第022話 謎の黒仮面 ★
目の前に黒い服と外套を着た男が立っている。
いや、声も背格好も男性だが、黒い仮面を被っているため、本当に男性なのかはわからない。
「シャーリー……」
カトリーナが槍を相手に向けながら声をかけてくる。
「うん……あなたは何者?」
意を決して声をかける。
正直、怖い。
それほどまでにこの黒仮面は強く、得体が知れない。
その実力も謎の剣もさっきの投擲ナイフの威力も何もかもだ。
バケモノとしか思えない。
嫌な汗が額から流れてくる。
恐ろしいまでの緊張感が私達とこの黒仮面の間にはあるのだ。
「ラシェルー、ポニテを食べるなー!」
……緊張感がない子もいる。
「君達はミルオンの町の冒険者かな?」
黒仮面が逆に聞いてきた。
「ええ」
「そうか。その商人の護衛といったところだろうが、仕事を邪魔して申し訳ない」
なんか謝ってきたんだけど……
「あなたは?」
「旅の者だ。最近、ミルオンの町に来て、冒険者登録をした。名前はフルフェイス・マスクマンだ」
すごい名前だ……
しかし……
「シャーリー、例の……」
「うん」
町で噂になっている変質者だ。
「こらー、ラシェルー、スカートを引っ張るなー!」
メアリーはホント、マイペースだね……
というか、ラシェルはメアリーのことが好きすぎる。
「ふっふっふ。その馬は君の知り合いかな?」
黒仮面が怪しく笑い、馬とじゃれているメアリーに声をかけた。
「これ、ウチの馬。なんで乗ってんの?」
それはそうだ。
「ウチ? 君は魔道具屋の人間かな? 実は馬を借りたのだよ。私はキースという男の捜索依頼の仕事を受けてね」
「あ、私です」
キースさんが手を上げた。
「なんだ……ということは依頼のバッティングかな? これは失礼をした」
黒仮面がそう言うと、青い光の剣が納まった。
向こうに戦う気が見られないので私もカトリーナも武器を下ろす。
「うーん? ラシェルがいる……エリックめー、依頼を出したな」
メアリーは覚えがあるようだ。
まあ、エリックさんの心配性はすごいし、捜索依頼を出したことを知って、エリックさんがこの黒仮面に仕事を頼んだのかもしれない。
それで馬を貸し出したのだろう。
「いやいや、ただのバッティングだよ。よくあることさ」
エリックさんに口止めされてそう。
「ねえねえ、その剣は何ー?」
メアリーはすごいな……
得体が知れない相手なのにお構いなしだ。
「これか? ただの魔法の剣だよ。気にしないでくれ。さて、キースさん」
黒仮面が名前を呼ぶと、キースさんがビクッとする。
「な、何でしょう?」
「いったい何があったのかな? 随分と遅れていたようだけど」
それは私達も気になることだ。
「王都から森に入る前に馬の体調が悪くなったんですよ。それで少し休んでから森に入ったんです。そこからも休み休みで来たんですが、休んでいる途中でこの子達には会ったんですが、すぐに先程の盗賊達に会ったんです」
そうだったんだ……
私達がキースさんを見つけてすぐに盗賊が来たから追われていたのかと思った。
「ふむ……それはついてないな」
黒仮面が馬を見る。
馬車を引っ張っている馬は俯いているし、ちょっと元気がなさそうに見える。
「大丈夫ー?」
メアリーが馬を撫でる。
「病気か、疲れか……まあ、ちょうどいい。そのラシェルとやらは君の家の馬なのだろう? 代わりに馬車を引っ張るといい。それでついでに魔道具屋の店主に返しておいてくれ」
「それがいいかー。ラシェル、いける?」
メアリーが聞くと、ラシェルが足を動かし、やる気を見せている。
子供の頃から知っているが、本当に賢い馬だ。
「よさそうだな。まだ盗賊がいるかもしれないし、気を付けて帰るといい。それとこれは君達の依頼だし、君達がギルドに報告してくれたまえ」
「あ、あの、盗賊を倒したのはあなたでは?」
カトリーナが黒仮面に確認する。
「横取りはせんよ。ただ、腕が曲がっている男はまだ生きているから軍に引き渡してくれ。動機や他に仲間がいないかを吐いてもらわなければならんからな」
その言葉を聞いて、ちらっと盗賊達を見る。
確かに生きているのは腕を折られた一人だけっぽい。
他はナイフが頭に突き刺さっているし、胴体が分かれている。
ラシェルが踏んだ盗賊も首が曲がっているし、生きてはいないだろう。
「フルフェイスさんはどうすんのー? 一緒に行かない感じ?」
メアリーが聞く。
「私は別の仕事もあるのだよ。それではさらばだ」
黒仮面はそう言うと、外套をばっと広げた。
すると、一瞬にしてその姿が消える。
「え? 消えた?」
「ど、どこに……」
「転移? 魔法使いか」
私達はきょろきょろと辺りを見渡すが、姿も気配もない。
「メアリー、魔力は?」
「感じない。もういないっぽいね」
得体が知れなさすぎる……
「シャーリー、どうする?」
カトリーナが確認してくる。
「とにかく、キースさんと生きている盗賊を連れて町に帰ろう。後はギルドに報告」
それしかない。
「わかった。メアリー、帰ろう」
「そだね。キースさん、馬を替えようよ」
「あ、ああ。そうだね。すまなかった。助かったよ」
キースさんが謝罪してくる。
「いいの、いいの。仕事だもん。何もしてないけどね」
「いや、それでも助かったよ。早く帰ろうか」
私達はすぐに出発の準備をし、馬を入れ替える。
そして、カトリーナを馬車に乗せ、私が後衛、メアリーがキースさんの馬を引っ張る布陣で町に帰ることにした。
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