界エジソンだぞ。
「楽しみにしておけ。ちょっとアーヴィンのところに行くが、アンジェラはどうする?」
「行く。大事な仕事だし、私もついていくわ」
「じゃあ、行くか」
俺達は完成した持ち運び用コンロを空間魔法に収納すると、玄関の扉に【外出中】の看板をかけ、歩いていく。
アーヴィンがいる軍部は町の南にあるのでまずは中央に行き、そこから大通りを南に行く必要があるため、まずは町の中央にやってきた。
「あ、そういえば、神父さんがお祈りに来いって言ってたぞ」
すごい今更だけど。
「めんどい、だるい、アクセを外せってうるさいから行かない」
ギャルは絶対の拒否だ。
「まあ、俺も行かないけどな」
「そそ。教会なんて人生で1回しか行かないでいいわけ」
「葬式か?」
「訂正。2回」
そうだね。
俺達は教会をスルーして、南に向かう。
南は比較的住宅が多いが、徐々にそれも減り、牧場が見えてきた。
「あー、ラシェルを連れてきてやれば良かったかな?」
「今度にしましょうよ。今日は仕事」
「それもそうだな」
俺達はそのまま歩いていくと、牧場近くにある軍の屯所にやってきた。
屯所は東西南北の4か所にあるが、この南部の屯所が本部である。
そのため、建物も3階建てと大きく、訓練所などもあり、施設も充実している。
「――アンジェラ」
アンジェラを呼ぶ男の声が聞こえたので振り向く。
すると、そこには真面目そうな顔した黒い短髪で軍服の男がいた。
確か、アンジェラと同い年のサムだ。
「サムじゃん。おひさー」
アンジェラがいつものように軽い挨拶をする。
「ああ。こんなところでどうしたんだい?」
「仕事に決まってんじゃん。じゃなきゃ、来ないっしょ」
「それもそうだね。魔道具店に就職したんだっけ? アンジェラは魔法の腕もすごいし、軍に入れば良かったのに」
俺はそう思わない。
このチャラチャラしたギャルが規律の厳しい軍は絶対に無理。
「きつそうだから嫌。それなら冒険者でいいね。つーかさ、あんた、よく軍なんて入るね」
「町を守る大事な仕事さ」
それはわかる。
良いことを言うな、サム。
俺も国を守る軍人だったからよくわかるのだ。
もっとも、俺は暗部だったけどさ。
「お偉いことで」
「アンジェラ、今度、食事でもどう? 久しぶりに話そうよ」
おや? 不穏な気配が……
「忙しいからダメ。ってか、あんた軍なら寮でしょ。ダメじゃね?」
「それはいくらでも――」
「サム!」
サムの後ろには偉そうな髭を生やした軍人がおり、怒鳴っていた。
「はっ!」
「訓練はどうした!?」
「すぐに行きます! ごめん、行くね」
サムは走って、訓練所の方に向かったのでその後ろ姿を眺める。
「仲良かったのか?」
「普通」
「向こうはそう思っていないような気がしたぞ」
食事に誘ってたし。
「おっかしいなー……あいつ、ヴィオラ狙いじゃなかったかな?」
ヴィオラとアンジェラはタイプが全然違うような気がするんだが……
ヴィオラは小柄で可愛らしい系だし。
「気が変わったんじゃないか?」
超良い女だし。
「どうでもいいや。それよりもアーヴィン、アーヴィン」
「それもそうだな」
俺達は屯所に入ると、受付の奥にアーヴィンを見つけた。
「アーヴィン」
「アーヴィンさん、やっほー」
俺達が声をかけると、アーヴィンが気付いて、こちらにやってきた。
「よう、エリックにアンジェラちゃん。アンジェラちゃんは今日も可愛いね」
アーヴィンがいつもの軽口を叩く。
「知ってるー。さっきもそこでナンパされた」
「それは困ったもんだね。いや、本当に」
ここ軍部だもんな。
サボって何してんだって話だ。
「アーヴィン、持ち運び用コンロを納品しにきたぞ」
本題に入る。
「おっ、早いな」
「頑張ったからな。キースがちょっと危なかったが」
「それなー……盗賊が出たのがウチのテリトリーだったから王都の本部からどやされたわ」
こっち側だったからな。
「どうしようもないだろ。お前らの政治が悪いからだって言ってやれ」
いやー、一市民になると楽だな。
好きなことを言える。
当たり前だが、暗部にいた時は言えなかった。
言ったのは最後だけ。
「言えるか。とにかく、あれから見回りを強化しているから安心してくれ」
「仲間はいなかったのか?」
「東の村から逃げてきたアホ共だ。村に確認したが、仲間はいない」
キースが言った通りか。
「なら安心だ。じゃあ、これを納品するから確認してくれ」
俺とアンジェラは30個の持ち運び用コンロをカウンターに置いていった。
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